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ゆがんだ城(03)

 その部屋は、どろりとした胸苦しい空気に満ちていた。
 そして、その女はそこに立っていた。
「なんてうれしいこと! あたしに二人も客が来た」
 若くきれいな女の外見だったが、その身には何百年を経た古い空気がまとわりついていた。古風に結いあげられた黒い髪には宝石が飾られているが、濁った色の石ばかり。唯一、額に輝く血の色の宝石だけが、不釣り合いに輝いている。
「なんてきれいなお客人だろう! 庭を通り抜けられたようで良かったわ、花にやってしまうのは惜しいもの。若くて美しい客人ほど、あたしの命を永らえてくれるものはないの」
 紅い唇から、なまめかしい声がすべり出る。女は、にいっと笑った。
「そうそう、さっき下から太陽神の力が伝わって来たけど。この城には太陽神の力は届かないのよ。特にこの部屋にはなんにもね。あきらめてちょうだい」
 ゼラルドは軽く肩をすくめた。口を開いて、
「おまえは何者か」
と問うと、女はおかしそうに笑った。
「自己紹介しろって? ふふん、どうせ知りたいのはあたしの称号よね? まあいいわ、あたしはウェドリタ。称号込みだとウェドリタ・ルイーラ。あいにくだったわね。でも、どっちにしたって、あんたは太陽神の使徒だから、この部屋で戦えやしなかったのよ」
 ルイーラという称号は、月の力を使う者の中で、ひときわ高い能力を持つ者に与えられるものだ。ゼラルドは、称号の件はひとまずおいて、話を進めることにした。
「ならば、ウェドリタ・ルイーラ。おまえはぼく達をどうするつもりなのだ」
「そうねえ」
 女は無造作に長椅子に腰かけ、客たちにも椅子をすすめた。
「でも、しばらく話をしてもいいわ。殺すのはそのあと・・・あら、しゃべっちゃった」
 女はまた、にいっと笑った。ゼラルドは聞こえないふりをして椅子にかけながら、
「では、聞かせてほしい。ここは、いったい、どこなのだ」
「ここ? ここは、言うなれば、どこでもない、どこかよ。そうね、話してあげる」
 女がパチンと指を鳴らすと、グラスが三つ、紅い液体をたたえて飛んで来た。
「お飲みなさいよ」
 女はそう言い、ゼラルドがグラスに口をつけるのを見ていた。
「血の味がする」
 ゼラルドがつぶやくように言うのを聞いて、満足そうに、
「そうよ、人間の血を薄めたの」
と、自分のグラスに口をつける。ゼラルドは冷ややかに笑って、
「おまえのグラスはそうかもしれないが、ぼくのグラスはキルケの果汁だ。そして」
 セレンの前から、ひょいとグラスを持ち上げる。
「これは毒入りの葡萄酒。そのくらいは、見ればわかる」
「・・・ふうん。そこそこ鍛錬は積んでいるというわけ?」
 女は意外そうだった。グラスはみな全く同じ色をしていた。女は、連れを殺しても黒髪の若者の冷静さが崩れないものなのか、試してみるつもりだったのだ。
 当のセレンは、さっきから、何もかも現実のこととは思われなかったので、特に何を感じるでもなく、ぼんやりと、ゼラルドとウェドリタを見比べた。
「ほら、今度は普通の葡萄酒。あなたもお飲みなさい」
 新しく来たグラスは、ゼラルドに取り上げられなかったので、セレンも口をつけた。 

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