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  • (2017/5/11夜) 春って、あわただしく過ぎて行くものなのですね。でも、ようやく身辺が落ち着いて来たような気がします。

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具体的には、解呪のために旅する一行(お姫さま、王子さま、その友人たち)の、現在と過去のエピソードを交ぜ織っています。

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なりゆきの英雄(02)

 ひょろりと痩せた若者は、名をヒンデンと言った。ルークは馬に乗り、ヒンデンはロバに乗って、一緒に、ヒンデンの住む町まで行くことになった。道々ルークが、この大剣で何を切ればよいのかと尋ねてみると、ヒンデンは、
「ツタの化け物なんだ。たくさん花があって、口があって。見てもらったほうが早いと思う」
と答えた。あまり面倒なことにならないといいが、とルークは心の中で思った。
 果たして、町に着いたルークは、
「何だ、これは・・・」
と、驚きつつ困惑することになった。
 町中に、うねうねと、太い緑色のツルがはびこっていた。ドクドクと脈打つ不気味なツルは、家という家に絡みついており、それぞれの家のてっぺんで、紫色をした大きな花を咲かせている。花の真ん中には、口らしきものがパクパクと動いており、櫛に似た鋭い歯と思しきものを、カチカチ噛み合わせているのだった。
 馬から降りて歩きながら、ルークはひそひそと尋ねた。
「あいつら、何を食うんだ。まさか・・・」
「肉を食う。ほら、あれを見て」
 ヒンデンの指さす先で、紫の花が一輪、巻き付いた家からツルをほどきながら降りて来て、歯をカチカチ鳴らしながら、ゆらゆらと大きく動いた。時々、くわっと口を開いて、家の壁や窓に体当たりをする、そのタイミングを見計らったように、家の中にいた女性が、さっと窓を開けて、鶏のモモと思しきものを花の口に放り込むと、花は咀嚼しながら、再びツルを巻き付けて屋根まで上っていった。
 ルークは小声のまま、尋ねた。
「どうして、餌をやるんだ」
「餌をやらないと、あいつらは窓を破って、中にいる人間に食らいつくんだ。でも、そろそろ、餌にできそうな食料は尽きる」
 ヒンデンは答えてから、
「耳はないみたいだから、大声出しても平気だよ。で、あんたにその剣で倒してほしいのは、こっちなんだ。来てくれ」
 ルークは、ヒンデンのあとについて、角をいくつか曲がった。
 そこに、化け物の親玉がいた。
 大きな紫色の花びらを四方に広げて、道幅いっぱいを塞いでいる、花の怪物。よく見ると、その花びらは、紫色のウロコのようなものでびっしりと覆われている。そして、花びらに囲まれた巨大な口が、時々グワッと大きく開くところを見ると、どうやら人間の子供くらい軽々と丸呑みできそうな口なのだった。
 ヒンデンは、大声を出しても平気だと言った割に、ひそひそ声で言った。
「町中のツルは全部、大元のところが、あの親花につながっているみたいだ。でも、あれを倒そうとして力自慢が斧で立ち向かっても、ぜんぜん歯が立たなくて。斧のほうが折れちまった。しかも、近くのツルがどんどん集まって襲ってくるから、無念だけれども、逃げるしかなかったんだ」
「あー、つまり」
と、ルークは諦めながら、一応、念のために、確認した。
「あんたは俺に、あれを倒せ、と。そう言うんだな?」
「そう! そうなんだ!」
と、ヒンデンはルークに向きなおった。勢いよく頭を下げた。
「頼む! あんたが剣を取り出したあの石碑には、こう書いてあるんだよ。『一体にして無数の頭を持つ怪物の、真なる一つを打ち砕く、神剣をここに収める』。ぼくが思うに、むかし、このツルの怪物が近くに現れたことがあって、そのときに親玉の花を砕いたのが、この剣だったんじゃないかって」

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