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竜王の館(前編)(15)

 ・・・遠くでは、まだ踊りの音楽が聞こえていた。奏でられているのは知らない曲だった。
 辺りはずいぶん暗くなっていて、フィリシアはやっと落ち着くと、涙をぬぐってベッドの上に体を起こした。
「姫さま」
 いつのまにか、ナミが傍に控えていた。優しい、いたわり深い声だった。
「明かりをお入れしましょうか」
「ナミ・・・。ええ、そうね、少しだけ、明るくしましょう」
 フィリシアがぼんやりと座って待っていると、明かりを点け終わって戻って来る。
「姫さま、わたくし、お側にいてもよろしゅうございますか」
「もちろん。あなたさえそれでいいのなら」
「お食事はどうなさいますか。もう届いておりますが」
「そうね、でも・・・あとにしたいの」
「かしこまりました。――ああ、そうですわ」
 ナミは、ふと向こうのほうへ行くと、花束を持って帰って来た。
「姫さま、これを」
「きれいなお花! 一体・・・」
 フィリシアは言いかけて、思い当たって言葉を切った。ナミはためらいながら、
「はい、若様からのお届けものでございます。ご覧になりますか」
 フィリシアは差し出された花束を見た。こんなことには不慣れだろう竜王の息子が、どこでどんな顔をして調達してきたものか、実に絢爛たる花束だった。
「ええ。見せてちょうだい」
 フィリシアは手を伸ばして受け取った。ふうわりと良い匂いがした。また涙が浮かんで来て、彼女は少し狼狽し、花束をそっと横に置いてハンカチを目に当てた。
「姫さま」
「ごめんなさい、何でもないの」
「姫さま・・・」
 ナミはしばらくためらった。それから、思い切って、そうっと尋ねた。
「あの、お気を悪くなさらないでくださいましね。その・・・姫さまは、うちの若様の、どこがお気に召さなくていらっしゃるのですか」
 フィリシアははっと顔を上げると、何ともいえない困った表情でナミを見た。
「もしかして、さっきのお話・・・聞こえていた?」
「はい・・・申し訳ございません」
「謝ることはないわ。・・・ナミ、私ね」
 フィリシアの声が震えた。
「私ね、わからないの。わからないの・・・自分でも」
 フィリシアの目にまた涙があふれ、彼女はナミの手前、必死になって泣くまいとした。
「とても良い方だと思うわ。優しい方だし、まっすぐなご気性で・・・私のことを本当に良く思ってくださってる。政略結婚でどこかに嫁ぐより、あの方に望まれて妻になるほうが、ずっと幸せなことだと思うわ。でも・・・でも、私」
 フィリシアは低く、叫ぶように言った。
「帰りたいの! ここで幸せな生活が送れるとわかっていても、それでも、どうしても帰りたいの! だから、どうしても、はいとは答えられなかったの!」

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