2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

ひとこと通信欄

  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

ランキング参加中!

  • 記事がお気に召したらクリックしていただけると、作者の励みになります。(1日1回まで)

    (投票せずに順位を確認したい方はこちらから。)

読者アンケート実施中♪

  • 所要時間は5分くらい?
    個人情報の入力はありません。
    よろしくお願いいたします。
    こちらから。

SF「夜景都市」(未完)

最近のトラックバック

プロフィール

  • 城

    雪村月路
    snow.moon.rainbow☆gmail.com
    (☆を@に変えてください)
    Twitter: @ariadne_maze
    ブログ更新量について
    愛読書100冊

    うちの子同盟 うちの子同盟

無料ブログはココログ

« 竜王の館(前編)(09) | トップページ | 竜王の館(前編)(11) »

竜王の館(前編)(10)

 フィリシアがこの館にやって来てから、そうして十日ほどが過ぎた。昼は侍女たちとたわむれ、夜は自分を探しているだろう仲間達のことを思いながら眠りにつく、そんな生活が続いていた。
 いつも穏やかに微笑んでいるこの新しい女主人が、その実あまり気の晴れることのないらしいのを、侍女たちは自分のことのように気にかけていたが、どうすることもできなかった・・・が、ある日の夕方。
「――ねえ、ナミ」
「はい、姫様」
 寝室と続き部屋のいつものサロンで、フィリシアは美しい青いドレスを着て椅子に座っていたが――ナミが縫ったというので断り切れなかったのだ――、耳をすましながら尋ねた。
「あれは、踊りの曲ね?」
「ええ、そうですわ」
 ナミは縫物の手を休めて、
「今日は向こうのお館で、偉大なる竜王様が宴を開いておいでなのです。踊りが今始まったのでございましょう。踊りがお好きでいらっしゃるのですか」
「ええ、とても」
 フィリシアは控えめにそう答えたが、音楽に耳を傾けるその姿は、まるで魂を飛ばされてしまった人のようだった。ナミはそれに気付いて、
「この曲をお教えいたしましょうか」
と申し出た。青い髪の姫の顔がぱっと輝いた。
「すてき! でも・・・私にも踊れるかしら」
「大丈夫ですわ」
 ナミは姫君の明るい様子を喜びながら立ちあがったが、まとめた縫物をどこにやろうかと少し迷って、
「少々お待ちいただけますか。これを置いて参ります。何かお飲み物でも」
「そうね、お願い」
 そうして、飲み物を持って戻って来たとき、ナミはフィリシア付きの侍女たちをみな連れて戻って来たのだった。彼女達は宴に駆り出されずに別室に控えていたのだが、楽しそうなことが始まるのを知って集まって来たのである。もちろん、フィリシアのほうは大歓迎だった。広い部屋はたちまち、にぎやかな笑い声で満ちた。――そう、一、二、三、一、二、三、回って回って――。
 姫君がすぐにステップを覚えてしまったので、いくつもの足音は音楽に合わせて、じきに軽やかなリズムを刻むようになった。フィリシアのほおは、うっすらと上気してばら色に染まっていた。姫君のいつにない明るい様子に、侍女たちは口に出さずとも大喜びだった。姫君の踊りの上手なことも、いつもの静かな彼女を見慣れた侍女たちの目には、胸の躍るような素晴らしいことと映った。
 娘達は笑いさざめきながら部屋中を踊り回った。新しい曲がかかると、彼女達の足音はいったん止まり、ゆっくりと床を鳴らし、姫君が覚えたところで速度を上げて、また軽やかに踊りだすのだった。

人気ブログランキングへ

« 竜王の館(前編)(09) | トップページ | 竜王の館(前編)(11) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568827/50791494

この記事へのトラックバック一覧です: 竜王の館(前編)(10):

« 竜王の館(前編)(09) | トップページ | 竜王の館(前編)(11) »