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華飾の町(09)

 そして、次から次へと、笛の音は曲を紡いでいった。どんな曲でもフルートは吹いた。もうこれは、単なる気分転換と呼べるようなものではなかった――フルート自身はどのくらいその素晴らしさを知っていたのかわからないけれども。だんだん、明るい、陽気な曲が多くなってきていた。楽しい踊りの曲、軽やかなワルツ。
 不意に、何を思ったのか、フィリシアは窓際に立っていき、そして・・・歓声をあげた。窓の下の群衆は、いつしか、みな踊っていたのだ! 広がるドレス、風に舞う髪、そして、笑いさざめく、様々な声――様々な声――様々な――様々な!
「きれい・・・」
 ミルガレーテが、フィリシアの陰で感嘆のため息をついた。窓のそばに集まって、全員がその光景に見入った。もちろん、フルートは笛を吹き続けながら。
 宿の主人も、群衆の中で踊っていた。老いた者も、幼い子供も、すべての町人は通りに出ていた。やがて踊りに変化が訪れた。決まった型どおりの踊りが、輪の中心から崩れて、華やかなバリエーションを形作った。
「彼らが何を見失っていたにしても」
と、ゼラルドが言った。
「まだ、美しいものを感じ取る心は失っていなかったのだね――」
 ――疲れを知らぬ笛の音は、高らかに軽やかに響き続けている。なぜ、あの何の変哲もない一本の横笛が、これほど多くの人の心を和ませることができるのかは、大いに不思議なことであったけれども。そして、フルートがとうとう笛を吹きやめた頃には、すでに別の楽器の音が、いくつも鳴り始めていた。
 その様子は、町が丸ごと、一つの音楽と化してしまったかのようだった。永遠に続くかと思われるように、活気づいて、華やかに、美しく。永遠に、永遠に。

 そして、旅人達は再び、身支度をし、馬を連れて立っていたのだった。町中が踊りの渦に巻き込まれた、その翌日の朝だった。
「ではお気をつけて」
 宿の主は、決して宿代を受け取ろうとせず、心底驚いたように首を振り、心づくしの見送りをしてくれた。
 通りでは、作業着姿の住人たちが、めいめいの仕事に打ちこんでいた。大工や、仕立屋や、絵描きや、音楽家たち。そういった人々は、旅人達が通り過ぎると、気恥かしげに微笑んだり、一礼したりした。
 フィリシアが、歩きながら、そっと言った。
「うつくしい町だわ」
「そうだね。たぐいまれな町だ」
 セレンが応じて微笑んだ。
 そうして一行は、生まれ変わった芸術家たちの町をあとにしたのだった。

(完)

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