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  • (2017/12/11朝)また休日出勤などあったので、本編進んでおりません…。ふえーん…。

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2011年9月

作者より:更新休止のお知らせ

かねてよりの予告どおり、しばらく更新をお休みして充電することにしました。

再開予定は、まったくの未定です。

再開希望の方は、感想コメントなど書き込みながら(どの話が好き、とか)、

気長にお待ちくださいませ。

作者より:「命令の指輪」

というわけで、フルートとフィリシアの話なんだけれども、セレンも出番が多いお話でした。

ミルガレーテ不在時は、お姫様ひとりにナイトが3人という逆ハーレム状態の顔ぶれですが、

気配り上手なセレンがいてこそ、フィリシアも居心地悪くならずに済んでいるのではないかなあ、と思います。

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命令の指輪(08)

「・・・気がついた?」
 フィリシアはベッドの中で目を開けた。部屋にはセレン一人だけが、傍らでフィリシアの手を取っていた。フィリシアを包んでいた白い光が、薄れて消えていく。
「セレン。私・・・?」
「鏡、見る?」
「・・・ええ」
 体を起こしたフィリシアに、セレンは手鏡を渡した。フィリシアは自分の白い手を見て、はっとしたようだったが、おそるおそる目を上げて鏡を覗きこみ、
「ああ!」
 常と変らない自分の顔を見て、安堵と喜びの声をあげて、セレンに抱きついた。
「良かった、私・・・」
「ぼくは、カエルのお姫様でもかまわなかったのだけれど。良かったね、フィリシア」
 セレンはフィリシアの背中をぽんぽんと叩いた。
「ああ、そうだ。それから、これを」
 取り出したのは、買ってあった白い花の髪飾り。フィリシアの髪に留めてやって、
「やっぱり、よく似合うよ」
とにっこり笑った。

 フィリシアは、自分が魔法で服従を強いられていた間のことを、少しも覚えていないようだった。自分がどこに連れ去られたかも、何を言わされたかも、自害を企てたことさえも。
 それならそれでいい、と周りは思ったし、フルートも、何があったかを教えたりはしなかった。フィリシアは、ただ悪い魔法にかけられて、そこから覚めたのだ、とだけ教えられた。
 ――ある秋の日の昼下がり。フィリシアは宿屋の台所を借りて、およそ王女に似つかわしくないジャム作りに張り切っており、成り行きを察してセレンとゼラルドが逃げ出したあと、ひとり果物の皮むきを手伝わされる羽目になったフルートが、別に苦にするでもなく黙々とティルの実の皮をむいていたとき。
 不意に、フィリシアが鍋を取り落とした。鍋はまだ空だったので、カランカランと床に転がっただけだった。
「フィリシア?」
「思い出した・・・私・・・私・・・」
 フィリシアは両の頬を押さえ、みるみるうちに耳まで真っ赤になった。
「私、あやつられて、あなたに・・・!」
 フルートは、それが例の事件のときのことだと直感したので、ひやりとして、フィリシアが再び自害など企てないように、あわてて言った。
「大丈夫、魔法で無理やり言わされたって、わかっているから。気にするな」
「ありがとう」
 フィリシアは、心底ほっとしたようだった。そして、続けて、
「相手があなたで良かったわ」
と言って、はにかんだように笑った。
 ・・・あとでセレンとゼラルドが台所を覗いてみると、そこには、無邪気にジャムの味をみている王女と、なぜか上機嫌でジャムを混ぜている王子の姿があったのだった。

(完)

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命令の指輪(07)

 セレンはフィリシアの手を両手で包みこみながら、
「お姫様、暗くて見えない君の顔に、さわってみてはいけない?」
 フィリシアは逡巡した。が、いつまでも隠していられることでもなかった。心を決めて、ゆっくりと振り向き、
「・・・いいわ。でも、おねがい。びっくりしないでね」
 セレンはフィリシアの手から片手を離し、そっとフィリシアの頬をさわった。ぬらぬらして、いぼいぼしている頬。
「ほんとだ」
とセレンはささやいて、次の瞬間、フィリシアはふわりと抱きしめられていた。
「フィリシア、そんなふうに泣かないで」
 言われて、フィリシアは自分がずっと泣いていることに気付いた。頬は涙で濡れていた。
 セレンはフィリシアの耳元で、
「フィリシア。君の、この可愛いカエルのほっぺにキスしてもいい?」
「な・・・な、な、何を言うの、セレン!」
「だめ? じゃあ、考えて、お姫様。もしぼくが、ガマガエルのような顔になってしまったとして、君はぼくを旅の仲間と認めてくれなくなる? フルートはぼくを友達と認めてくれなくなる? ゼラルドはぼくに優しくしてくれるようになる?」
 フィリシアはひとつずつ検討して、最後の質問には吹き出して、答えた。
「いいえ。そんなことはないと思う」
「それなら、君も今まで通り、一緒に来てくれるね?」
「それは・・・でも・・・」
「じゃあ、洞窟の入口にいるフルートとゼラルドを追い払ったら、ひとまず一緒にここから出てくれる? 何を見ても驚かないと約束するよ。それとも、ぼくに見られるのも嫌? そんなに信用ないかな」
「・・・わかったわ」
 フィリシアはため息をつくように了承した。
「じゃあ、ちょっと待っていて」
 セレンはそっとフィリシアを離して、洞窟の入り口のほうに向かった。やがて、入り口のほうから、フルートの、
「どうして、ぼくはだめで、君ならいいんだ」
という不満そうな声が聞こえたが、すぐに静かになった。
 セレンは戻って来ると、うやうやしくフィリシアの手を取った。
「さあ、二人とも追い払ったから、参りましょう、姫」
 フィリシアは緊張しながら、暗い洞窟を抜けて、明るい日の光のもとに出た――

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命令の指輪(06)

 フィリシアは、洞窟の奥深くで震えていた。森の中で歌いながらイチゴを摘んでいたら、何か間違ったことを歌ってしまい、傍らに跳ねてきたガマガエル――の格好をした魔法使い――が、気に入らないと言って呪いをかけて来たのだ。おまえの肌もガマガエルのようになるがいい!
 フィリシアは、変わりゆく肌の色を見て、悲鳴をあげて近くの洞窟に逃げ込んだのだ。
「フィリシア?」
 洞窟の入り口のほうでフルートの声がして、フィリシアはびくっとした。
「フィリシア、そこにいるね?」
「来ないで!」
 フィリシアは思わず、悲鳴をあげてあとじさった。
「フィリシア? 一緒に戻ろう」
 かまわずに中に入って来る気配。
「来ないで! 近寄らないで! それ以上近づいたら、私・・・私・・・」
 ただごとではない様子に、フルートが立ち止まった。困惑しているようだ。
「フィリー、そんなことを言ったって・・・」
「君は少しどいていなよ、フルート」
 今度はセレンの声がした。やわらかな声。
「フィリシア、ぼくだったら、近くに行ってもいい? 何も無理強いはしないよ」
「・・・よくないわ」
「何があったのか、話を聞かせて。大声でどなりたい?」
「・・・いいえ。・・・わかったわ、もう少し近くに来て。でも、私を見ないでくれる?」
「こんな暗がりでは、見たくても見られないよ」
 セレンが近づいてくる気配。フィリシアはセレンに背を向ける。ぼんやりした闇の中、セレンはフィリシアの背中にやさしく話しかけた。
「さあ、お姫様。どうして君を見てはいけないのか、教えてくれる?」
「セレン。私・・・私ね、醜くなる魔法をかけられてしまったの。いまの私は、顔も手も足も、ガマガエルのようにぬらぬらして、いぼいぼしているの・・・」
 話す声は細くなり、震える。セレンはそっと聞いた。
「君の手に、さわってみてもいい?」
「・・・いいわ。でも、おねがい。びっくりしないでね」
 セレンはそっと、差し出されたフィリシアの手にさわった。ぬらぬらして、いぼいぼしている手。
「・・・ほんとだ」
と、セレンはやさしく言って、そっと、その手の甲にキスをした。
「セレン!」
 暗がりの中、びっくりしてフィリシアが振り返り、あわててまたそっぽを向く。

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命令の指輪(05)

 宿に帰りついて、フィリシアをベッドに寝かせると、フルートはセレンとゼラルドに事情を説明した。フィリシアの名誉のために、彼女が何を言わされたかは伏せた。
 フィリシアは一向に、起きる気配がない。
「もしかしたら、夢の中に逃げ込んでいるのかもしれない」
と、ゼラルドが言った。
「自害を試みるだけの意志が残っていたなら、無理やり命令に服従させられる現実から、夢の中に逃げ込むこともできたかもしれない。フィリシアが再び夢から現実に戻って来れば、もう指輪はないのだから、おのずと魔法も解けるはずだ」
「どうすればいい」
「他人の夢を覗くのは気が引けるけれど、非常事態だから。少し下がっていて」
 ゼラルドはそっとフィリシアの手を取って、何かつぶやいた。ポウッとフィリシアの体が白い光りに包まれる。
 ゼラルドはさらに何かつぶやいていたが、やがて顔を上げると、
「見えた。来て、彼女の手に触れてくれ」
 フルートとセレンがおそるおそる近づいてフィリシアの手に触れると、周りの景色がゆらいだ――

 ――そこは、深い森の中の、洞窟の前だった。
 戸惑うフルートとセレンに、ゼラルドは静かに告げた。
「ここはフィリシアの夢の中だ。この洞窟の中に、フィリシアがいる」
 三人は洞窟の入口に視線を向けた。苔むして、シダが垂れ下がっており、暗い。
 ゼラルドは続けて、
「この中からフィリシアが出て来れば、夢は覚めて、魔法も解ける。ただ、自ら洞窟に隠れたフィリシアが、簡単に出て来るかどうかは・・・」
「要は、連れ出せばいいんだろう」
 フルートが気短に言って、洞窟に入った。
「待てよ、フルート」
 セレンも慌てて後を追った。
 ゼラルドは、洞窟の入り口で、うつつとの境界を取り持ちながら、待つことにした。

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命令の指輪(04)

「よせ!」
 フルートはゴーエン公を離し、フィアに駆け寄って短剣を取り上げた。
 フィアはゆっくりとフルートを見上げた。涙に濡れた睫毛の下から、煙るような青い瞳がフルートを見上げ、かすれた声がため息のように告げた。
「好き・・・」
 それきり、フィアは目を閉じて、ぐったりと気を失ってしまったようだった。
 つかの間、フルートは、常になく激しく動揺し、うろたえていた。が、すぐに、フィアが「心にもないことを無理に言わされていて、そのせいで自害まで試みた」ことに思い至り、冷水を浴びせられたような思いで我に返った。
 そっとフィアを横たえると、フルートはゴーエン公に向き直った。
「彼女は私の知人です。元に戻していただきたい」
「そうだったのですか・・・」
 ゴーエン公は驚きつつ、納得した様子だった。そして、困った顔をした。
「しかし、申し訳ありません。実は、この魔法は、解くことができないのです」
「・・・何ですって?」
「いえ、時間が経てば自然と解けます。早ければ一ヶ月、遅ければ一年ほどで・・・」
「一年!」
 フルートの顔が険しくなったのを見て、ゴーエン公は、また乱暴されるのではないかと慌てたように、
「いえ、その方の場合、自分の意志が多少なりとも残っているようでしたから、ひと月もあれば元に戻るでしょう」
「指輪を壊したら魔法が解けるのではありませんか」
「な、何をおっしゃるのです。これは私の大事な、大事な・・・」
「壊してください」
 フルートはゴーエン公をにらみつけた。ゴーエン公は震えあがって、そっと指輪を抜きとり、さんざんためらったあげく、ナイフの柄を振り下ろした。ガチリと鈍い音がして、指輪は壊れ、不思議な文様も砕けた。
 魔法が解けているのかいないのか、フィアは眠り続けている。フルートはフィアを抱き上げた。
「ご協力に感謝します。それでは、これで失礼します」
 しかし、馬車に乗せて帰る間、フルートがどんなに声をかけても揺さぶっても、フィアは一度も目を覚まさなかったのだった。

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命令の指輪(03)

 青年が、部屋の奥にある衝立に声をかけると、その陰から現れたのは・・・女中の服を着せられた青い髪の娘。顔を見ればフィアだった。フルートは息がとまるほど驚いたが、フィアのほうはフルートに気付く気配はなかった。
 銀髪の青年は機嫌よく、
「さあ、可愛い女中さん。こちらの方が、おまえの新しい御主人さまだよ。言ってごらん、あなたにお仕えいたします、と」
 フィアの顔が、指し示されたほうに動き、その視線がフルートをとらえる。瞳の中にかすかな感情の色が動いたようにも見えたが、それはすぐに、鈍い麻痺の中に呑み込まれて行った。
「あ、なた、に・・・」
 フィアはかすれた声で、とぎれとぎれに言った。その目はうつろに曇っている。
「お、つか、え、いた、し、ます・・・」
 言い終わって、しかし、涙を一粒こぼした。フルートは胸をえぐられるような思いがした。大国クルシュタインの王女に何を言わせているのだ、この男は。
 銀髪の青年は、フルートの動揺に気付いたふうもなかった。
「そう、よく言えたね。じゃあ、今度はこんなふうに言ってみよう。あなたを心からお慕いしています、って」
「あなた、を・・・」
と、またフィアはかすれた声で言い始めた。揺れる視線でフルートを見つめながら。
「心から、お慕い、しています・・・」
 言い終わって、ぽろぽろと涙をこぼした。
 ――心にもないことを、無理に言わされているからだ。そう思ったとたん、胸がドクンといって、気が付くとフルートは席を立っていって青年の胸倉をつかんでいた。
 しまった、事を荒立てるつもりは・・・と、頭の片隅で考える声があったが、とどめようがなかった。
「このひとに、何をした」
 自分でも驚くほど物騒な低い声が出た。銀髪の青年はわけがわからない様子で、
「な、何をするんです」
「すぐに元に戻せ」
 ぐいと胸倉をつかみ上げる。ああ、なぐりつけてしまいそうだ。
 しかしそのとき、異様な空気に気付いて、フルートははっとフィアのほうを振り返った。いつのまに取り出したのか、フィアは護身用の短剣を抜いて、自らの喉元に突き立てようとしていた!

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命令の指輪(02)

 セレンは「ゴーエン公」の名に聞き覚えがあった。馬車の行き先がわかった以上、情報収集が先と考えて、店主から詳しく話を聞くことにする。
 店主曰く、ゴーエン公は年若い変わり者として知られており、魔法の品々を集めるのが趣味という。役に立つものも立たないものも、魔法の品といえば収集し、大事にしているのだとか。お気に入りは「命令の指輪」で、これを人の額に当てて「我に従え」と言うと、何人たりともゴーエン公の言葉に逆らえなくなる。幸いなことに普段は乱用しないが、珍しい来客を迎えるときなどに、この指輪を使って見目良い町娘をさらい、召し使いとして来客にプレゼントするという悪趣味な癖がある。
 あなたの連れの方がさらわれたというのであれば、今日の昼、おそらく貴人の来客があるのでしょう。お可哀そうに。と、いう話なのだった。
 セレンは礼を言って店を出た。実のところ、その「貴人の来客」にも心当たりがあった。誰あろう、フルート王子が、ゴーエン公の昼食に招待されていたのだ。
 これから宿に戻っても、入れ違いで出てしまっているだろう。だが、形はどうあれ、フルートがフィリシアを連れ帰って来るのなら、ひとまずそれを待ってもよさそうだ。
 セレンは念のためにゴーエン公を訪問するしたくを整えながら、フルートの帰りを待つことにした。

 さて、フルートは、その日の昼、ゴーエン公のところで食事をごちそうになりながら、様々な魔法の品々を見せびらかされることになった。あまり趣味のいい遊びではないな、と考えながらも、退屈はしなかったので、にこにこと話に耳を傾ける。
 ゴーエン公は、フルートよりいくらか年上の、銀髪の青年だった。愛蔵のコレクションを取り出して、うれしそうに、次から次へと説明してくれる。
 ひとつだけ感心したのは、ゴーエン公が、これらの品々を必ずしも個人のためだけに集めているのではないことだった。有事の際、人々のために使うのだと説明された品の中には、なるほど素晴らしい値打ちのものがあった。たとえば、<尽きない水瓶>は、ひしゃくで水を汲み出している限り、水が尽きることはない。<広がる毛布>は、何人だろうと一緒にくるまって暖を取ることができる。
 逆に感心できないのは、何のために使うのかわからないような品までも、ただ魔法の品というだけで集め、値打ちあるもののように見せびらかしていることだった。<黒いロウソク>は黒い光を放って明るさを減じるロウソクだったし、<腐敗の石>ときたら、触れたパンを腐敗させる石なのだった。
「そしてこの指輪が、<命令の指輪>です」
 ゴーエン公は得意げに、嵌めている銀の指輪をフルートに見せた。真ん中が大きく盛り上がっており、そこに複雑な文様が浮き彫りにされている。
「この指輪を使うと、誰でも意のままに操ることができます。さきほど我が街で摘み取って来たばかりの名花を、殿下に献上いたしましょう。・・・さあ、出ておいで」

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