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竜王の館(前編)(09)

 それから毎日、フィリシアは至れり尽くせりのもてなしを受けた。それも、もしも彼女自身がたびたび固辞しなかったなら、さらに贅を尽くしたものになっていただろうことに疑いはなかった。
 一日三回出てくる食事は、彼女がその度にもっと質素なものにしてくださいと頼み続けた結果、三日目くらいにようやくその豪勢さを少し減じたようだった。また、毎朝届けられる素晴らしいドレスは、こんなに気遣っていただかなくても結構ですと断り続けたにもかかわらず、こちらは一向に差し止められる気配はなかった。ドレスは彼女に着てもらえないまま、再び運ばれて行くことになるのだったが、それはどうやら、別の所で用立てているのではなく、やがて彼女に要り用になるときのため、どこかにしまいこまれているらしかった。
 そうして、彼女自身はどうしていたかといえば、この姫君はまず、最初に食事が運ばれて来たときに、そこに、昔話によくあるような、食べると記憶がなくなったり二度と元の世界に戻れなくなったりする物がない、ということを確かめていた。それから、一番気になっていたこと、つまり、この水の底と人間の世界では時間の流れ方が違いはしないだろうかということを、早いうちにナミに尋ねて、そんなことはないと保証してもらっていた。そしてそのうえで、彼女はこの状況をともかくも受け入れて、ひっそりと毎日を送っていた。決して、憂鬱そうでないわけではなかったが、彼女は穏やかに落ち着いて感じよくふるまっていたので、彼女に付けられた侍女たちはみな――ナミ以外にも数人が交替で世話をしてくれていた――、彼女を慕い、本物の主人のように扱ってくれていた。
「若様はとても良い方ですのよ」
と、彼女達は時々遠慮がちに言うことがあった。実際、竜王の息子はあれ以来ずっと、口のききようこそ相変わらずだったが、礼儀正しかったし、親切でもあった。彼は侍女たちからも話を聞き出していて、姫が物語を好きらしいと聞けば語り部を部屋に寄越し、チェスが好きらしいと聞けば水晶の駒と台を届けさせた。気が向くとフィリシアに会いに来て、何やかやと言葉を交わし、満足そうに帰って行った。
 これに対して、フィリシアのほうも、もともと邪険な態度というものは性分として持ち合わせていなかったので、だんだん打ち解けて話をするようになっていた。帰りたいと口にすることは少し控えるようになった――彼がどんなに悲痛な顔をして、しかし彼自身にもどうしようもない頑固さでそれを拒むか知ったからである。竜王の息子とて、彼女の願いなら何であれ叶えてやりたかったのだが、こればかりは叶えるわけにはいかなかったのだ。
 竜王の息子は、ともかくもフィリシアに相手をしてもらえるようになって幸せそうな様子だった。ただし、彼が少しでも求愛しそうな素振りをみせると、彼女は表情を硬くして、彼が帰るまで二度と打ち解けようとしないのだった。
 竜王の息子がこの人間の姫君に並々ならず入れ込んでいるのは傍からも明らかだったが、もしかしたら最初はそれを快く思っていなかったのかもしれない侍女たちも、今では心から、フィリシアが若い主の妃になってくれるようにと願っているのだった。

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