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竜王の館(前編)(04)

 祭礼の間まで来ると、竜王の息子は無造作に、
「では、行って来る」
「行ってらっしゃいまし」
 見送られて中へ入った。ここに入ることのできるのはごく限られた者だけである。
 扉の中にはさらに扉があり、竜王の息子はその中に入った。この入れ子の小部屋には天井はなく、吹き抜けで上に上がれるようになっている。彼は、祭礼用の長い白い衣服をまとい、呪術用の装身具をじゃらじゃらと身に付けたその姿で、部屋の中央に立って意識を統一し・・・瞬く間に竜の姿となって、水をまきあげ、水面めがけて上って行った。
 沼の水面をざんぶと抜け出ると、沼の周囲で祈っていた多くの人間が、いっせいに低く驚嘆の声をもらした。もっとも、彼がその声を耳にしたのはほんの一瞬に過ぎなかった――なぜなら彼は、次の瞬間、すでに遥かな天の高みに上ってしまっていたからだ。
 なすべきことはわかっていた。手順どおりに雨雲を呼び寄せ、雨を降らせる頃合いを計る。そうしながら、彼は下方に見える人間どもを冷めた目で眺めやって、何か退屈しのぎになることはないかと考えた。
 人間どもはほとんどが畏怖の表情を浮かべて、ある者は空を見上げ、ある者は下を向いたまま祈り続けている。いずれにしても、彼の姿は見えていないはずだ。人間どもの目には、ただ、沼の中央がざぶんと波立った後、そのあたりに白い靄がかかっているようにしか見えていないのだ。
 少し早いかもしれなかったが、しかしそろそろ良かろう、と、雨をぽつぽつと降らせ始めたときだった。竜王の息子は、ふと一人の娘に目を止めた。その娘は、うつむき加減に祈りをささげていたが、どことなく周りの者たちとは違った空気をまとっているように見えた。
 どこが特別なのだろう、と、彼がなおもじっと見つめていると、そのとき彼女は顔を上げて空を見上げ――
 ――その途端。彼は、それまでに企てていた何もかもを忘れた。その娘は、いくぶん薄れてしまってはいたものの、明らかに、古代の王からの正しい血を受け継いでいた。そして――ああ、その真摯な瞳と気高い顔立ちの、なんという美しさ! ほっそりした肩に波打つ豊かな髪は、彼の種族に似て青い色をしている・・・。
 彼は、もう雨のことなどどうでも良かった。とにかく降ればいいのだ、とばかりに呪文を唱え、唐突な雨の滝をごうごうと降らせて、高度を下げた。喜びを通り越して戸惑い始めた人々の間に手を伸ばす。
 ・・・フィアの近くにいた数人の者は、確かにそのとき、滝のような雨の中、恐ろしい大きな竜の爪が靄の中からぬっと突き出て、悲鳴をあげる暇も与えず、青い髪の乙女をつかんだのを見た。そして、気を失ってしまったらしい彼女をつかんだまま、爪は再び、白い不思議な靄の中へと消えて行ったのである――。

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