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空色のドレス(02)

 翌日は、朝からすっきりと晴れて良い天気だった。
 ぬけるような青空を見上げて胸を弾ませながら、フィリシアは、前の日に街の人々が親切に教えてくれたことを思い出した。
 ――いいときに来なすったね、娘さん。明日から三晩は、毎年恒例の舞踏会だよ。
 ――舞踏会といってもね、踊っても踊らなくてもいいからね。ごちそう、食べておいで。
 ――今年のお題は、空色のドレスらしいよ。一晩目は青空の色、二晩目は夕空の色、三晩目は雨上がりにかかる虹の色。

 そう、空色のドレス。

 その言葉を聞いた瞬間に、フィリシアは心に決めたのだった。ああ私は、ほんのひととき侍女でいてくれた、あの水底の優しいひとたちが縫ってくれたドレスを着よう。私だけのために縫ってもらった、私があのとき着なかった、青空の色のドレス。夕空の色のドレス。虹色は無かったように思うけれど。
 フィリシアの両手が、胸にかけたペンダント、もとい魔法のクルミをそっと押さえる。叩けば衣装の出てくる不思議なクルミ。それを手に入れたときの複雑な想いのせいで、今日まで、実際に使う日が来るのかは疑問に思っていたのだが。
 使わせてもらうね、ナミ。あなたたちが縫ってくれたドレス、着させてもらうね。
 ふっつりと今は迷いの晴れた気持ちで、フィリシアはクルミを首から外した。さあ、すぐに出てきてくれるかしら、あの青い空の色のドレスは。
 フィリシアは、ゆっくりとクルミを壁に打ち付けた。一回、二回、三回。
 クルミはぱくりと割れて、中からシュウッと煙が立ち上ったかと思うと・・・。
 ・・・フィリシアの心配を笑うかのように、まさに今日の快晴をそのまま映したような見事な空色のドレスが、ふんわりと彼女の腕の中に落ちて来た。それどころか、ドレスに似合いそうな髪飾り、耳飾り、首飾り、靴、ポーチ、ご丁寧に目元を隠す仮面まで。
 そういえば、最初はドレスの着方がわからなかったのだった、と、フィリシアは懐かしく思い出しながら、ドレスを手に取った。ナミの縫ってくれた別の服を、断り切れずに着ることになったところ、ふつうの服と違って、ボタンも何もなかったから。そうしたら。
 かぶるだけで良いのだった。窮屈そうに見えていた服は、自然に伸び縮みして彼女の体を受け入れ、やさしく包んで、ぴったりと収まった。姫さまのために縫ったドレスですから、ちょうどいいはずです、と、ナミは胸を張って言ったものだ。
 靴も同じね。フィリシアは微笑みながら、おもちゃのように小さく見える靴に、自分の足をあてがう。果たして、靴は自然に広がって、フィリシアの足を包み、ぴったりのサイズになった。まるで靴など履いていないかのように、軽く柔らかな履き心地。
 今夜に備えて、ひととおり試着してみて、満足して脱いで、フィリシアは夜を待った。
 夕暮れ時になると、外の通りはなんだか賑やかになって、多くの人が領主の館に集うのだとわかった。
 あらためて装いを整えてから、フィリシアはゼラルドの部屋に寄って、「行ってきます」を言った。くるりと回って、「どうかしら」と聞くと、ゼラルドはかすかに笑って、「大丈夫、君らしいよ」と言ってくれた。

 その晩、領主の館に集った人々は、たくさんの娘たちが空色のドレスを着て踊るのを見た。中でも、まるで青空をそのまま切り取ったかのような服をまとった、楽しげに踊る青い髪の娘が、ひときわ人々の目を引いた。ドレスの下のほうには、空を飛ぶ白い小鳥の模様があって、ドレスが揺れると本当に飛んでいるように見えたので、目をこすって何度も見直す者が相次いだ。今夜のお題をもっとも体現しているその娘には、きっと何か褒美が出されるだろうと思われた、が、それだけ注目を集めていたにもかかわらず、周りの人々がふと気付いたとき、娘はいつのまにかいなくなっていた。
 ゴーン、ゴーンと、真夜中の鐘の音が鳴った。結局その晩、その娘がパーティーに戻って来ることはなく、別の娘が領主から褒美を受け取ることになったのだった。

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