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(跳ぶ)(04)

 もともと、この儀式に必要な口上は、あまり難しいものではない。自己紹介から始まり、国王に剣を捧げる定型文で終わりさえすればよく、その間に挟み込まれる装飾的な文言については、幾通りかのパターンの中から、好みのものを選択すればよい。
 家柄の都合上、セレンは一番長いパターンを選択せざるを得なかったが、それでも、少年が暗記に苦労するような長さではなく、少しくらい緊張したからと言って消し飛んでしまうような複雑さもなく、セレンは余裕をもって一度も言い淀むことなく装飾文言を述べ終えた。
 さあ、あとは顔をあげて、剣の誓いをすれば良いだけだ。セレンは頭を上げて、初めて国王一家の顔を正面から見た。陛下も妃殿下も、やさしい表情で微笑んでいらっしゃる。その隣にいるフルートは――。
 王子の姿が目に入った瞬間、セレンははっとした。フルートは、かろうじて社交辞令用の笑みを口元に貼り付けてはいたが、その視線は自らの足元をじっと見つめたまま微動だにせず、ちらりともセレンのほうを見ようとはしなかった。というより、明らかに、見たくないものを見まいとして必死に目を伏せているのだった。椅子の肘掛に乗った腕はぎゅっと強張っている。
 何か自分がとんでもない間違いを犯したのではないか、という疑念にとらわれて、セレンは自分の述べたことを慌てて思い返したが、これといって思い当たることもなく。困惑しながら国王に向き直り、最後の誓約を述べようとして、セレンははたと気が付き、開きかけた口を閉じた。
 ああそうか。セレンがこうして、フルートの目の前でひざまずき、臣下の礼を取って、忠誠の誓約を述べようとしている、まさにそのことが、フルートを傷つけているのだ。セレンにとっては、こんなこと、別に何でもないことなのに。言ってみれば・・・そう、馬跳びの馬と同じようなものだ。
 あのときセレンに、何の屈託もなく「跳んでみろよ」と言って馬になったフルートが。少しばかりスケールが大きくなった馬跳びの、跳ぶ側に立ったからといって、惑うことなど何もない。でも、髪を切るなと言ったのも、同じ惑いの表れだったのだろうか。
 跳んでごらん、と。そう言いたい。あのとき君がぼくに言ってくれたように。
「・・・おそれながら、もし、陛下のお許しを賜ることができますならば」
と、セレンは言って、言葉を切った。予定にはなかった台詞だった。緊張して、血が逆流するような気がしたが、言ってしまったからには後戻りはできなかった。
 国王は穏やかに促した。
「申してみよ」
 フルートはまだこちらを見ない。セレンは知識を総動員して、この場にふさわしい故事を選び出し、言った。
「いにしえの剣聖アイオンの例にならい、我が剣を王子殿下に捧げることをお許しいただきたく、お願い申し上げます」
 ざわ、と、列席者たちがどよめいた。このようなことは前例がない。いや、前例なら今、少年が口にしたではないか。では、剣聖アイオンとは、どのような人物なのか?
 国王の目配せに応じて、宮廷仕えの学者が、おほんと咳払いして説明をおこなった。かの剣聖は、古代レティカ王国に現れた英雄の一人であり、賢人として名高い王の治世に、ともすれば見落とされがちだった第一王子の聡明さを見抜き、この王子に剣を捧げて生涯仕えた。このときレティカはまさに黄金時代。たいへん重畳な故事でございます、と締めくくって、学者は説明を終えた。
 国王は満足そうにうなずいた。
「良かろう、セレン・レ・ディア。そなたが王子に剣を捧げることを許す」

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コメント

どうもはじめまして、主様。私はこの『遥かな国の冒険譚』とおなじく、人気ブログランキングのファンタジー・SF小説カテゴリにて『芝臣一太郎劇場・新館』なる駄文ブログにて轡を並べさせていただいている(苦笑)、芝臣一太郎と申します駄文書きでございます。

カテゴリ上位の中で、主様の文章と世界観は、かなり惹かれるものがあり、ただ今、「跳ぶ」を最初から拝読させていただいておりまして、続きが気になって仕方がありません。

こちらは本来、近未来SF書きでして、主様のような本格的なファンタジーは憧れつつも、今は自分の目的を果たすべく、右往左往しているのが現状です。だからこそ、主様の作品に惹かれたのかもしれません。

どうぞこれからも胸躍らせる作品をお書きくださいませ。私もまた、のた打ち回りながらも作品を書いていきますゆえ、お互いに頑張りましょう。

とりあえず、お近づきの印にランキング・ポイントを入れさせていただきます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
よければ、貼りつけたURLからウチのブログを……見てくださったらいいなあ(笑)。

どうも失礼しました。
それでは、また。

芝臣一太郎さん、こんにちは。管理人の雪村です。
丁寧なコメントをいただき、どうもありがとうございます!

本格ファンタジーだなんて到底名乗れない、へなちょこな物語を綴っておりますが、少しでもお気に召していただけたなら、とても嬉しいです。
「跳ぶ」の続きは、ちまちまと一所懸命書いているところなので、もう少しお待ちくださいませ。

そしてSFも好きですよ~。さっそく見に行かせていただきますね♪

どうもおはようございます、雪村さん(詩的なお名前ですね)。芝臣(しばおみ)です。

昨夜はウチのブログにお越しくださり、丁寧なごあいさつまでいただき、感謝感激でございます。

その上、拙作『戦乙女教師・麗香 狼たちの午後』までお読みくださり、嬉しいやら恥ずかしいやら、真夜中に踊りあがってしまいました(苦笑)。

しかし、#18ってもうずいぶん前のことになりますけど、作中時間は1週間ちょっとなんですよねー。
うーん、遅筆だなあ。こういう時、つくづく感じますね。

ともあれ、もしお気に召したようでしたら、いつでもお越しください。心よりお待ちいたします。

そうそう、おかげさまでブログランキングのファンタジー・SF小説カテゴリで7位に入っております(朝8時30分調べ)。どうもありがとうございました。

なんにせよ、これからもどうぞよろしくお願いいたしますね。
そんなわけで、今日もランキング・ポイントを入れさせていただきます。

どうも失礼しました。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
たびたびの丁寧なコメント、どうもありがとうございます♪

書くスピードより読むスピードのほうが、どうしても速いですものね。
私も、自分の書いたものを読み返してみるときなどに、
「かかった時間の割に・・・」とか、「読むのは一瞬だなあ・・・」とか思いますsweat02

また機会があればお立ち寄りくださいませ。
楽しみにお待ちしております。

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