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竜王の館(前編)(12)

「その・・・私と踊ってくれませんか、姫」
 ついに――思いあがってはいけない、と自らを戒めつつ、竜王の息子は言った。唐突に言われて、青い髪の姫君は驚きもし、ためらいもしたようだった。
「わたくし、この曲は存じません」
 別に断られても構わなかった。この姫が彼の前でこのまま生き生きとしていてくれさえすれば。しかし、そのとき音楽は変わり、新たに奏でられ始めたのは、彼もそうと知っていたのだが、この水の外、人間の世界で使われている踊りの曲だった。
 姫君もこの曲を知っている証拠に、その優しい顔には困ったような表情が浮かんだ。竜王の息子は空のグラスを侍女に渡し、立ちあがって姫君に手を差しのべた。
「この曲は?」
 青い髪の姫君は彼の顔を見上げた。しばらくの沈黙ののち・・・彼の胸は喜びではじけ飛ぶかと思われた。
「ええ、それでは」
 姫君は内気そうに微笑んで、そっと彼の手に手を預けたのだ。
 侍女たちは姫君のグラスを片づけ、姫君が立つと、二つの椅子を片づけた。そして、お互いに目を見交わして、ナミを除き、深々とお辞儀して部屋を出て行った。フィリシアが気づいて心細そうにナミを見やると、ナミは安心させるように、
「わたくしはすぐ隣の部屋に控えておりますから、姫様。何かあったらお呼びくださいませ、飛んで参りますわ」
 そう言って、一礼すると、続きの小部屋へと引っ込んだ。フィリシアは不安そうな、いくぶん後悔しているような顔になったが、
「姫、姫。踊ってくれるね」
 笑って呼ぶ心配そうな声に向きなおり、あきらめて、
「ええ」
 リードされて踊り始めた。ゆるやかな曲である。
「何も、不安がることはないのに、姫」
 踊りながら、竜王の息子は少し淋しそうに言った。
「私とて、姫が相手をして踊ってくれたからといって、うぬぼれたり、つけこんだりするほど、愚かではないのだから」
「・・・ごめんなさい。そんなつもりでは」
「ああ、すまない。あなたを悲しませようと思って言ったのではない、姫。笑って。何かほかの話をしよう。たとえば・・・そう、向こうの宴会に、姫ほどの美人はいなかったぞ」
「まあ、お上手ですのね」
 不器用なご機嫌とりに、フィリシアの表情が緩んだ。二人はゆっくり、くるりくるりと部屋の中を回った。
「本気にしないのか。しかし、そうだな、ドレスを着てもらえて良かった。とても美しい。よく似合っている」
「あなたこそ、今日は素晴らしいお姿でいらっしゃいますわ」
「姫にそう言われるのは悪い気はしないな」
 竜王の息子はくすぐったそうな顔をした。
「正装なんだ。ずいぶん盛大な宴だったからな。大がかりな訴訟が一つ片付いて、父上が大喜びなんだ。本当なら姫を連れて行きたかったんだが、姫のことは父上に内緒にしているものだから」
「わたくしなど、そんな所に連れだされたら、身の置き場もなくて逃げ出すはめになるのが関の山です」
「そんなことはないだろう!」
「だって他に地上の人間はおりませんでしょう」
「それはそうだが」

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