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(月の娘)(01)

ウェルザリーンの国王レイラームは、寡黙な王だった。
もともと無口だったのが、王妃を喪って以来、さらに口数が少なくなったようだった。
彼は、その年齢と地位から考えると異例なほど長い期間を独り身で通したが、ある年、周囲からの再婚の勧めをこれ以上断ることができなくなると、一人息子を呼んで言った。
「すまない」
と、一言だった。
呼ばれた王子ゼラルドは、ふだんから疎遠な父が、なぜこの件について謝るのか理解しかねた。が、おそらく亡き母の代理を求めているのだろうと推測し、こちらも言葉少なに、
「お気になさいませぬよう」
と答えて微笑んだ。国王はうなずいた。

父王の再婚が決まったこの夜、ゼラルドは城を抜け出して海岸を歩いた。
波の音を聞きながら、父のことと、亡き母のことを考えた。
内乱を鎮めるため、無実にして処刑された母。
親子というには遠い仲の父。
だが、父は父なりに、償いを生きている。と、聡い王子は知っていた。
物思うのにちょうどよい月夜だった。
満月の明かりが、砂浜をしらじらと照らしている。
ゆっくりと歩を進めていたゼラルドは、しかし、思いがけず思索を妨げられることになった。
いつからいたのだろう、砂浜に、少女がひとり、月を見上げていた。

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