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ひとこと通信欄

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2012年3月

訪問者(05)

 セレンはわざと、ローレイン語で応じた。
『これは失礼をいたしました、殿下』
 深々と一礼してみせて、柔らかな声で滑らかに続けた。
『お目覚め、重畳にございます。いま、何か召し上がるものをお持ちいたしますから、少々お待ちくださいませ。――ご帰還はいつになさいますか』
 ゼラルドのおもてが引き締まった。内陸の言葉のまま、
「ここはどこか。大境界の東か、西か」
『もちろん東でございます。ここは、白き砂漠の西の果て、大境界のすぐ手前です』
 と、セレンはローレイン語で嘘をつく。
『ウェルザリーンのお城からはだいぶ離れておりますが、何人たりとも、関所を通らずに大境界は渡れませぬゆえ。殿下もご存じでございましょう』
「そうか・・・」
 ゼラルドは肩を落とした。話す言葉はローレイン語に変わった。
『では、すぐに戻るとしよう。褒賞は追って出す。世話になった』
 ふらふらとベッドから降りて立つ。
『殿下、もう少しお休みになっていたほうが』
『いや。一刻も早く帰還しなければ、そなたらにも迷惑がかかる』
 ゼラルドは軽く手を動かした。すると、ゼラルドの立つ位置を、銀の輪が取り囲み、パッと輝いて消えた。ゼラルドは首をかしげ、もう一度手を動かした。今度は金色の炎のようなものがゼラルドを取り囲み、メラメラと燃えたって、消えた。
 ゆっくりと、ゼラルドはセレンに向き直った。底知れぬ黒い瞳がセレンの視線をとらえ、口元には冷ややかな笑みが浮かんでいた。ぞっとするほど冷たく美しい笑みだった。
『たばかったな。何を企んでいる』
 何と答えようかとセレンは迷ったが、そのとき――
 ――軽いノックの音がして、扉からルークが入って来た。
「ゼラルド! 目が覚めたのか」
 室内の光景を見るや、駆け寄って来る。ゼラルドは無表情に、
「この地方では、ノックしたら返答を待たずに入室してよいのか」
「いや。でも、三日三晩も待てるわけがないだろ」
「三日三晩?」
 ゼラルドはわずかに目を見開いて聞き返した。
「うん。外傷はなかったけれど、君は三日三晩、眠り通した。セレンから聞いていない?」
「・・・いや、何も」
「セレン、君のほうは?」
「わかったことはふたつ。ひとつめ、彼は本物の王子殿下だ。ふたつめ、彼はまだ自分のいる場所がわからない」

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訪問者(04)

 内陸と、東の諸国との間に国交が開かれていないのは、主として、東方諸国の持つ不思議な力のためだ。内陸でしばしば魔法が使われるのと同じように、東方では<月の力><太陽の力>と呼ばれる術が使われている。術者はそれぞれ、<月の聖者><太陽の聖者>と呼ばれる。
 むかし、古代レティカ王国は、内陸と東方とを等しく治めて数百年の治世を誇ったが、最後は東方の反乱により滅びた。激しい戦いののち、レティカ王国は崩壊し、内陸諸国と東方諸国の間には相互不可侵の協定が結ばれて、戦は終結した。ここでいう相互不可侵とは、互いを侵さない、干渉しないというのみならず、国交を閉ざすことによってお互いの領土内に、魔法と、<月の力><太陽の力>を、各々封じ込めるということを意味している。
 内陸諸国と東方諸国は、両者の間にある中立地帯を挟むようにして、<大境界>と呼ばれる長大な二枚の壁を作り上げた。魔法と<月の力>と<太陽の力>、この三つの力によって壁を編みあげることで、常人はもちろんのこと、魔法使いも月の聖者も太陽の聖者も、通り抜け不可能な境界を実現したのだ。仮に三者が力を合わせて壁を破っても、破られた場所は監視者によってすぐに察知され、追手がかかる。定められた関所で、定められた手続きを経て、適切な通行証を持たなければ、誰ひとり通り抜けられない、それが<大境界>なのだった。
「セレン。彼が万一、本当にローレイン王家の者だとしたら、下手をすると戦争になるぞ」
「でも、本物なら一人でこんなところにいるわけがないよ。そもそも、通行証がないなら、大境界を越えていないはずだろう。ああ見えてローレイン人ではなく、大境界のこちら側にあるどこかの国の出身で、偶然名前が同じだけかもしれないよね」
 二人はセレンの部屋で話し合ったが、結局、黒髪の若者が回復するのを待つことにした。本人に聞かなければわからないことばかりだった。

 
 ゼラルドと名乗った若者は、それから三日三晩、こんこんと眠り続けた。あまりにも静かに、何の変化もなく眠っているので、セレンは、ときどき様子を見に行きながら、彼がもう目覚めないのではないかとさえ思うことがあった、が、四日目の朝。
 セレンが客室をノックしてそのままドアを開くと、ゼラルドはベッドの上で起き上がるところだった。セレンを見ると、溜息をひとつついて、
「返答ぐらい待ちたまえ」
と言って、起き直り、姿勢を正した。
 待ちたまえ、ね。セレンは胸の中で反芻した。きれいな内陸語を話しているが、命令することに慣れたものの言い方だ。セレンの服の左肩に、貴族であることを示す金色の線が縫いとられていることに、気付いていないのか、気付いていても口調を変えないのか、どちらにしても内陸の一般市民でないことは確かだ。

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訪問者(03)

 指し示されたところに倒れている人影を見て、フルートははっとした。黒い髪・・・。
 近寄ってみれば、青ざめて目を閉じているその若者は、どう見ても異国の顔立ち、異国のいでたちだった。この季節に場違いな薄物の衣服は、どういうわけか砂だらけになっているが、仕立てが良く、明らかに貴人の服だ。そして一番問題なのは、ここリーデベルク国が東方の国々に対して国交を開いていないということ・・・つまり、目の前の若者は、ここにいてはいけない、いるはずのない誰かだということなのだった。
 しかし、ともかく目の前に倒れているのだから、救助を優先すべきだ。フルートはすべての疑問を封じて、若者を抱え起こした。目立った怪我はない。水を注いだコップを口元にさしつけると、黒髪の若者は身じろぎして顔をそむけた。
「大丈夫、ただの水だ」
 フルートが言うと、若者は目を開けて、示されたコップの中身をじっと見た。神秘的な黒い瞳。そして、あてがわれたコップの水を、今度は素直に飲んだ。
「・・・ありがとう」
 初めて発した声は、力なく、かすれていたが、きれいな内陸の言葉で、フルートを安心させた――が、やはり城に連れて行くわけにはいかなかった。フルートは心を決めた。
「立てるか?」
 肩を貸して、ぐったりした若者を支えながら、傍らの心配そうなミルガレーテに、
「友人の家に連れて行きたい。あなたの力で、誰にも会わずに行くことができるだろうか」
「正しい方角と場所を思い描いていただけるなら、今と同じように一瞬で移動できます」
「ありがたい」
 フルートは行きたい場所を正しく頭の中に思い描いた。そして、ミルガレーテの魔法の力を借りて、すみやかに若者を友達の――言うまでもなくセレン・レ・ディアの――屋敷の中に運びこんだ。
 到着すると、すぐにミルガレーテは、自分は他人の目に触れるわけには行かないからと言って、姿を消した。彼女にはもっといろいろ聞きたいことがあったのだが、仕方ない。黒髪の若者はフルートに託された。フルートは、セレンを呼んで話しあい、この謎めいた訪問者に屋敷の一室をあてがって、当面の間、そこで休ませることにした。
 意識を失いかけている黒髪の若者に、フルートは、いま必要なことだけを聞いた。
「ぼくはルーク。こっちはセレン。君は? 通行証を見せてくれないか」
「通行証はない」
 青ざめた頬のまま、かすかに冷笑して、黒髪の若者は告げた。
「名はゼラルド。君たちの厚意に感謝する」
 フルートとセレンは、ゆっくり休むように言ってから、客室を出てドアを閉め、顔を見合わせた。ゼラルドといえば、東の大国ローレインの第一王子と同じ名前だ。偶然・・・なのだろうか?

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訪問者(02)

 宝剣の持ち主であるということが、単に一振りの剣を所持するだけのことではないと知ったのは、もう少し季節が進んで、秋風の冷たくなったころだった。
 ちょうど学問の時間が終わったところで、図形等を書き散らした紙片をひとり片づけていると、声が頭の中にじかに語りかけてきた。
≪助けて!≫
 若い女の声だった。反射的に、壁を背にして剣に手をかけたが、部屋には誰もいない。静かに待つと、声はさらに続けた。切羽詰まった様子だった。
≪その剣を抜いてください。お話があります≫
 話をするのに剣を抜く? 何のことかわからなかったが、王子はともかく言われたとおりに黄金の剣を抜いた。すると、さらさらと時の砂が流れるような不思議な感覚があって、目の前にふわりと一人の姫君が姿を現した。
 金を紡いだような輝く髪。雪のように白い頬。花のような唇。そして瞳は金色で、よく見ると虹色に光っているのだった。
 彼女は薄緑色のドレスの胸の前で手を組み合わせて、フルートを見つめ、懸命な様子で言葉を発した。
「初めてお目にかかります。わたくしの名はミルガレーテ。ぶしつけをお許しください、本当はこんなふうにお会いするはずではなかったのですが・・・事情が変わり、危急の用件で参上いたしました。どうかお力を貸していただきたいのです」
「何をすればよいのですか、ミルガレーテ姫」
 フルートの決断は早かった。もちろん疑問は色々あったが、いま必要なことだけをそう口に出すと、ミルガレーテは目に見えてほっとした顔をした。
「わたくしの友人を助けていただきたいのです。彼は力を使い果たして、ひどく消耗しています。どうか保護していただけないでしょうか」
「その方は今どちらに」
「近くの森まで連れて参りました。案内いたします」
「この剣は、もう鞘に収めても?」
「ああ、大丈夫です。姿を現す瞬間にだけ、剣の力が必要なのです」
 フルートは剣を収め、上着を羽織り、気が付いて水差しとコップを持った。ミルガレーテは手を差し出して、
「瞬間移動します。わたくしと手をつないでいただけますか?」
 フルートは差し出された手をそっと取った。ミルガレーテは緊張した面持ちで、何かの呪文を唱えた。周りの光景がゆらりと歪んだかと思うと・・・二人は王家の森の中、泉のほとりに立っていた。
 ミルガレーテは心配そうに指差した。
「あのひとです」

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訪問者(01)

 なぜ宝物庫などに入る気になったのか、そのときのフルート王子には、よくわからなかった。のちになって思い返してみれば、ああそうだったのかと得心が行ったけれども。
 隣国クルシュタインの王妃に親書を届け、フィリシア姫の誕生日パーティーに出席し、さらに思いがけなくも姫と友情の絆を結んで帰って来ることになった、その直後のことだ。
 まるで何かに呼ばれているかのように、宝物庫に足が向いた。中の様子など覚えてはいないのに、おのずと一番奥の壁を目指した。そして、あらかじめ知っていたかのように、そこに一振りの剣を見つけたのだった。
 その剣は、こまかな細工を施した黄金の鞘に収まって、壁に掲げられていた。同じく細工を施してある黄金の柄には、真紅の宝石が嵌まっていた。全体が金色でありながら、不思議と落ち着いて威厳あるものに見える剣だった。
 魔剣に魅入られるというのはこんな心持だろうか――と、縁起でもないことを考えながら、フルートは吸い寄せられるようにその剣を壁から下ろした。剣の長さも持ち重りも、あつらえたように、ちょうど好みに合った。
 だからこそ、鞘を払ったときの落胆は大きかった。その剣は、刀身まで金でできていたのだ。
(装飾用なのか・・・)
 金は柔らかい金属だ。刀身が金では、到底実用に耐えるとは思えない。
 それでもフルートは、一縷の望みにかけた。金のように見える別の金属でできているのかもしれない。試しに、宝物庫の壁石に、そっと切っ先を滑らせてみた。金であれば、金色の線が引かれるはずだ。
 そして、ありえないことが起きた。剣の切っ先が壁石にめりこんだのだ。まるでナイフでバターを切るかのように。
 フルートは驚いて剣を引き抜き、その刃と壁石の傷とを、まじまじと見比べた。心が決まるまでに、いくらもかからなかった。
 その年の誕生日、フルートはその剣を国王から正式に拝領した。書誌によればそれまで誰も鞘から抜くことのできなかった、古代レティカより伝わる黄金の宝剣を。

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予告:「訪問者」

お待たせしました!
やっと大枠が出来たので、明日から連載を開始します。
1ページずつ固めながらの連載になるので、1日おきか2日おきの更新になります。
と言いながら途中で悩んで間があいたらごめんなさいsweat01
全11回くらい?です。

先日の記事でご案内したとおり、今回のお話は、この物語全体において、
プロローグ(始まりの物語)のあと、1話挟んで(未着手sweat02)、2話目にあたります。
フルート=ルークと、セレンについては、1話目から登場予定なので、特に説明はしていません。
代わりに、ローレイン(ウェルザリーン)や、<月の力><太陽の力>および「聖者」については、この話で初出になるので、若干の説明をしています。

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作者より:全体の構成について

次のお話に取りかかっていますが、もう少し時間をください。
でも、せっかく見に来てくださる方がいるのだから、たまには何か更新したい・・・。

ということで、今日は、この一連の物語の全体構成について、ちょこっと書いてみます。

いつも時系列を無視して、書ける話から先に書いていますが、主人公たちの旅は、実は、
春に始まり翌春に終わる、約1年間の旅です。
- プロローグは、既に公開している「始まりの物語」。
- 本編が始まったら、旅に出る前のお話は三つ(予定)。
- メインの、旅の道中のお話は、いつものノリで色々。1年分。
- 旅の帰り道のお話は三つ(予定)。
- 最後にエピローグを付けて、おしまい。
・・・という構想になっています。

いま準備している話は、旅立ち前の3篇のうちの2篇め。
フルート&セレンと、ゼラルドが出会う話です。

その話が終わったら、次は最近出番のないフィリシアの話にしようかと。
なるべく登場人物に偏りがないようにと思いながら書いていますが、もし、ごひいきの誰かの出番が少なければ、コメント等で催促してみてくださいね。

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