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華飾の町(08)

 フルートは、むっとしたが、自制して、続けた。
「子守唄でも吹いてあげようか」
「・・・子守唄!」
 セレンはぱっと身を起こした。フルートは一瞬、怒らせたかと思ったが、セレンの目は輝いていた。
「笛を吹いてくれるの!」
「ご希望があれば」
「子守唄なんて言わず、もっと吹いてよ」
 こんな町中でフルートの笛が聞けるとは思ってもみなかった。もっとも、考えてみれば、おかしなことは何もない。フルートはいつも、人が集まって来るのがわずらわしくて笛を吹かないのだが、今の場合、人はもう集まってしまっているのだ。
 フルートは少し音階とアルペジオを吹いていたが、やがて練習をやめ、
「では・・・最初の曲は君に」
 故郷リーデベルクの習慣どおりにそう言って、静かに吹き始めた。静かに、けれど、澄みきった、よく通る音。外のざわめきなど気にならなくなる。
 いつもと同じだ、と、セレンは涼やかな調べを聞きながら思った。いつでも、フルートが彼のためにといって吹いてくれる最初の曲は決まっていた。そして、フルートはセレン以外にはその曲を捧げない。
 高く低く、湖の上を渡る風のように、笛の音は響いていった。旋律は次第に明るくなり、春の森の若草色を思わせた。春、そして、夏。セレンはいつでも思い出すことができる。森の泉のきらめきと、その泉で振り向いたときに目に映った、白い仔馬と少年の姿を。
 セレンはふと、部屋の入口に目をやって、仲間達が遠慮がちにのぞいているのに気が付いた。
「入っておいでよ」
 ためらわずに声をかける。
「独り占めする気はないからさ」
 フルートはちょうどそのとき、最後のフレーズを奏で終えたところだった。顔を上げ、一同を見渡すと、
「次は何がいい?」
 フィリシアとミルガレーテは、部屋に入ってきてベッドに座った。ゼラルドはまだ戸口でためらっていた。それへ笑いかけながら、
「何もないなら、適当に選ぶよ――ゼラルド、君もおいで」
 ゼラルドはおとなしくそっと部屋に入って、戸口近くの壁に寄り掛かった。フルートが次の曲を始めると、はっとした様子をする――それはゼラルドの故郷の曲だったのだ。紫色の旋律と呼ばれる、独特な悲しげな節回し。

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