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  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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ゆがんだ城(01)

「またおかしなことになりそうだね・・・君といると、ろくなことはないな」
 黒髪の若者は低く言った。その涼やかな瞳は相変わらず何の感情も見せてはいない。
 彼より背の高い、長い金髪の連れのほうは、むっとして言い返した。
「ぼくではなく、君のせいだろう、ゼラルド。こういう奇妙なことになるのは」
 というのも、この若い二人連れの周りには先ほどから濃い霧が立ち込めて、二人は馬をひいて立ち往生していたのだが、ようやくぼんやり周囲の様子が見えてくると、目の前にはなぜか、不吉な姿の古城が出現していたのだ。
 ゼラルドは黒髪をかきあげて、指差した。
「どうする、セレン。ぼくたちは招かれているようだ。ほら」
 古びた門がギーッと軋んで開いてゆこうとしていた。セレンは嫌そうな顔をした。
「嘘だろう・・・」
「ここは特殊な場所だから、逃げられはしないよ。こうなったら、中に入るしかないね」
「仕方ないな」
 セレンはため息をついた。
「わかった、行くよ。今頃、フルート達はどこにいるんだろう」
「ぼくも早く合流したい。君の面倒を見切れなくなる前に」
 馬をつなぎ、門を抜け、まっすぐに城へと続く道を歩きながら、セレンが時々あたりを見回して立ち止まりそうになるのを、ゼラルドは振り返って促した。
 邪悪というより狂気というべき異常な空気。その危険さを、ゼラルドはよく知っていた。そして、今の状況はあまりよくなかった。セレンを連れているからだ。
 華奢な金髪の若者は――ゼラルドが何と言っているにせよ――決してばかではないし、弱くもない。むしろ――ゼラルドは認めないにしても――頭の回転は速く、剣の腕も立つ。けれども、セレンはこうした奇妙な空間のゆがみ、神秘のベールに包まれた特殊な世界には、まったく免疫がなかった。
 セレンはまた立ち止まった。目を見張るようにして辺りの様子を眺めている。ゼラルドのほうは付近の景色に感銘を受けた様子もなく歩いて行ってしまうが、たしかに普通の人間ならば、立ち止まってしまうのも無理はなかった。
 小道には、たくさんの薔薇の花が咲いていた。が、その花々はすべて、空中に漂う銀色の花だったのである。時折、その銀の花びらの先が紅く染まってくるかと思うと、ぽたんと一滴、紅い滴が落ちる。あちらこちらで血の色の滴をしたたらせている銀色の花々は、とても不気味で、しかし妙に美しく、人の目をひきつけた。
 セレンはしばらく、魅せられたように花々を見つめていた。ひとつの花を見つめれば、見ている花がゆるゆると大きく広がっていくような錯覚に襲われる。大きく大きく咲き誇り、セレンを飲み込もうとするように花びらをのばし――むせかえるような薔薇の匂い・・・
 不意に、セレンの目の前が真紅に散った。手荒く突き飛ばされて、セレンははっとした――そして、ぞっとした。
 巨大な妖花は、幻ではなかった。そこに、異様に大きな薔薇の花が血しぶきをあげていた。花は溶け、多量の血とともに地面に吸収され、あとには清らかな光を放つ短剣が一本残った。ゼラルドのものだった。静かに歩みよってそれを拾い上げたゼラルドの冷たい黒い瞳と、動揺したセレンの緑の瞳が合った。
「気をつけてほしいね、セレン。今度同じことをしたら、助けなどしないよ」
 息も乱さずにそう言うと、何かつぶやきながら短剣の上に手をかざしてそれを清め、ちょっと肩をすくめてゼラルドは歩きだす。
 セレンはふうっと息をつくと、明るい金髪を後ろに束ねて、今度は気をつけて、止まらず歩いて行った。

 

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コメント

月路さん
おはようございます。
まったく まっさらな状態で この夢のような旅ものがたりを 
読ませていただいています。
本を閉じると崩れ去ってしまう砂の城・・
空中に浮かぶ銀色の薔薇ーヴァンパイアのように人を魅惑する・・
のっけから、芳醇なイメージの世界に引き込まれます。
これから、ゆっくりと、拝見していこうと思います。

p.p.montiさん、こんにちは。雪村@電車で移動中です。
コメントをありがとうございます♪
つたない文章で恥ずかしいですが、お気に召す話があればいいなと願っています。

私も、montiさんのブログ、最初から読ませていただいています。
ついつい読み急いでしまいそうになりますが、勿体ない気がして、よく味わいながら少しずつ、大切に読もうと思っていますconfident

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