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暖炉(05)

 翌朝、ゼラルドは目を覚まし、身を起こして、戸惑ったようにあたりを見回した。フルートはもう起きていて、窓を開け、外を眺めている。
 ゼラルドは何気なく自分の手に目をやって、はっとした。左手にあったはずの傷は、跡かたもなく癒えていた。
「傷が・・・」
 呟いてから、ゼラルドは、さあっと青ざめた。
「フルート! ぼくが傷口を縛っていた布を知らないか。あれにはぼくの血が付いている。王家の血を使えば、悪霊を呼び出すことも、大きな呪いをかけることも、天災を呼び寄せることもたやすい。大変なことに――」
「落ち着いて」
 フルートは振り向いた。穏やかに、
「おはよう。ぼくもすっかり眠りこんでしまって、起きたときにはずいぶん慌てた。でも、こちらに来て、窓の外をごらん」
「何を悠長に」
「大丈夫、君の血は悪用されてなどいないよ」
「・・・」
 ゼラルドは起き出して、窓の外を覗いた。
 ――窓の外は、花の咲き誇る里だった。白い花を敷き詰めたような花畑の中に、一筋の小川が流れ、その流れに沿って桃の木が花を咲かせ、あちこちにぽつぽつと小屋が点在している。
 開いた窓からは、やわらかな春の風と、軽やかな鳥のさえずりが流れ込んで来た。
「フルート。それでは、ぼくたちは・・・大いなる再生の夜に居合わせたのか」
「うん。きっと夜中に何らかの方法で、君の血の付いた布を持って行ったのだろう。聖者ならたやすいことだ」
 二人が居間に入ると、半ば予期していたとおり、老人の姿はなかった。もうどこにもいないのだと、口には出さなかったが二人とも悟っていた。罪深き聖者の使命と償いは完了したのだ。
 食卓の上には、湯気の立つ朝食が乗っていたので、二人はそれを食べた。食べ終わると、外套を取って外に出た。馬たちはおいしそうに青草を食んでいた。
「隠れ里に捕らわれていたとは。道理で、湖にも町にも行きつかなかったはずだ」
 馬を木から外しながら、フルートが一人ごちた。彼はふだん、昼だろうと夜だろうと、天気が良かろうと悪かろうと、方角を間違えることがない。
「行こう」
 老人に言われたとおり、馬に乗って北へ。ほどなく春の野を過ぎて、木枯らし吹く冬の荒野に出た。
 振り返ると、もう花の里は影も形もなく。
 試みに馬を戻しても、もうあの常春の場所に行くことはできなかったのだった。

(完)

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