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SF「夜景都市」(未完)

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ゆがんだ城(07)

 ゼラルドは、セレンの声に一瞬気をとられた。すかさず、ウェドリタが攻撃し、ゼラルドの剣を跳ね飛ばす。宙を飛んだ黄金の剣を、ウェドリタは引っつかんで狂喜の声をあげた。試みにその剣を使おうとして失敗する。なぜなら、古代レティカの宝剣は、その剣の認めた持ち主自身が望まない限り、持ち主を傷つけることはないからだ。
 その間に、ゼラルドは闇の中から光の剣を作り出した。女の剣と違って白く光る剣だが、それを女は黄金の剣で受け止めた。青い剣から手を離すと、それはゼラルドのほうへ飛んで来て、彼を傷つけることこそできないものの、彼の視界をさえぎり、動きを阻もうとする。
 不意に、青い剣はその光を強め、あらぬほうへと飛んだ。ゼラルドはその行く先を見定めるより前に聖句を唱え、セレンの周りの壁が銀色に変わった。青い剣はその壁で跳ね返り、同時に、ゼラルドの手からも光の剣が消えた。切り離された時空間での戦いは、ゼラルドに不利なのだ。
 今度は、新しい剣を作りだす時間は与えられなかった。青い剣は女の手に戻り、ゼラルドはそれを短剣で受け止めた。表情ひとつ変えなかったけれど、あっというまに、黒髪の若者は部屋の壁際に追い詰められてしまった。
 セレンは息をのんだ。どうしたらいいのだろう。自分にできることが何かないものか。ゼラルドが作ってくれた光の壁から出れば、瘴気に蝕まれて死に至るだろう、だが、このまま立ち尽くしていたところで同じことではないのか。セレンは、なすすべもなく、己の剣をつかんだまま迷った。
と、そのとき、セレンの頭の中に、涼やかな声が聞こえて来た。
≪セレン?≫
「・・・ゼラルド?」
 セレンの視界の中で、ゼラルドは向こう側の壁を背に、かろうじて身を守っていた。しかし、セレンに呼びかけて来た声は、いつものとおり落ち着いていた。
≪口に出さずとも、考えるだけでいい≫
≪何かぼくにできることは!≫
≪何もない≫
 ゼラルドの声は穏やかだった。
≪安心したまえ。ぼくが死んでも、君はきちんと元の場所に帰してあげよう。そう・・・フルートに約束してしまったからね≫
 ウェドリタの剣がゼラルドの短剣をはねとばし、女は勝ち誇ったように剣を振り上げる。
「ゼラルド!」
 セレンは衝動のまま、自分の剣を思い切り投げた――黄金の剣を。
 ゼラルドは飛んで来た剣を見つけ、その柄をつかんで、目の前の女をないだ。剣は、女を取り巻く銀色の光を突き抜けた。
「きゃああああああ・・・」
 女は甲高い悲鳴をあげて床に落ちた。青い剣は消え、ゼラルドは宙に舞う自分の剣を手に収めた。
 女の体は急速にしなびていった。しわだらけになり・・・縮んで・・・骨となり・・・あとには服と宝石をまとった骸骨が残った。ピシッと音を立てて、血の色の宝石が砕け、部屋に立ち込めていた瘴気が消えていく。
 ゼラルドは謎めいた瞳でその様子を眺めたあと、物問いたげにセレンのほうを見た。
「この剣は?」
「ぼくの剣だ」
 青ざめた顔で、セレンが答える。
「君の?」
 ゼラルドは二本の剣を並べて見せた。二本ともよく似ていたが、ゼラルドの剣の柄には透明な宝石が、セレンの剣の柄には緑色の宝石が嵌め込まれている。
「ゼラルド、さっきの話は一体? 13本の宝剣?」
「・・・知らないのか。だが、その話はあとでしよう。この城の住民を、時の流れに戻してやらなければ」
 丁寧に剣を持ってセレンに返すと、
「ありがとう」
 淡々と言って、先に立って歩き出す。入って来たのと反対側のドアを開けると、そちらには広い廊下が続いていた。
 二人は廊下を歩き、階段を下り、また廊下を歩き、階段を降り・・・やがて、来た時の大広間に通じる扉に行き着いた。中で人の魂がざわめいているのが、セレンにもわかった。
「中に入ったら口をきかないでくれ」
 無造作に言い捨てて、ゼラルドは扉を開けた。闇の中にうごめくものの気配がしていた。
 ゼラルドが穏やかな声で聖句を唱えると、辺りにうっすらと銀色の光が広がった。闇に生きる者たちは動転し、足音がせわしなくなった。銀色の光はどんどん強くなり、やがてセレンの目に、ひとがたが見え始めた。ひとつ、ふたつ、と白いひとがたは浮かび上がり、喜びと感謝を表して消えていった。ひとがたはどんどん増えていったが、けして気味の悪いものではなかった。解放された歓喜に満ちて、血肉を失った者たちが還っていくその光景を、セレンは銀色の光の中で見ていた。最後のひとつが消えると、ゼラルドが前に現れた。光の中に、涼やかな声が響いた。
「呪われた花々ももう清めた。行こう」
 見ると、前方に不思議な扉が見えた。赤い革のように見えたかと思うと、頑丈な鉄の扉のようにも、どっしりした木の扉のようにも見える、かたちの定まらない扉なのだった。
 その扉を、ゼラルドは恐れげもなく大きく開いた。そして二人は外に出て、見なれた太陽の沈む道に出た。
 セレンが振り返ると、もう扉は影も形もなかった。むろん、城も。
 馬たちは無事で待っていてくれた。夕陽の光、木の匂い、道の色。すべてが懐かしく思えた。
 

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