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  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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ゆがんだ城(06)

 つい、と、気を取り直した女が動いた。青い剣がその手にひらめいて、黒髪の若者の上に斬りかかってくる。ゼラルドは黄金の長剣を抜いてそれを受け止めた。女は驚きの声をあげた。
「黄金は太陽神の力を受けるはず。なぜこの剣は、月の女神の力を受けることができるのかしら」
 ぎらぎらと、青い剣の光が強まった。黄金の華奢な剣は、今にも溶けるか折れるかしてしまいそうに見える。しかし、ゼラルドはその剣をよく知っていた。故郷の海から贈られたこの剣は、太陽の力も月の力も受けることのできるこの剣は、見た目に反して、限りなく強かったのである。
 二人が剣を合わせている間、部屋の中では様々な変化が起こっていた。いろいろな物、たとえば本やナイフやグラスなどは、宙に飛び、半分に分かれて、一方はその主人の、一方はその美しい客の、それぞれ隙を狙って待ちかまえていた。部屋の空気は赤黒く淀んでおり、対決する二人の体は、瘴気から身を守る銀色の光に包まれていた。剣と剣のぶつかる音が、異様なほど辺りに響き渡っている。
 一方、セレンのほうは、動くなと言われた部屋の隅で、息をつめ、しかし苛立ちながら、目の前の光景を見守っていた。彼は薄青い光の壁の中で、ほとんどいつもの彼を取り戻していた。自分にできることが何もないのがつらい。そもそも携えている剣だって、先日の事件で失ってしまった剣の代わり、ただのお飾りの――
 そのとき、女の声が高らかに響き渡った。
「わかったわ、これは古代レティカの宝剣! 聖者達が魂とひきかえにしてでも欲しがっている、世界に散らばった13本の宝剣! そのうちの一本なのね!」
 同時に、セレンは自分の剣を手に、驚きの声をあげていた。
「なぜ・・・この剣が抜けるなんて!」
 幼いころに手に入れたその剣は、抜けない剣だった。時が来れば抜ける気がして今回の旅に持参し、使っていたほうの剣が失われたため形ばかり身に着けていたその剣は、今、なにげなく手をかけただけで刃をあらわし、重みを得てセレンの手の中にあった。
 そして、間をおかず、ゼラルドの剣がはねとばされた。セレンの声に一瞬気をとられてしまったのである――彼らしくもなく。
 黄金の剣を女はつかみ、狂喜の声をあげた。試みにその剣を使おうとして失敗する。なぜなら、古代レティカの宝剣は、その剣の認めた持ち主が自身で望まない限り、その持ち主を傷つけることはないからだ。
 その間に、ゼラルドは闇の中から光の剣を作り出した。女の剣と違って白く光る剣だが、それを女は黄金の剣で受け止めた。青い剣から手を離すと、それはゼラルドのほうへ飛んで来て、彼を傷つけることこそできないものの、彼の視界をさえぎり、動きを阻もうとする。
 不意に、青い剣はその光を強め、あらぬほうへと飛んだ。ゼラルドはその行く先を見定めることもせずに聖句を唱え、セレンの周りの壁が銀色に変わった。青い剣はその壁で跳ね返り、同時に、ゼラルドの手からも光の剣が消えた。ゆがめられた時空間での戦いは、ゼラルドに不利なのだ。
 今度は、新しい剣を作りだす時間は与えられなかった。青い剣は女の手に戻り、ゼラルドはそれを短剣で受け止めるしかなかった。表情ひとつ変えなかったけれど、あっというまに、黒髪の若者は部屋の壁際に追い詰められてしまった。
 セレンは息をのんだ。どうしたらいいのだろう。自分を取り巻く光の壁から出たら、その瞬間に死が訪れるのだろうと思われた。彼はなすすべもなく、己の剣をつかんだまま迷った。

 

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