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竜王の館(後編)(08)

「ありがとう、姫」
 竜王の息子が静かに言うと、フィリシアは真面目な顔でその顔を見上げた。
「わたくしはあなたを忘れませんけれど」
 彼女は表情を動かさずにそう言ったが、その、どうかすると冷ややかとさえ言えそうな声の中には、抑えられた豊かな感情と、紛れもない真実の響きがあった。
「でもあなたは・・・早く、わたくしをお忘れになってください」
 それは、フィリシアの「答え」だった。竜王の息子は、それを受け止めた。
「・・・あなたは優しい方だ、姫。それに賢い」
 竜王の息子は穏やかに――内心では千々に思い乱れていたのだが自分でも不思議なほど穏やかに――言った。
「努力はするが・・・姫を忘れるのはずいぶんな難題だな」
 フィリシアは黙って目を伏せた。竜王の息子はそっと手を上げて、その青い髪に触れた――そして、逃げないでくれている姫君の信頼を裏切らないように、すぐに手をひっこめた。
「では、お別れだ、姫」
 フィリシアは目を上げて、もう一度竜王の息子を見つめた。締め付けられた感情のたがが、今にも外れて泣きだすのではないかという顔をしていたが、それでもそうはならなかった。彼女は危ういバランスを保って表情を崩さないまま、優雅に深々と一礼し、
「――本当にお世話になりました」
 かすれた声でそう言った。竜王の息子はぐっとこぶしを握った。
「・・・うむ。元気で、姫」
「貴方様も」
 二人とも、それ以上は何も言えなかった。フィリシアはナミのほうに手を差し伸べ、ナミは、これはもうぽろぽろと涙を流しながら、近くに寄ってその手を取った。フィリシアはもう一度だけ軽く頭を下げ、そして、もう視線を合わせることはせずに、竜王の息子が見守る中を、向きを変えて出て行ったのだった。

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