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2011年12月

作者より:「勇者パックス」

劇中劇にあこがれて書いたお話です。

女装は、セレンのほかにゼラルドも似合いそうなイメージ。

 

次回はまた、いつになるかわかりません。

よろしければコメントなど書きながらお待ちいただけると幸いです。
(どの話が好きとか、ごひいきは誰とか。)

皆様、良いお年をお迎えくださいませ。

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勇者パックス(02)

 舞台がはねて、日が暮れて。
 人々は散り、仮設舞台の解体も終わり、広場には、芝居一座の幌馬車が、夕闇の中に残るばかりとなった。
 その馬車から、ひとつの人影が滑り出る。と同時に、広場の隅で様子を窺っていた一人の娘が、出て来た人影に近づいて行く。
 人影は、娘に気付いて立ち止まった。娘は面と向かって立ち、相手を見上げて言った。
「ずいぶん背の高いロミーナだったじゃない」
 相手は観念したようなため息をついた。
「見ていたんだね。意地が悪いな」
 長い髪をかきあげたその顔は――リーデベルクの貴族、セレン・レ・ディア。
 娘はふわふわの金髪を揺らして、くすくすと笑った。
「ばっちり見たわよ。あたしの代役にどんな子を連れてくるか、お手並み拝見と思ったもの。だけどまさか――あなたがやるなんて!」
「そんなに簡単に代役が見つかるものか。幸か不幸か、パックスの物語はそらんじていたから」
 セレンが憂鬱そうに言うと、娘は笑いながら、
「でもびっくり、素敵なロミーナだったわ。きれいで、優雅で、神秘的で。あたしのロミーナはもっと情熱的だけど、たしかにロミーナは巫女なんだし。なんだか勉強になったわ」
「頼むから」
 セレンはため息をついて、
「一体どうしてあんな書置きをしていなくなったのか、教えてくれないか。不在の責任がぼくにあるなんて言われても、さっぱり心当たりがなくてね」
「ふふ、いい気味」
 娘は笑って、
「あたし、あっちにもこっちにも手を出すひとって、頭に来るの。あなた、あたしだけじゃなくて、プルセウネにもルルサーナにも、ちょっかいかけてたでしょ。痛い目を見て当然よ」
「それだけ!」
「うん、それだけ。ちゃんとね、いざとなったら飛び込むつもりで、舞台の直前には戻って来てたのよ。けど、代役が立ったみたいだから、そのまま見物したの。そしたら・・・うふふ。そうよ、ねえ、見た? 初めてロミーナを見たときの、ラダオーンの驚いた顔ったら! 何回も何回も見直してた。お化粧したあなたは本当に綺麗だったわ!」
「・・・ぼくも、ラダオーンの役だったら良かった。そうすれば、舞台の上で君と相思相愛になれたのに」
 セレンが真顔で、娘の顔をのぞきこむ。娘はしばし沈黙した。それから、
「・・・ねえ、怒ってる?」
 上目づかいにセレンを見上げた。セレンはにっこり笑って手を差し伸べた。
「怒ってるよ、かわいいひと。夕食くらい付き合ってもらわないと」
 娘は逆らわずに身を寄せた。
「ごめんなさい。ほんとは、こんなに迷惑をかけるつもりじゃなかったの。私・・・」
「もういいよ」
 セレンがささやく。そして――そのあとどうなったかは、ここで言うまでもない。

 セレンが宿に帰ったのは、そんなわけで、夜になってからだった。
 明かりを入れた部屋で、フルートは地図を見ていた。
「おかえり。食事は?」
「済ませた」
 答えたセレンのほうを、ちらと見て地図に目を戻し、
「口紅ついてるよ」
「えっ」
 セレンは狼狽して口元を押さえ、気がついた。女装の化粧はもちろん落としてある。そのあとのデートで、相手の娘の口紅が付いたのに違いない。
 フルートは不思議そうに、もう一度セレンのほうを見た。
「それしきのことで何をそんなに・・・」
 目の中に、疑うような色が浮かんで来る。
「まさか君・・・」
「なんでもない、顔を洗って来る」
 セレンは急いで部屋を出た。勘づかれるのはまっぴらだ。
 部屋の中、フルートは閉まった戸を見つめてつぶやいた。
「まさかね・・・」

(完)

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勇者パックス(01)

「昼飯買って来たけど――」
 食う?と言いかけて、相手を考え、
「食べるかい?」
と、ルークは部屋の戸口で訊いた。
 ゼラルドは、「昼飯」などという言葉遣いを特に気にする様子もなく、そうだね、と答えたが、ルークが入って来ると、
「セレンは?」
と尋ねた。一緒だと思っていたのだろう。
 ルークは食べ物の包みをほどきながら、
「デート。ほら、昨日会った旅芝居の一座に、ふわふわの金髪の美人がいただろ。セレンが口説いてた、ちょっと気の強そうな。彼女と約束してて、朝から出かけてった。昼からは舞台だって。もう始まってるかもな」
「君は芝居を見るのは嫌い?」
「そんなことはないけど」
 ルークはパンをかじりながら言った。
「ぼくがいると邪魔だって言うからさ、あいつ」

 その頃、街の外れの広場では、今しも舞台の上で、古代の英雄パックスにまつわる劇が始まったところだった。
 勇者パックスは、国王の命により、さらわれた王女プルセウネの救出に向かう。彼に付き添うのは、パックスの姉ロミーナと、プルセウネの侍女ルルサーナだ。
 ロミーナは非常な美女であるが、神殿に使える巫女であり、それというのも、幼くして両親を亡くした姉弟が無事に生活を営んで行くために、少女のうちに進んで神殿に入り、娘らしい青春と引き換えに、神殿の庇護と予知予言の能力とを授かったのだった。
 一方の侍女ルルサーナは、良家の出で、プルセウネの幼友達であるため供を申し出たものの、美しい巫女ロミーナのことは内心疎んじている様子。
 さて、王女プルセウネは魔物にとらわれており、さすがのパックスも苦難の連続である。そこに現れたのが謎の男ラダオーンであり、これは実は、生き別れて行方知れずになっていた、王女の兄なのである。彼はパックスに力を貸してくれ、巫女ロミーナはいつしかラダオーンに恋するようになるが、神殿に仕える身には禁じられた恋であり、ましてや彼女は巫女の戒律により、異性とは弟のパックスとすら、ルルサーナを通じなければ口をきくこともできない。
 そうこうするうち、パックスのほうは、ラダオーンの助力とロミーナの予言の力によって、王女プルセウネを助け出し、一目見て互いに恋に落ちる。そしていざ帰還というとき、魔物の最後の抵抗があり、ラダオーンはロミーナをかばって命を落とし、彼も実はロミーナを愛していたということが明らかになる。
 悲しみにくれるロミーナを見た侍女ルルサーナは、すでに感情のわだかまりも消えており、国に帰ったら自分も神殿に仕えようという決意を固める。
 そして、一行は国に帰りつき、パックスは王の許しを得てプルセウネと結婚し、ロミーナとルルサーナは神殿の中へと戻って行く。ラダオーン亡き今、パックスはやがて国王となるのである。
 観衆は、パックスの勇気に喝采し、ラダオーンの英知に感嘆し、名場面では舞台に貨幣を投げ込んだ。今回、とりわけ人気を集めたのは、憂わしげな美女ロミーナだった。彼女は役柄上、パックスの陰にひっそりと控えて、ろくに台詞もなければ(ルルサーナに耳打ちするだけだ)、派手な立ち回りも少なかったのだが、本当に美しく、それにたいした存在感で、彼女の一挙手一投足が観衆の目を引きつけるのだった。
 ロミーナの足元に、銅貨や銀貨に交じって、金貨が投げこまれたことさえあった。ロミーナは最初、目もくれなかったが、パックス役が促すと、気が付いて、それの飛んで来た方向に向かって優雅にお辞儀した。白い衣装の上にさらさらした金髪が流れて、観衆は手を叩いて喜んだ。
 やがて舞台では、王女プルセウネが助け出され、王女の兄ラダオーンが命を落とし、パックス達は国に帰りつき――めでたい結婚式で幕が閉じると、観衆はやんやの喝采だった。実際、このような旅芝居は、街の者たちの格好の気晴らしなのだった。明日から普段の生活に戻っても、しばらくは今日の芝居が話の種になるのである。

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予告:「勇者パックス」

応援ありがとうございます。

小品が書けそうなので、年内の公開を目指します。

今回はセレンの話。

全2回か3回の予定です。

しばしお待ちを・・・。(年越しちゃったらごめんなさい。)

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