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2011年5月

作者より:ブログ更新量について

いつも更新量が少なくて申し訳ありませんwobbly

もっとバリバリ生産できれば良いのですが。
ちょっとだけ生身のお話をさせていただくと、
フルタイム勤務と家事と持病を抱えているため、
どうしてもスローペースになってしまいます。
ついでに言うと、読書もアニメもゲームも好きですし…。

ブログという、ポツポツ更新できる媒体がなければ、
公開しようなんて思いもよらなかったはずの物語。
「えっ、今回これだけ?」というときもあるかと思いますが、
ブログという表現方法に免じて、どうかお許しください。

どんな読まれ方をしているのかなあと、よく考えます。
休み時間に/家事の合間に/おやすみ前に、
ひとかけらずつ、読んでいただいているのかなあ、と。
どうぞ、気の向いた時にはコメントをお寄せくださいねheart01

作者より:「化身の魔女」

連載してみたら、思ったより地味な話になってしまいました。
そして、ありきたりのオチでごめんなさいsweat01

「ルーク」の人となりを知ってもらえればと思って書いた話です。
いえ、たしかに基本は「フルート」と同じなんですけれども。

ちなみに、小さい頃の「ルーク」も、ふだんの一人称は「俺」で、
セレンと話してるときは素に戻って「ぼく」になります。

 
いつも応援ありがとうございます。
今回の話は、いろいろ反省点があったぶん、余計に身にしみました。
感謝して、精進したいと思います。

→ 目次に戻る

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化身の魔女(20)

 セレンはそこで黙ってしまった。ルークが皮肉っぽく、
「世界一醜い顔だった?」
 促すと、我に返り、
「え?・・・とんでもない!」
 驚いたように言った。
「彼女が思いこんでいただけなんだ。世界一自分が醜いって。全くのところ・・・そうだな、彼女のような人を、絶世の美女というんだと思ったよ!」
「ふうん」
 セレンがそのままぼんやりとなってしまったので、ルークはいささか困惑気味に、
「それじゃ、そこで目が覚めたのは、君としては残念なことだったよな」
 言ってみると、セレンは心外そうに、
「どうして? 彼女は化身で、本物は君じゃないか」
 そう言ったので、ルークはうんざりして――彼にはその辺の区別がどうしてもわからなかったのだ――、あとは放っておいた。
 夢に浸りこんでしまったセレンは、しかし、やがて我に返ると、いきなり、
「あのスカーフ留めは気に入っていたのにな」
と言いだして、ルークをあきれ顔にさせた。
「いいじゃないか。ぼくが誕生日にやった奴だろ、あれ」
「まあね、これはこれで良かったんだと思うよ。いいところの子に見えたもの、将来キートに資金が必要になるかもしれない。でも、三年前の誕生日だったんだぜ、あれをもらったの。ずっと大事にしてたんだ。だいたい、君はいつだって」
「わかったよ、悪かったよ。ぼくだって、あの子を見たときはびっくりしたんだ」
 二人がキートの背後に見た、キートが二人に会わせようとしなかった、ただ一人こちらに向かって手を振っていた彼の友達は、遠目にも可愛らしい女の子だったのである。

 キートは、魔法の解けた人々と一緒に、地面の線を越えて戻った。線を越えたところは、すでにいつもの見慣れた道、林の中の道だった。
 人々は、自分達を救ってくれたという二人の旅人が立ち去ってしまったのを残念がっていたが、まもなく散り散りになって帰って行った。キートは林の中に白い物を見つけ、何だろうと見に行ってみると、それはあの魔法のテーブルクロスだった。
「それ、なあに」
 友達に聞かれて、素直に教えると、
「ふうん、すてきね」
 友達は疑う様子もなくそう言ったが、持って行ったらとキートが勧めると、
「あなたが持って帰ればいいわ」
と言って笑った。それでキートはそうした。
 魔法のテーブルクロスは、すぐにキートの家の宝物になって、家を少しだけ豊かにしてくれた。振る人によって違う種類の食べ物が出て来るのだ、とわかるまでには少し時間がかかった。それを知ってからは、彼は大切な思い出をたどるとき、セレンの肩の金色の印を思い浮かべたあと、一体あのルークは何者だったのだろうと思うようになった。
 魔法のテーブルクロスは良い宣伝になったので、キートは、もらったスカーフ留めを手放さなくても、成功することが――妻を迎えることも――できそうだった。いつの日か、彼がこの特注品のスカーフ留めの由来を知るときが来たならば、そのとき、彼はあの二人組が誰だったのか、知ることができるだろう。

(完)

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化身の魔女(19)

 余談ではあるが、セレンが見た夢の話。町へ行く道すがら、彼がルークに話した物語は、こんなふうなものだった。
「気がつくと、さびれた知らない街の中に、ぽつんと立っていたんだ。日が暮れかけたような明るさだったけれど、それは最後までずっと変わらなかった。つまり、そこには朝も夜もなかったんだ。人はぽつぽつと歩いていたけれど、寂しそうだった。
 ぼくはとりあえず、街の広場に行ってみることにしてね、どこにあるかは夢だからわかっていて、ともかく行ってみたんだ。そうすると、広場には立て札があって、おふれが出ていて、何と書いてあるかといえば、その国の王女のことだった。
 曰く、王女は世界中で一番醜い娘で、自分のもとにやって来る求婚者たちが、自分でなく王国めあてにやって来ると信じている。だから、愛を試すために求婚者達に試練を与えていて、その試練に失敗した者は死刑。とのことだった。
 それで、そのおふれを知ったぼくは、自分がどうしてこの街にいるのかを思い出した。君を探しに来たんだってね。そうして、怒らないでほしいのだけれど、その醜くて残酷な王女様こそ、君の化身だとわかったんだ。それでぼくは、王女様に会うために、城に出向いて行った。
 行くと、すぐに会わせてくれて、ただし、この王女様は、醜い顔を人に見せるのが嫌だと言って、いつでもベールを12枚かぶっているんだ。ああこれを外さなければいけないんだな、と思った。ぼくが結婚を申し込むと――え? だって、君の化身ではあっても、彼女は女の子だったわけだから――すると、彼女はぼくを嘲笑して、『それでは、私が今日この城に隠す指輪を、明日来て見つけ出してください』と言うんだ。それでぼくは承知して、翌日にもう一度出向いて行った。
 まず広間に行って、王女様にごあいさつを賜ってね。それから始めたのだけれど、ぼくも探し出すのが本人ではなくて小さな指輪では自信がないからさ、同行してくれるようにお願いしてみたら、あっさり承知してくれた。あとは簡単だよね。王女様は君ほど無関心を装うのが上手ではなくて、しかも相手はぼくだもの、どんどん道ははかどって、ぼくは首尾よく指輪を探し出した。
 可哀想に王女様は泣き出しちゃってね、それがさ、いまだに、ぼくが財産めあてで来たと思ってるんだ。それでぼくは、指輪を見つけた塔の小部屋で、彼女をなぐさめる羽目になった。もっともそういうのは得意だからね、どんなにぼくが彼女を大切に思っているかを、こんこんと説いて聞かせたんだ。――え? だから言ってるじゃないか、彼女は女の子だったんだって。それでぼくはとうとう彼女を口説き落とした。そうして、いやがるのを説き伏せて、12枚のベールをそっと外したんだ、そうしたら・・・」

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化身の魔女(18)

「兄ちゃんたちさ」
 キートはそわそわし始めて、
「道案内のこと、もういいだろ?」
「ああ。なんだ、一緒に行かないのか」
「うん、先に行っちゃっていいよ」
「そうか。じゃあな」
 ルークは機嫌を直しているが、あっさりとそう言った。キートは少し名残惜しそうな顔を見せたが、
「うん。じゃあね」
 きびすを返しかけ、
「あっ、ちょっと待て」
 ルークに呼びとめられて振り返った。
「え、何?」
「ここまでの代金だから」
 ルークは言いながらきょろきょろと周りを見回し、セレンのスカーフに目を止めて、これ幸いとばかりに、
「これ持ってけよ」
「ルーク」
 抗議しようとするセレンから、無理やりスカーフ留めを外してしまった。
「ほら、キート」
「だって」
 キートが困ってセレンを見たときには、しかし、セレンは早くも諦め顔になって苦笑していた。
「いいよ。持ってお行きよ。そのかわり、それは君の宝物にして、大事にしまっておいてほしいな」
「・・・ありがとう」
 キートはそのスカーフ留め――美しく七色に光っていた――を受け取って、大切に懐にしまった。それから、二人を見比べて、
「いろいろと、ほんとにありがとう」
と言い、しばらく迷ったのち、思い切って言った。
「ルーク」
「ん?」
「俺さ。俺、あんたみたいになりたい」
 それは、真剣な言葉だった。ほんの一瞬、ルークは真顔でキートを見つめたが、すぐに、にやっと笑って言った。
「がんばれよ」
 キートの顔が輝いた。大きくうなずいた。
「うん!」
「じゃあな」
 ルークはにこりとしてそう言うと、
「セレン、行こうぜ」
 トンと地を蹴って馬にまたがった。馬の首を巡らすと、もう振り返らない。あっというまに、彼の姿は地面の線を越えて消えてしまった。
「さよなら、キート。君も早く行きなよ」
 セレンもすぐに馬上の人となり、馬の首を巡らせながら、そう言ってくれる。彼が向こうを向いたその一瞬、キートはその、スカーフを外した肩のところに、貴族の印、金色の細いきらめきを見たように思ったが、確かめるすべはなく・・・ことによると、それはあの長い金の髪が見せた錯覚かもしれなかった。
 振り向くと、魔法の解けた人々は、それぞれに我に返って、なんとなく察したという様子で、ぞろぞろとこちらに歩いて来ていた。一人だけ、駆けて来るのは彼の友達だった。
「こっちこっち!」
 キートは叫んで手を振った。

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化身の魔女(17)

 それでも、すべての囚われ人を返すと言った魔女の言葉は嘘ではなかった。森はだんだんに形を崩して多くの人の姿に戻りつつあり、三人は馬のそばに立って、その様子を眺めながらくつろいでいた。
「だいたい、俺に君がわからないなんて思うほうがばかなんだ」
 ルークは上機嫌だった。セレンは、自分が風に変えられていたと聞き、驚いた様子だった――彼にはその間の記憶はなかったのだ。そして、ルークの言うことは全くその通りだと、キートも今ではしみじみわかっていた――何しろルークは「風を見破った」のだから。けれども、キートは、それとは別に、自分が最初に彼らに何をしようとしていたのかということも、よくわかっていた。
「ごめんな、兄ちゃんたち」
 会話の合間に、キートは思い切って言った。
「え?」
 二人は二人ともキートを見つめ、キートは赤くなった。
「そのう、俺のせいで迷惑かけてさ」
「迷惑? 何が?」
 ルークが不思議そうに尋ねる。セレンのほうは微笑を浮かべながら、ちょっと首をかしげてキートを見ている。キートはどぎまぎしながら、心の中で、あの時のルークの愕然とした表情、それが今ではただの幻であることを、何よりも嬉しく思った――たとえ幻でしかありえなかったとしても。口に出しては、こう言った。
「迷惑っていうかさ。こんな厄介なことに巻き込んじゃったのは、俺が悪かったんだからさ」
「そんなことはないだろ」
と、ルークが言った。キートは言いなおして、
「うん、でも、けんかした俺と友達が、ばかだったからさ。そうだろ」
 ルークはあっという顔をして、それから、ちょっと困った顔をした。セレンが少し意地の悪い表情で、説明を求めるようにルークを見ている。
「いや、俺はただ」
と、ルークはぶっきらぼうにセレンに弁解して、
「こいつの友達っていうのがずいぶんわがままで、それでこいつがけんかしたって言うからさ、それは二人ともばかだって言ったんだ」
 ずいぶん簡略で無愛想な説明だったが、セレンはおかしそうな顔をした。
「ああ、それは君」
 キートに向かって、
「わがままなんか気にするなってことだよ。だって、そんなことを気にしていたら」
くすくすと笑いだした。
「ぼくはルークと付き合ってなんかいられないからね」
 キートはルークを見た。にらまれて、思わず笑いがこみあげた。
「笑ってないで、ほら、見ろよ」
 ルークは腹立たしそうに言って指差した。
「おまえの友達だって、もう見つけられるんじゃないのか」
「あ」
 キートにしても、それまでちらちらと人の群れを見てはいたのだが、ルークが指差した、まさにこのとき、彼は確かに友達の姿を見つけた。

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化身の魔女(16)

 朝の時間の経つのは速かった。太陽はどんどん昇って行き、昼近くに、何の前触れもなく魔女が現れた。行列のほうは、一匹のかたつむりがのろのろと地面を這っているところで、魔女はそのかたつむりをはさんだ向こう側に、二人と向かい合って立ったのだった。
 魔女が現れるなり、ルークの周りの空気がぴんと張り詰めた。ルークは立ちあがり、真っ向から魔女をにらみすえて――かたつむりが通り過ぎるまでには時間があった――低く言った。
「呼んでないぞ!」
 どうしたのか、おそろしく不機嫌な声だった。
「ふふふふふ・・・あはははは・・・!」
 魔女は嘲笑した。笑い声は次第に大きくなった。キートは何事かと身構えたが、やがて全身の毛がじわじわと逆立ち始めた――まさか・・・まさか。そんなはずはない。そんなはずは。ちょっと左を見てみれば、行列の残りが見えるだろう。
 キートはしかし、どうしても左へ目をやることができなかった。ぎゅっと膝を抱いて、おそるおそる目を上げると、魔女は口を耳まで裂いて笑っていた。恐ろしい形相だった。
「おまえたち、左をごらん!」
 魔女が叫んだ。ルークが隣で応じた気配があり・・・その後に落ちた沈黙の重さに耐えられず、キートもとうとう左を見た。
 行列の残りがあるはずの場所・・・そこには、もう、何ひとつなかった。
 キートは茫然となった。我に返るや、思わずルークの顔を見上げた。そうせずにはいられなかった。そして後悔した。
 ルークの端正な顔は、ありうべきことか、驚愕と不信とで真っ青に凍りついていた。血の気の失せた肌と大きく見開かれた目が、彼の動揺の大きさを外に教えてしまっていた。
「さあ」
 たたみかける魔女の声は興奮と期待とで震えている。キートは魔女をにらみ、一つの衝動が突き上げて来るのを感じていた――俺が、身代わりになろう。
 魔女と二人の若い客の髪を、かすかな風がなぶって過ぎる。魔女は高らかに声を張り上げた。
「終わりだ! 仲間は見つかったかい?」
 しかし、キートが何か言うよりも早く、ルークの声が言った。
「見つかったなら?」
 キートははっとした。いつもどおり凛として涼しげな声。少しためらってから、キートは隣をもう一度そっと見上げ、そして驚いた。ルークはすでに、さっきまでの自信をすっかり取り戻していたのだ。魔女が現れた時の不機嫌はもはや影も形もなく、彼は青い瞳を輝かせて確信に満ちていた。
 魔女の顔に不安がよぎった。疑い深げに答えた。
「見つかったなら・・・鳥なら鳥の名、花なら花の名、その他何であれ化身であるものの名を呼んで、よみがえるように言え」
 ルークは微笑んだ。何か近寄りがたいほどに気高く美しいその横顔を、キートは一種畏敬の念に打たれてじっと眺めていた。ルークは穏やかに言った。
「今ぼくの傍らを吹き過ぎた風よ」
 キートが何か思う間もなく、魔女が息をのみ、ルークは空中に手を差し伸べて続けた。
「よみがえれ」
 魔女が悲鳴をあげた。ルークの手の先で風が渦巻いたかと思うと、次の瞬間、そこには、髪の長い貴族的な若者が、びっくりしたように目をしばたたいて立っていた。
「・・・夢を見ていたよ」
 友人とキートを認めると、セレンは笑って言い、手を引いた――その手は差し伸べられた友の手の上に乗っていたのだ。ルークに向かって言葉を続け、
「その夢の中で、ちょうどぼくも、君を見つけたところだったんだ」
 ルークは簡単に答えた。
「そう」
 ・・・魔女の姿は、いつのまにか消えていた。

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化身の魔女(15)

 翌日、キートが目を覚ますと、世界はもうまったくの朝だった。前日の出来事を思い出しながら体を起こしてみると、ルークはもう隣にはおらず、前の方の、昨日と同じ場所に座って、すでに行列を動かして眺めていた。
「・・・おはよう、ルーク」
 隣に行って遠慮がちに声をかけると、
「止まれ」
 ルークは行列を止めてキートを見上げ、微笑して、
「おはよう。これはどう思う?」
 行列の先頭を指差した。
「え?」
 キートが見ると、そこには――
「――何だ、これ。こんなの違うよ・・・と、思うけど・・・」
太った大きなトカゲのように見えるその生き物は、緑色をした不格好な体の首のところに、スカーフのようなオレンジ色の模様を付けていた。
「違う? どうして?」
 ルークが怪訝そうになったので、
「どうしてって・・・」
 うろたえたとき、ルークの目のいたずらっぽい光に気が付いた。
「ちぇっ、なんだよ」
 キートの抗議に、ルークは肩をひとつすくめて見せて、
「朝飯食おうぜ。俺もまだ食ってないんだ」
と、提案した。もちろんキートは賛成した。
 今回はキートが魔法のテーブルクロスを振った。テーブルの上にはまた料理の皿が並んだが、
「・・・あれえ?」
 キートが思わず言ったのは、それらが昨夜とはだいぶん趣が違い、見るからに田舎料理といった朝食だったからである。ルークのほうは、
「そんなこともあるだろ」
 頓着しないでスープの皿をとり、
「うん、うまい」
 すぐに猛烈な勢いで食べ物を片づけ始めたので、キートもあわてて食べ始める。何にしても、温かくておいしいことに変わりはなく、二人はあっというまに、たっぷりあった黒パンとスープとサラダとベーコンと卵料理をたいらげてしまった。
「あとちょっとだね、ルーク」
 キートが景色を眺めながら言ったのは、これは行列のことである。
「ああ」
 ルークが軽く応じた。左の世界には、もう森はほとんど残っていない。
「昼ごろには終わるな。始めよう」
 二人はまた元の位置に戻り、行列を動かした。

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化身の魔女(14)

「その友達がね・・・ちょっと生意気な奴でさ。しょっちゅう約束忘れるくせに、ちっとも悪いなんて思ってないみたいだし、そのくせ、俺がたまに何かうっかりすると、すぐに怒って意地が悪くなるし、三日前もさ・・・俺が会いに行ったら、いきなり、商人になる勉強なんか、くだらないからやめろっていうんだ。そりゃ、今から思えば、商人のうちの子どもなら、そう思うようなこともあるんだろうなってわかるよ、でもさ・・・ほんと、そういう変なことを、突然言い出すような奴でさ。とにかく、俺、それで腹が立って、そんならもう来ないって言って、それでけんかになってね。だけど、その後、魔女に会った時さ。あいつ、これっぽっちも迷ったりしないで、それこそ俺が止める暇もなくて、自分から魔女の犠牲になって――俺は、なのに、探し出してやれなくて・・・。なあ、やっぱり、俺が悪かったのかなあ・・・」
「そんなことはないだろ」
 ルークがあっさり答えた。キートはぼんやりと、
「・・・そうかな。でも、あいつは悪くないよな?」
 今度はほんの少し間があって、
「けんかした二人ともばかだったんだろ」
 ややぶっきらぼうな答えが返って来た。
「・・・」
 腹は立たなかった。キートは少し考えて、よくわからないが反論の余地はなさそうだと感じた。
「そうだね」
 素直にそう言いながら、ふと、あの髪の長い若者がここにいたら、何か説明してくれたのだろうかと思った。どうしてか、そんな気がした。
「キート、もう寝ろよ」
 少し穏やかな口調になって、ルークが言った。夜空には流れ星。キートは不意に、とても幸せな気分になった。
「うん。おやすみ、ルーク」
「おやすみ」
 応じたルークの涼やかな声は少しも眠そうではない――そうキートは思ったが、すぐに、すやすやと夢の中に落ちて行った。それは、久しぶりの安らかな眠りだったのである。

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化身の魔女(13)

「あのさ・・・ルーク」
 楽しい夕食の後、星の出た夜空の下で、毛布にくるまって膝を抱えながら、キートはためらいがちに言った。
「何だい」
 ルークは友達の馬から自分用に毛布を取り外しながら応じた。
「あのさ・・・あの・・・見つかるかなあ」
 言ってから、言わなければよかったと後悔しかけたが、毛布を取って戻って来たルークは、相変わらず明るく楽観的だった。
「大丈夫だから心配するなよ」
 笑いを含んだその言葉は、単なる強がりにはちっとも聞こえなかった。キートは半分以上、ルークのこの楽観を信じた。ルークは毛布に身を包むと無頓着に地面に寝ころび、キートもそれにならって仰向けに体を伸ばした。夜空には満天の星が見えた。
「星だけは絶品だな」
 ルークが口笛を吹くのが聞こえ、
「・・・あんたって、なんか、すごいね」
と、キートはつぶやいた。
「え?」
 ルークが訊き返し、キートは繰り返さなかったが、その代わり、
「俺さ」
 ひとり言のように話し始めた。顔は星空に向けたまま。
「俺さ。大人になったら、すごい大商人になるのが夢なんだ。俺んちは羊の毛で暮らしを立ててるんだけどね。俺、もっと、うんと金持ちになって、父ちゃんと母ちゃんに楽させてやりたいんだ。これでもさ、父ちゃん達には内緒で、友達に読み書きを教えてもらってるし、難しい計算もさ、ちょっとずつなら出来るようになってるんだ。時々のことだから、なかなか進まないけど、友達のうちは商いやってるからさ、いろんなことを教えてもらえて、すごくおもしろいんだ。それで、その・・・その友達なんだけどさ」
「うん」
 聞いてなどいないかと思ったのに、ルークはあいづちを打ってくれ、それでキートは話を続けた。

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化身の魔女(12)

 和気あいあいと昼食を終えると、ルークはひとりごとのように、
「それにしても時間がかかるな」
「うん」
 キートが同意すると、
「おーい、魔女」
と呼んだ。キートが驚く暇もなく、魔女はすぐに現れた。それが口を開くより早く、
「一体これが全部終わるまでどれくらいかかるんだ?」
 魔女はがっかりしたようだったが答えた。
「まるまる一日くらいかしらね。でも、外の世界の時間なら心配ないわよ。あなた達が来た時から全然時間は経っていないわ」
「この太陽はここだけの太陽ってわけか」
「ええ。夜になったら眠ったっていいわよ」
「晩飯はどうしろって?」
「ほんとに図々しい人達ね」
 魔女は不機嫌な様子になった。
「私を何だと思ってるの」
「だったら早く終わるように、こいつらの数を減らせよ」
「・・・食事なら」
 魔女はまた上機嫌になった。
「いいわ。あげるわ。ここにテーブルを置くわね。テーブルクロスを振れば、適当に食べ物が出てくるはずよ。でも、これ以上のぜいたくは許さないんだから」
「馬の分は」
「・・・何ですって?」
「馬の食事だよ」
 魔女はきっとなったが、さっと杖を振って、二頭の馬の周りに青草を茂らせた。
「これでいいでしょ。もう用はないでしょうね。――そう。じゃあね」
 そうして、怒りながら再び消えてしまった。
 午後いっぱい、二人はまた黙々と行列を眺めて過ごした。日が落ちる頃、行列を止めて食事をとった。ルークが魔法のテーブルクロスを振ると、テーブルの上には王侯貴族もかくやという御馳走が並び、二人は驚いたものの、もちろん喜んで、おなかいっぱいに食べた――こんなことなら昼飯の前に出させるんだった、と、ルークがぼやいた。

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化身の魔女(11)

 それからどのくらい時間が経っただろう。キートは自分のことではないのでさすがにぼんやりして来て、それに空腹も感じ始めていた。考えてみれば、今日は朝から、どうやって旅人を探そうか、何と言ってだまして置いて来ようか、また自分にそんな悪いことができるのだろうか、そんなことばかり考えていたので、起きてからまだ何も食べていなかったのだ。腹の虫がグーと鳴いて、キートは途方に暮れた。
「止まれ」
 その時、ルークが素っ気なく言って、行列が止まった。キートははっとして顔を上げる。ルークは立ちあがり、うーんと伸びをすると、背後にいる彼の馬のほうへ行くようだった。
「え・・・ル・・・兄ちゃん」
「ルークでいいぜ」
「ルーク。あの、これ・・・これが・・・?」
「ん?」
 ルークは白馬の首を叩いてやっていたが、振り返った。キートがぽかんと行列の先頭を眺めているのを見ると、一回まばたきして、
「何だおまえ、そっくりだと思わないのか?」
と言った。
「・・・うーん」
 キートはうなった。そう言われれば似ているような気もした。やせて背の高い所とか、穏やかそうな所とか。でも、もし間違えたら・・・。
「あんまり悩むなよな」
 ルークが戻って来て、また腰を下ろした。キリンの長い長い首を見上げて考え込んでいるキートの腕の中に、ぽんと丸い物が投げ込まれた。パンの塊だった。
「あ、どうも・・・」
「ほらナイフ。こっちが肉。その他いろいろ。適当に食べろよ」
 言っている本人は、もう何やかやを手早く挟み込んでパンにかじりついている。
「ルーク、じゃあ・・・」
 キートがキリンを指差すと、ルークは今度は笑いだして、
「違うよ」
と言った。
「似てるといえば似てるけどさ。初めて見るよな、こんなの」
「うん。でも聞いたことあるよ。キリンでしょ? 南にいるっていう」
「さっきのシマウマも面白かったよな。俺の馬に縞模様を付けたら、ああなるのかと思ってさ」

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化身の魔女(10)

 キートはルークを見上げ、声をかけていいのだろうかと迷った。が、ルークのほうが先に口を開いて、
「立ってても疲れるだろ。座れよ」
 変わらない打ちとけた声をかけてくれたので、ほっと安心した。
「うん」
 ルークが座ってから、その隣に腰を下ろした。ルークは相変わらず気のなさそうな様子で、ただ目だけは決して行列から離すことがない。キートは黙って自分も行列を見守ることにした。自分の友達さえ見つけられなかったのに、あの若者を見つけられるとは思えなかったけれども。
 しかし、実際それは、無責任な目から見たらなかなか面白い眺めだった。行列は、草木も獣も鳥も虫も、ごちゃまぜになって進んで行き、中には見たこともないような珍しい生き物もあった。キートはしばし、自分の経験した苦さを忘れ、隣のルークに申し訳ないと思いつつ、不思議な眺めを楽しんだ。行列の中には、美しいものも、醜いものもある。あの綺麗な若者の化身なら、何となく、美しいものに違いないだろうとキートは思ったけれど。
 夜鶯が、まだ昼間なのに一声さえずって空を飛んで行った。生まれて初めて見るシマウマが、ぱかぱかと通り過ぎて行った。ナマケモノを見るのも初めてだった――これの場合は、ナマケモノという名前だってキートは知らなくて、ただ、妙な毛むくじゃらの動物、というふうにとらえたのだったが。
 キートは時々ルークの顔を盗み見たが、ルークは全く表情を変えず、片膝を抱えて、じっと目の前を通るものを眺めているばかりだった。もっとも、その口元にはかすかながら、状況を楽しんでいるような笑みが浮かんでいて、それなりに彼も面白がっているようだったので、キートは一面ではそれを見て安堵したし、一面では不安にもなって、あわててその不安を追い払った。何も自分が心配してやることはないのだし、と、自分に言い聞かせる。俺は止めようとしたんだから。
 行列は一定の間隔で連なり、とてもゆっくりと進んでいて、小さなものも決して見落とされることはなかった。大きなガマガエルの後に、小さなトンボがすうっと過ぎた時もちゃんと見えたし、モモンガがひらりと飛んだあとにコオロギが地べたを跳ねたのもわかった。木や草は動物ほど面白くなかった。花はまあまあ飽きなくて、時々、やさしげな風情の花が地面を滑って行くと、キートは期待してルークを振り返るのだったが、ルークのほうはそのどれにも関心を示さずに、行列を止めもしないで、花が遠くへ行くままに放っておくのだった。

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化身の魔女(09)

 ――ルークとキートと二頭の馬は、魔女と一緒に、どこまでも続くひび割れた大地の真ん中に立っていた。振り返れば、彼らが今越えて来た線が、荒れた地面の上にくっきりと引かれているのを見て取ることができた。
「今ここには何もないわ」
と、魔女が言った。そしてそれはその通りで、ここには、彼ら自身を除けば、どこを見ても、大地と空と乾いた太陽の他に何もなかった。どんな種類の音も、どんな生命の息吹も。
 魔女はそれから、杖で左の方を指した。
「森を出すわよ」
 魔女が杖を振ると、空っぽだった世界の左半分は、一瞬にして森になった。世界に生命の力が生まれ、音や匂いや湿り気が様々に混じり合い、しかし、それは左半分だけのことで、右半分の世界は依然として死んだままなのだった。
「さあ、今からこの森は、少しずつあちらに移動するわ。こんなふうによ」
 魔女がもう一度杖を振ると、奇妙な出来事が起こった。森の木が一本、森を離れて歩き出したのだ。歩く、というのか、泳ぐ、というのか・・・その木は立派な樫の木だったが、土に根を埋めたまま、ゆっくりと左の森を離れ、立って見ている者たちの前を通り過ぎて、右の世界の奥深くへと入って行った。右の世界に、かすかな生命の炎が宿った。
 すると、間をおかずに、今度は一匹の蛇が、するすると土の上を這って、左の森を抜け出して来た。蛇は、先に行った木を追いかけるようにして、右の世界に入って行った。蛇の後には大きな狼が一頭続き、その後にはすみれの花、その後にはカラスが一羽、その後には・・・その後には・・・。
「そのうちに、あなた達の仲間もここを通るはずだわ」
と、魔女が言った。すでにルークは、最初の木が通り過ぎる時から、気のなさそうな様子ながら、すべての物を見逃さずにちゃんと目に収めていた。魔女は続けて、
「一度に一つしか通らないわ。行列を止めたくなったら、いつでも『止まれ』と言えばいいのよ。『進め』と言えば進むわ。何度止めても結構よ」
 ルークが何も言わないので、キートが代わって、
「わかったよ」
と言った。魔女は笑って、
「用が出来たら呼んでちょうだい」
 勝ち誇ったように言い捨てると、ふっと姿を消してしまった。

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化身の魔女(08)

 魔女がひょっとしたら拍子抜けしたかもしれないことに、旅人達は慌てず騒がず、一度の説明ですっかり納得した。ルークとセレンはそれぞれ馬から下りて、互いにそれに気付き、互いに嫌な顔をして見つめあった。
「・・・友達がいのない奴だな、セレン」
と、ルークが先に言った。
「何を。言い出したのは君じゃないか」
と、セレン。二人はしばらく譲らずににらみ合っていたが、やがてルークが肩をすくめて、
「コインで決めよう」
 提案すると、金貨を一枚投げあげた。くるくると回りながら落ちて来た金貨を、さっと握ってこぶしを上に向ける。
「表」
とセレンが応じて、ルークは手を開き、
「ちぇっ」
と軽く舌打ちした。表。
 セレンはにこっとして魔女の方に進み出た。念を押して、
「本当に、魔法を見破ったら帰してもらえるんだね?」
「保証するわ」
 魔女は嘲笑に近い笑みを浮かべながら、それでもはっきりと請け合った。
「そう。では、ぼくがあなたに差し出されましたよ」
「賭けに勝ったのに? 変な話ね」
 セレンは微笑して、
「探すよりも探してもらうほうが楽だからね」
「事態を把握してるとは思えないわ。愚かで幸せな人たちなのね」
「ではどうすれば満足だったんです?」
 セレンの言葉はとても柔らかで優しかったが、魔女は皮肉に気付いた。笑みを消して、じっとセレンを見つめ、やがて、
「いいわ」
と言って、さっと杖を振った――セレンの姿が消えた。
 魔女は無表情にルークとキートに向き直った。
「それで、あなた達は彼を取り戻したいの」
 ルークは不機嫌にうなずき、キートも懸命にうなずいた。魔女は地面に杖で一本の線を引き、そして、気のせいかさっきよりも邪悪さの増したように見える笑顔で、二人を振り返って言った。
「じゃあ、来てちょうだい」
 歩き出した魔女の後を追って二人は線を越え、ゆらっと周りの風景が揺らいだ――

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化身の魔女(07)

 魔女は、驚くほど美しくしとやかに、林の中に突然現れた。
「ようこそ、私の森へ」
 その甘い声とともに、林は生い茂る森に変わっていた。頭上で日光が木の葉に遮られ、視界が暗くなった。
 三人の目の前でにっこりと微笑んだ魔女は、意外にも非常な美女で、ゆったりした藍色の服を身にまとい、赤い豊かな髪と湖のような青い目をして、すらりと伸びた白い右手に、精巧な細工を施した緑色の杖を握っていた。しかし、その優美な姿にはどこか、何かが狂っていると感じさせる危険な違和感があり、そのために、彼女が昔話のいわゆる「良い魔法使い」でないことは、はっきりとしているのだった。
 彼女はすぐに、キートに気付いた。
「あら、あなた」
と、彼女はふさふさした赤毛を揺らして言った。
「この間の子ね。友達を返してもらいに来たの?」
 キートは魔女をにらんだ。ルークが馬上から、
「俺達は町に行きたいんだ。ここを通してくれ」
「あら、だめよ。一人は私の所に残るのよ」
 魔女はころころと笑った。キートを見下ろすようにして、
「話してないの、あなた?」
 言ってから、他の二人には聞こえないように身をかがめて声をひそめ、
「この人たちを身代わりに出せば、お友達を返してあげるわよ?」
 それでもキートは何も言わずに魔女をにらんでいた。
 魔女はあきれた顔をして背筋を伸ばした。そしてすぐに、あやしい微笑みを浮かべ、全員に向かって言った。
「それじゃ、いいこと? 一人は私の所に残らなければならないわ。誰かが残って、私の魔法で、人間ではない別のものになるの。他の人たちには一度だけチャンスをあげる。もしそれで私の魔法を見破ることができたら、仲間は返してあげるし、今までに魔法にかけた人たちだって、全部返してあげるわ。さあ、わかったら、誰が残るか決めてちょうだい。決めなければ三人とも、その姿を変えてしまうわよ」

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