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勇者パックス(02)

 舞台がはねて、日が暮れて。
 人々は散り、仮設舞台の解体も終わり、広場には、芝居一座の幌馬車が、夕闇の中に残るばかりとなった。
 その馬車から、ひとつの人影が滑り出る。と同時に、広場の隅で様子を窺っていた一人の娘が、出て来た人影に近づいて行く。
 人影は、娘に気付いて立ち止まった。娘は面と向かって立ち、相手を見上げて言った。
「ずいぶん背の高いロミーナだったじゃない」
 相手は観念したようなため息をついた。
「見ていたんだね。意地が悪いな」
 長い髪をかきあげたその顔は――リーデベルクの貴族、セレン・レ・ディア。
 娘はふわふわの金髪を揺らして、くすくすと笑った。
「ばっちり見たわよ。あたしの代役にどんな子を連れてくるか、お手並み拝見と思ったもの。だけどまさか――あなたがやるなんて!」
「そんなに簡単に代役が見つかるものか。幸か不幸か、パックスの物語はそらんじていたから」
 セレンが憂鬱そうに言うと、娘は笑いながら、
「でもびっくり、素敵なロミーナだったわ。きれいで、優雅で、神秘的で。あたしのロミーナはもっと情熱的だけど、たしかにロミーナは巫女なんだし。なんだか勉強になったわ」
「頼むから」
 セレンはため息をついて、
「一体どうしてあんな書置きをしていなくなったのか、教えてくれないか。不在の責任がぼくにあるなんて言われても、さっぱり心当たりがなくてね」
「ふふ、いい気味」
 娘は笑って、
「あたし、あっちにもこっちにも手を出すひとって、頭に来るの。あなた、あたしだけじゃなくて、プルセウネにもルルサーナにも、ちょっかいかけてたでしょ。痛い目を見て当然よ」
「それだけ!」
「うん、それだけ。ちゃんとね、いざとなったら飛び込むつもりで、舞台の直前には戻って来てたのよ。けど、代役が立ったみたいだから、そのまま見物したの。そしたら・・・うふふ。そうよ、ねえ、見た? 初めてロミーナを見たときの、ラダオーンの驚いた顔ったら! 何回も何回も見直してた。お化粧したあなたは本当に綺麗だったわ!」
「・・・ぼくも、ラダオーンの役だったら良かった。そうすれば、舞台の上で君と相思相愛になれたのに」
 セレンが真顔で、娘の顔をのぞきこむ。娘はしばし沈黙した。それから、
「・・・ねえ、怒ってる?」
 上目づかいにセレンを見上げた。セレンはにっこり笑って手を差し伸べた。
「怒ってるよ、かわいいひと。夕食くらい付き合ってもらわないと」
 娘は逆らわずに身を寄せた。
「ごめんなさい。ほんとは、こんなに迷惑をかけるつもりじゃなかったの。私・・・」
「もういいよ」
 セレンがささやく。そして――そのあとどうなったかは、ここで言うまでもない。

 セレンが宿に帰ったのは、そんなわけで、夜になってからだった。
 明かりを入れた部屋で、フルートは地図を見ていた。
「おかえり。食事は?」
「済ませた」
 答えたセレンのほうを、ちらと見て地図に目を戻し、
「口紅ついてるよ」
「えっ」
 セレンは狼狽して口元を押さえ、気がついた。女装の化粧はもちろん落としてある。そのあとのデートで、相手の娘の口紅が付いたのに違いない。
 フルートは不思議そうに、もう一度セレンのほうを見た。
「それしきのことで何をそんなに・・・」
 目の中に、疑うような色が浮かんで来る。
「まさか君・・・」
「なんでもない、顔を洗って来る」
 セレンは急いで部屋を出た。勘づかれるのはまっぴらだ。
 部屋の中、フルートは閉まった戸を見つめてつぶやいた。
「まさかね・・・」

(完)

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