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暖炉(03)

 老人の話は、だいたい次のようなものだった。
 ダイヨル湖には、古くから、隠れ里の伝説があった。すなわち、ダイヨル湖に行こうとする者は、十年にいっぺんほど、なぜか湖ではなく、小さな無人の里に着いてしまうのだった。
 その里は、一年中いつでも暖かく、花が咲き乱れているのだという。また、何軒かの無人の家があり、不思議なことに、中にはできたての食事が用意されているのだという。
 迷い込んだ者は、何を飲み食いしても良い。だが、この里の物を何であれ持ち去ろうとすると、まるで見えない壁に阻まれるようにして、里から出られなくなる。何かを持ち去ろうとさえしなければ、いずれ里から出ることができるが、あとで再びその里に行こうと探しても、もう二度と見つけることはできないのだった。
 ここで終われば幸せな里の言い伝えだったが、続きがあった。
 あるとき、旅の聖者がこの地を訪れ、隠れ里の噂を聞いた。まだ若いが強い力を持つ、太陽の聖者だった。彼は伝説に興味を持った。
 若き聖者は、ダイヨル湖の手前にある広い荒野を隈なく調べ、来る日も来る日も通い詰めて、ついに、隠れ里に入ることに成功した。
 聖者は里に何日も滞在し、美しい景色や珍しい食べ物を楽しんだ。とりわけ聖者の興味を引いたのは、隠れ里の持つ自己修復の力だった。たとえば、食卓にある食べ物を食べたあと、いったんその家を出てもう一度入り直すと、また食べ物が出来ているということ。あるいはまた、ひと群れの花を手折って、後ろを向き、しばらくしてから振り向くと、再び花が咲いているということ。
 そして、聖者はあることを思いついた。それは、世界の破壊と再生を、隠れ里を使って実現してみるということだった。いっぺん全部破壊したあと、それらが再生する様を眺めることができたなら、どんなに心震える感動が待ち受けていることか。
 聖者は里の真ん中で、おそろしい破壊の呪文を唱えた。見渡す限りの景色は、炎に包まれ、焼け落ちた。焼け跡をじっと見ていても再生は始まらなかったので、聖者はしばらく目を閉じて待ち、それからそっと目を開けた。するとそこには再生された花畑が――なかった。あるのはただ焼け野原のみ。聖者は、今度はもう少し長い時間、目を閉じて立っていて、そののちゆっくりと目を開けた。するとそこには再生された花畑が――やはり、なかった。あるのはただ焼け野原のみ。後ろを振り向いてみた。そこも焼け野原だった。
 聖者は一晩、焼け跡で眠った。起きているうちに再生が見られなかったのは残念だったが、目が覚める頃には里は元通りになっているだろうと思った。しかし、目が覚めたとき、里はやっぱり焼け野原だった。その次の日も、次の次の日も。
 里を壊し過ぎたのだ、と、ついに聖者が悟ったときには、季節さえも移ろって、かつて常春の里だった場所には冷たい風が吹くようになっていた。聖者はその手で、楽園をひとつ葬り去ってしまったのだ。その後、聖者の行方は杳として知れない――。

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