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竜王の館(前編)(14)

「あの・・・どうかなさいましたの?」
 フィリシアは、じきに竜王の息子の様子に気づいた。その明るさは自然に少しかげり、彼女は警戒心を起こしかけながら、それでもまだ親しさは打ち消せないまま、おずおずとそう訊いた。
「姫・・・」
 竜王の息子の胸に、その時、抑えきれない感情がつきあげた。
「姫――!」
 彼は、やにわにフィリシアの前に膝をついた。呆然と立ちすくむフィリシアの前に深々と頭を下げ、つけこんだりはしないとさっき言ったばかりにもかかわらず、
「結婚してください、姫――お願いだ」
 そう言った彼の声は、思いつめて悲痛だった。顔を上げ、彼はフィリシアの青ざめた顔を見た。彼の顔に、苦悩の表情が浮かんだ。
「姫!」
 青い髪の姫君は、血の気の引いた唇を半ば開いて、絶望の色の瞳を彼のほうに向けていた。その様子は、拒否ではなかった――一度開かれた心は、そんなに急には閉ざされ得なかった。ただ、衝撃と、深い葛藤が、その心に吹き荒れていたのだった。
「・・・私」
 不意に、その顔に感情の色が揺らいで、姫君はかすれた声を押し出した。
「姫」
「私・・・」
 彼女は苦しそうに竜王の息子を見て・・・ゆっくりと首を振った。
「姫!」
「お願いです・・・一人にしてください」
 フィリシアは目を伏せた。
「姫!」
 竜王の息子の懇願するような声。
「ごめんなさい・・・お願いです」
 やっとのことで絞り出されたささやき声だった。竜王の息子はもはや何も言わなかった。ただ、ひざまずいたまま、やがて静かにフィリシアの手を取った。フィリシアはびくっとしたが、手を引きはしなかった。
「すまなかった」
 竜王の息子は、あらん限りの自制心で激情を抑えて低く言った。
「待つと言ったのに、私が悪かった」
 そして、フィリシアの手にそっと唇をふれた。その手が逃げなかったことだけが、彼にとってはささやかな慰めだった。彼は立ちあがった。
「それでは、姫」
 彼はみじめな気持ちで言った。
「どうか、今日のことは忘れて――私のことを嫌わないでください」
 言葉を切って、ひとりごとのように続けた。
「私は忘れないが。決して」
 姫君は下を向いたまま顔を上げなかったが、かすかにうなずいたように見えた。竜王の息子は黙って、悲しそうに姫君を見やり、身をひるがえして部屋を出て行った。
 フィリシアは重い足取りで隣の寝室に戻り、ベッドの上に身を投げて、わっと泣き伏した。

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