2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

ひとこと通信欄

  • (2017/10/15夜)ご心配おかけして申し訳ありません。疲れて色々おっくうになっていますが、ごはんと睡眠はちゃんとしていますので、ご安心ください。

ランキング参加中!

  • 記事がお気に召したらクリックしていただけると、作者の励みになります。(1日1回まで)

    (投票せずに順位を確認したい方はこちらから。)

読者アンケート実施中♪

  • 所要時間は5分くらい?
    個人情報の入力はありません。
    よろしくお願いいたします。
    こちらから。

SF「夜景都市」(未完)

最近のトラックバック

プロフィール

  • 城

    雪村月路
    snow.moon.rainbow☆gmail.com
    (☆を@に変えてください)
    Twitter: @ariadne_maze
    ブログ更新量について
    愛読書100冊

    うちの子同盟 うちの子同盟

無料ブログはココログ

« 竜王の館(後編)(08) | トップページ | 竜王の館(後編)(10) »

竜王の館(後編)(09)

 ・・・偉大なる竜王とその妃に挨拶を述べて別れた後、館を出て船着き場に向かう途中、フィリシアは振り返り、初めて、この大きな館とその離れの全貌を目にすることができた。足を止め、見上げるようにして建物の輪郭をなぞり、傍らのミルガレーテに、
「私がいたのはあの辺りだったのね」
と、離れのほうを指差すと、ミルガレーテは、
「そうね」
と言って、しばらく一緒に眺めていてくれた。
 やがてまた彼女達は船着き場の方へと足を向け・・・すると、向こうの桟橋では、先に行ったフルートも、まだそこに立ったまま、どうやら顔を上げて竜王の館を眺めている様子なのだった。雅やかな装いの、すらりとした体をわずかにそらせ、見事な金髪を水底の不思議な風に吹かせて、彼はじっと、何か館の上のほうを見つめていた。
「フルート?」
 フィリシアは声をかけながら近づいて、自分も振り返ってその視線を追ってみたがおかしなものは見当たらず、フルートはその彫像のような姿勢を崩して、別に何の変わった様子もなくフィリシアに笑いかけた。
「もういいのかい」
「ええ」
「では行こう」
 桟橋の下で揺れている船は、元々がここは水底であってみれば、まるで風に揺れているようにしか見えなかった。深い青色に塗り上げられた、十人ばかりが乗れそうな船。
 ミルガレーテが教えてくれたところによると、この<水の船>というのは、本来は、水底と地上とを、人間が呼吸できるようにつなぐことはできないそうだった。魔法の領域に近しい彼女がいるのでこれが使えるのであり、そうでなければ人の行き来には<風の船>が使われるのだという。<風の船>はもっと明るい青に塗るの、と、光り姫は微笑んだ。
 ミルガレーテが最後に乗ると、船は上に向かってゆらりと出発した。大きな荘厳な竜王の館は、みるみるうちに遠ざかり、やがて小さくなって見えなくなった。船の上では三人とも、ほとんど口をきかなかった。時折、魚が目の前を過ぎて行き、彼らが今どんなに不思議な体験をしているかということを思い出させた。
 水の中はとても静かだった。そして、何もかも、もはやうつつのこととは思われなかったのだった――。

人気ブログランキングへ

« 竜王の館(後編)(08) | トップページ | 竜王の館(後編)(10) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568827/51049214

この記事へのトラックバック一覧です: 竜王の館(後編)(09):

« 竜王の館(後編)(08) | トップページ | 竜王の館(後編)(10) »