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ひとこと通信欄

  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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2012年6月

空色のドレス(04)

 三日目の朝、フィリシアはクルミを手にして、「たしか虹色のドレスは無かったわよね」と、ひとり呟いた。何色でもいいと思いながらクルミを叩くと、中からは薄紫色のドレスが出てきて、彼女は十分に満足した。
 けれども夕方、フィリシアが着替えようとすると、胸元でクルミがポコポコと跳ねた。いきなりだったので、びっくりして、きゃっと言ったが、不思議に思い、試しに三回叩いてみると、クルミの中からは神秘的な虹色をしたドレスがふわりと出現した。
「もしかして、私のために新しく作ってくれたの?」
 クルミに尋ねても答えはない。だが、それ以外には考えようがなかった。
「・・・ありがとう」
 フィリシアは、しばらく目を閉じて感謝の念を捧げてから、薄紫のドレスをクルミの中に返し、虹色のドレスに身を包んだ。昨日と同じように、おそろいのリボンを髪の毛に編みこんで。
 出かける前にゼラルドの部屋に寄ると、黒髪の若者は、少し驚いたようにフィリシアの服装を見つめて、きれいだ、と言ったが、初めて首をかしげて、
「人間のわざではないね」
と冷静に指摘した。
「そもそも、次から次へと、どこから調達しているのだろう」
 取り立てて隠す理由もないとは思ったものの、フィリシアはどきりとして、
「内緒よ。行ってきます!」
と言って、舞踏会に出かけた。

 その晩、領主の館を訪れた人たちは、たくさんの娘たちが虹色のドレスを着て踊るのを見た。中でも、虹の根元に浸して染め上げたような、この世のものとも思えない輝きの服をまとった、青い髪の娘が人々の目を引いた。目元に仮面をつけてはいたが、間違いなく、昨日も一昨日も現れた娘に違いなかった。
 今夜こそ人々は、娘が褒美を受け取るところを――仮面を取り去って名乗るところを――見たいと思った。真夜中が近付くと、娘の周りには、おのずと、見失うものかと意気込んだ人々の視線が集まった。
 娘は気付いて戸惑ったようだった。あちらを見たり、こちらを見たりして、人の隙間を探していたが、やがて意を決したように、くるりと踵を返すと、堂々と大広間からの階段を駆け下り始めた。
「お嬢さん、お待ちなさい」
と、領主本人が先頭に立って追いかけたが、真夜中の鐘が響く中、娘は一度も振り向くことなく階段を駆け下りた。
 鐘が鳴り終わる直前、娘は階段を降り切って、開け放たれた正面玄関の扉から走り出して行った。
「おーい、門を閉めろ!」
と領主は大声をあげ、それを聞きつけた門番はただちに門を閉めたが、娘の姿はどこにもなかった。誰も正面玄関からは出て来なかったし、門も通らなかった、と、門番たちは断言した。
 誰かが言った。
「あれは人間ではなかったのかもしれませんな」
「いたずら好きな精霊が、紛れこんでいたのかもしれませんね」
「精霊の訪れる家には幸運がもたらされるといいます。吉兆ではありませんか」
 それで皆は、舞踏会の最終日、誰かに褒美を与える代わりに、踊りの好きな精霊のために乾杯し、歌を歌ったのだった。

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空色のドレス(03)

「赤やオレンジの服は、あまり似合わないの」
と、水底の館で夕暮れの色のドレスを見せられたとき、フィリシアは言ったものだった。ドレスを断る口実にちょうど良かったので、内心、ほっとしてもいた。
 けれども、それを聞いた侍女たちは、お互いに顔を見合わせて、抗議を始めた。
「姫さま、鏡の前にいらしてくださいな」
「お召しにならなくてもいいですから、お体に当ててみてください」
 フィリシアは、夕暮れ色のドレスが自分に似合わないことに自信があったので、言われたとおりに鏡の前に立ち、ドレスを体に当ててみせた。鏡を見て、やっぱり似合わないと思い、笑って言った。
「ほら、どう?」
 すると、侍女たちは椅子を持ってきてフィリシアを座らせ、
「失礼して、おぐしに触らせていただきますね」
というと、みんなしてフィリシアの髪に触れ、しばらく何か整えているようだったが、
「できました。ほうら、姫さま、いかがですか?」
 フィリシアは鏡の中の自分を見てびっくりした。ゆるく結いあげられた青い髪の中に、ドレスと同じ夕暮れ色をしたリボンが編みこまれて、それだけでなんだか、さっきよりもずっと、ドレスが似合って見えたからだ。
「姫さまには、赤もオレンジも、ちゃんとお似合いになりますよ」
と、侍女たちは嬉しそうに言ったものだ。

 ドレスとセットになった夕焼け色のリボンと、腕がだるくなるくらい格闘した結果、フィリシアはなんとか、あのとき見た自分の髪型を自分で再現することに成功した。出かける前にゼラルドの部屋に寄って、
「どうかしら?」
と意見を尋ねると、彼はフィリシアのオレンジ色のいでたちに少し驚いたようで、珍しいね、と言った。
「おかしいかしら?」
「さあ、ぼくにはよくわからないけれど・・・綺麗だと思うよ」
 そう言って、優しく、かすかに笑った。
 いつも何も語らないけれど、故郷の妹君のことを思い出しているのかしら、と、フィリシアは思いながら、自身も笑顔になって、「行ってきます」を告げた。

 その日、領主の舞踏会を訪れた者たちは、たくさんの娘たちが夕空色のドレスを着て踊るのを見た。なかでも、夕陽の光をそのまま織ったような見事なドレスを着た、青い髪の娘が、ひときわ人々の目を引いた。目元を隠す仮面をつけてはいたが、きのうと同じ娘だろうと、みなが噂した。
 娘が踊ると、光の加減で、ドレスは暮れなずむ群青色に変わる瞬間があり、周りの目を楽しませた。今日こそ、その娘が領主から褒美をもらうだろうと思われた。
 が、真夜中の少し前、娘は踊るのをやめて食事のテーブルのほうに行き、人に紛れて見えなくなってしまい・・・真夜中を告げる鐘が鳴ったころには、すでに会場のどこにも見つけることができなくなっていたのだった。それで、今宵もまた、別の娘が褒美を賜ることとなった。

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空色のドレス(02)

 翌日は、朝からすっきりと晴れて良い天気だった。
 ぬけるような青空を見上げて胸を弾ませながら、フィリシアは、前の日に街の人々が親切に教えてくれたことを思い出した。
 ――いいときに来なすったね、娘さん。明日から三晩は、毎年恒例の舞踏会だよ。
 ――舞踏会といってもね、踊っても踊らなくてもいいからね。ごちそう、食べておいで。
 ――今年のお題は、空色のドレスらしいよ。一晩目は青空の色、二晩目は夕空の色、三晩目は雨上がりにかかる虹の色。

 そう、空色のドレス。

 その言葉を聞いた瞬間に、フィリシアは心に決めたのだった。ああ私は、ほんのひととき侍女でいてくれた、あの水底の優しいひとたちが縫ってくれたドレスを着よう。私だけのために縫ってもらった、私があのとき着なかった、青空の色のドレス。夕空の色のドレス。虹色は無かったように思うけれど。
 フィリシアの両手が、胸にかけたペンダント、もとい魔法のクルミをそっと押さえる。叩けば衣装の出てくる不思議なクルミ。それを手に入れたときの複雑な想いのせいで、今日まで、実際に使う日が来るのかは疑問に思っていたのだが。
 使わせてもらうね、ナミ。あなたたちが縫ってくれたドレス、着させてもらうね。
 ふっつりと今は迷いの晴れた気持ちで、フィリシアはクルミを首から外した。さあ、すぐに出てきてくれるかしら、あの青い空の色のドレスは。
 フィリシアは、ゆっくりとクルミを壁に打ち付けた。一回、二回、三回。
 クルミはぱくりと割れて、中からシュウッと煙が立ち上ったかと思うと・・・。
 ・・・フィリシアの心配を笑うかのように、まさに今日の快晴をそのまま映したような見事な空色のドレスが、ふんわりと彼女の腕の中に落ちて来た。それどころか、ドレスに似合いそうな髪飾り、耳飾り、首飾り、靴、ポーチ、ご丁寧に目元を隠す仮面まで。
 そういえば、最初はドレスの着方がわからなかったのだった、と、フィリシアは懐かしく思い出しながら、ドレスを手に取った。ナミの縫ってくれた別の服を、断り切れずに着ることになったところ、ふつうの服と違って、ボタンも何もなかったから。そうしたら。
 かぶるだけで良いのだった。窮屈そうに見えていた服は、自然に伸び縮みして彼女の体を受け入れ、やさしく包んで、ぴったりと収まった。姫さまのために縫ったドレスですから、ちょうどいいはずです、と、ナミは胸を張って言ったものだ。
 靴も同じね。フィリシアは微笑みながら、おもちゃのように小さく見える靴に、自分の足をあてがう。果たして、靴は自然に広がって、フィリシアの足を包み、ぴったりのサイズになった。まるで靴など履いていないかのように、軽く柔らかな履き心地。
 今夜に備えて、ひととおり試着してみて、満足して脱いで、フィリシアは夜を待った。
 夕暮れ時になると、外の通りはなんだか賑やかになって、多くの人が領主の館に集うのだとわかった。
 あらためて装いを整えてから、フィリシアはゼラルドの部屋に寄って、「行ってきます」を言った。くるりと回って、「どうかしら」と聞くと、ゼラルドはかすかに笑って、「大丈夫、君らしいよ」と言ってくれた。

 その晩、領主の館に集った人々は、たくさんの娘たちが空色のドレスを着て踊るのを見た。中でも、まるで青空をそのまま切り取ったかのような服をまとった、楽しげに踊る青い髪の娘が、ひときわ人々の目を引いた。ドレスの下のほうには、空を飛ぶ白い小鳥の模様があって、ドレスが揺れると本当に飛んでいるように見えたので、目をこすって何度も見直す者が相次いだ。今夜のお題をもっとも体現しているその娘には、きっと何か褒美が出されるだろうと思われた、が、それだけ注目を集めていたにもかかわらず、周りの人々がふと気付いたとき、娘はいつのまにかいなくなっていた。
 ゴーン、ゴーンと、真夜中の鐘の音が鳴った。結局その晩、その娘がパーティーに戻って来ることはなく、別の娘が領主から褒美を受け取ることになったのだった。

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空色のドレス(01)

「ね、出かけてくるけど、この格好、おかしくなーい?」
 宿で着替えたフィリシア姫は、青い髪を揺らして、くるりと回ってみせた。その口調も示しているように、いつものとおり、もう全く王女には見えず、旅先で胸をわくわくさせている町娘のフィア、以外の何者でもなかった。
 それにしても、このくらいの年頃の女性は、着替えたら誰かの前で回らずにいられないものなのだろうか・・・などと、妹の記憶をだぶらせてそんなことを考えながら、ゼラルドは、
「・・・問題ないと思う」
と、装飾のない返事をした。妹なら「それだけ?」と不機嫌になっただろうが、目の前にいるフィアは満足そうで、
「そう? じゃ、行ってきます。帰りに何か、食べるもの買ってくるね!」
 笑顔で手を振ると、軽やかに飛び出していったのだった。

 言葉通りに夕飯を買って帰って来たフィアは、目をきらきらと輝かせて、出かける前よりさらに興奮している様子だった。食事をしながら、さっそく話しだしたことには、
「あのね、ゼラルド。明日の夜から三日間、領主さまのお屋敷で、仮面舞踏会があるんですって。誰でも参加できるんですって! ね、私、行ってもいい?」
「・・・パートナーがいないのに?」
 踊るのが大好きなフィリシアに付き合ってくれそうな、フルートも、セレンも、今は別行動で不在だ。ゼラルドが付き添えばいいのかもしれないが、彼には彼の事情があり、人の集まるところはできるだけ避けている。
「だいじょうぶ、私ひとりで行くわ。ね、だから行ってもいい?」
 ゼラルドは少し困惑した。内陸の文化については、あまり詳しくない。
「・・・このあたりの地方では、パートナーなしで舞踏会に参加できるのかな」
「ええ。だって舞踏会で結婚相手を探したりするくらいだもの。ローレインでは違うの?」
「ああ。パートナーがいなければパーティーには参加できない」
 言いながらゼラルドは、果たして本当にそうだったのか、自信がなくなってきた。嫉妬深い妹姫がいたために、おのずとルールのほうが捻じ曲げられていた可能性もある。
 いや、ともかく今はフィアの話を検討しなければ。ゼラルドは続けて、
「だが、仮面舞踏会といったところで、身元を明かさなければ参加できないだろう?」
「いいえ、名乗らなくてもいいの。盛装さえしていれば、誰でも入れてもらえるのよ。この季節には珍しくない催しだわ」
 ゼラルドは今度こそ驚いて、
「そのような危険なことが! 本当に?」
「え? うん」
 フィアはきょとんとしている。言葉を補うように、
「そうね、王城・王都では警備も厳しいから滅多にないわ。でも、地方では普通のことよ。お屋敷が開放されて、ごちそうが振舞われて、みんなで楽しんで。ローレインでは違うの?」
「そうだね・・・」
 故郷の宴ではしばしば人死にが出たし、だから警備も厳重で、参加する者の身元は毎回厳しく確認されて・・・などと説明する気にもなれず、ゼラルドは言葉を濁し、話を元に戻して穏やかに提案した。
「では、こうしようか。君はこれから三日間、ひとりで舞踏会に出かけていい。ただし、毎晩必ず、真夜中の鐘が鳴るまでに帰ってくること。というより、真夜中の鐘が鳴り終わったら、強制的にぼくが呼び戻す。ぼくは君の様子をのぞき見たりはしない、その代わり、時間がきたら本当に問答無用で、君をこの宿泊場所まで瞬間移動させる。君のほうは、そのとき人に見られないように気をつけること。それでいいかな」
「いいわ。ありがとう」
 フィアは嬉しそうに、大きくうなずいた――。

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予告:「空色のドレス」

更新まだかな、まだかな、と、頻繁に訪れて応援してくださる方々に、いつも感謝しています。
ちっぽけなサイトではありますが、もうすこし頑張ろう、という気持ちになります。
ブログランキングも、おかげさまで、まだ引退せずに参加継続できています。
本当にありがとうございます。

今日は台風のせいで、外は物凄い暴風雨ですが、
会社からも早く帰れたし、体調も安定しているし、少し時間ができました。
ので、フィリシアの話に手を付けました。
全5回くらい?になりそうです。「竜王の館」を受けてのお話になります。(未読でも割と平気。)

通常より間隔の空いた連載になってしまったらごめんなさい。
一所懸命、こつこつ書きます。
どうぞよろしくお願いいたします。

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作者より:作品ストックについて

更新が滞っていて申し訳ありません。
そして、こんな状況でも訪れて応援してくださる皆さま、本当に本当にどうもありがとうございます。

さて、言葉を編む時間がないとき用に、ストックのひとつやふたつ持っていないのかと問われてしまいそうな今日このごろですが、実は、ひとつだけ持っています。すでに出来上がっている物語。
ただ、問題なのは、それが旅の帰り道のお話だということで・・・sweat02
いくら私が時系列順に書けない性分だとはいっても、さすがにもう少し、フィリシアの解呪イベントか、対「闇姫」イベントが進まないことには・・・出せないよsweat01

とはいっても、6月も引き続き、製作に手が回りそうにない現状があるわけで。
だから、もし本当に6月も新しいお話が書けなかったら、このストックを出すことに決めました。

どちらに転んでも、6月中には必ず更新するぞ宣言、です。
どうか、今しばらくお待ちくださいませ。

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