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空色のドレス(05)

 二日後。合流したフルートとセレンは、開口一番、
「聞いたぜ! 領主の館に、青い髪の精霊が踊りに来たって? 君だろう、フィリシア」
「この世のものとも思えない輝きの服を着て、上手に踊って、追いかけたら煙のように消え失せたのだって? 君のことだよね、フィリシア」
 街道の噂話はそればかりだった、と言って、二人は笑った。
 あくる日、一行は街を出て、次の街へと向かった。精霊の伝説をあとに残して。

 夏は盛りを過ぎていたが、その日はとりわけて暑かった。
 ずいぶん行ったところで、小さな森に入ると、木陰が涼しく、一行はほっとした。
 道なりに馬を進めて行くと、小川の音がしたので、道をそれて立ち寄ることにした。
「冷たくて、気持ちいい」
 フィリシアは水に手を浸して喜んだ。一行の中では一番北寄りの国の出身で、弱音こそ吐かないものの、真夏日の移動がこたえているようだった。逆に、一番南寄りの国の出身であるゼラルドは、いつもと変わらず涼しげな顔だ。
 休憩の間に、小川をさかのぼって木々の間を歩いて行ったフルートが、戻って来て、
「この先に泉があった」
と言った。セレンがフィリシアを気遣って、
「少し水を浴びて来たら? ぼくたちは道に戻って待っているから」
「そんな、悪いわ。大丈夫、このまま行くから」
「遠慮するほど時間はかからないだろう? 荷物も預かるよ」
「・・・ごめんなさい、では少しだけ。すぐ戻るわ」
 フィリシアは、身につけているもの以外はセレンに預け、若者たちはその場を離れた。
 フィリシアが小川をさかのぼって歩いて行くと、すぐに、聞いたとおり、小さな泉があった。周りを見回して、誰もいないのを確かめてから、フィリシアは服を脱いで近くの木にかけた。魔法のクルミも、首から外して木の枝にひっかけた。彼女は普段から、お守りのように肌身離さずクルミを首にかけていたが、裸で水や湯につかるときだけ、なんとなく気になって外しているのだった。
 周囲に人のいないことはゼラルドが確認してくれているだろうし、森に住む精霊たちは人間の水浴びなどに興味はあるまい。それでも、落ち着かないので、フィリシアは急いで髪をあげ、水を浴びた。冷たい水が心地よい。
 全身を冷やし、ほっと一息ついて、フィリシアは水を払い、服を着た。最後にクルミを首にかけようとして、木の枝を見ると、そこにかけたはずのクルミはなくなっていた。
 最初は、地面に落ちたのかと思い、草むらをかきわけて探したが、見つからなかった。次に、自分が枝を間違えたのかと思い、あたりの木の枝を片端から探したが、やはり見つからなかった。いたずら好きな精霊が持ち去ったのか、それともリスか何かが餌だと思って巣に運んだのか。
 フィリシアは全身から力が抜けるように感じながら、仲間のもとに駆け戻って、なくしたものを一緒に探してくれるように頼んだ。
「ペンダントだね?」
と、すばやく応じたのはセレンだった。えっ、と驚いたようにフルートとゼラルドが振り返ると、セレンはフィリシアを見つめながら言葉を続けて、
「もらって帰って来た、ペンダントだろう。銀色の紐で、いつも首にかけていた。違うかい」
 目ざといセレンは、今まで口には出さなかったものの、フィリシアがクルミを手に入れた当初から気づいていたらしい。クルミ自体は服の中に落とし込まれて、外から見えるのは銀の紐だけだったから、当然ペンダントだと思ったのだろう。
「ペンダントではなくて、あれはクルミなの。・・・叩くとドレスが出て来るの」
と、フィリシアは説明した。クルミが大切な理由は他にあったのだが、説明できる自信がなかった。
「そうだったのか」
と、セレンは表情をやわらげた。それから一行は泉のほとりまで行って、しばらくクルミを探したが、見つけることはできなかった。
 ひとり、木陰に立ったまま聖札を操っていたゼラルドが、やがて言った。
「探し物は、すでにここにはないようだ。だが、心配せずとも、いずれ持ち主の手に戻るだろう」
「本当に、戻って来る? 私をなだめるために、嘘を言っているのではなく?」
「・・・ぼくは、君に嘘はつかない」
「そう・・・そうね。わかったわ、あきらめます。みんな、探してくれてありがとう。時間を取らせてごめんなさい」
 それで、一行は探すのをやめて出発した。打ちしおれたフィリシアの頭に、セレンが麦わら帽子をかぶせてくれた。

 ――魔法のクルミが戻って来たのは、それから十日ほど後のことだったが、それはまた、別のお話。

(完)

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コメント

月路さん
今回のお話 とても楽しく拝見しました♩
いくつになっても、ドレスアップは心躍るものがあります。
くるくると軽々と踊り
居たと思うと消えてる・・
軽やかな羽根のようなドレスは
永遠の憧れですshine
特に、「竜王の館」は 印象深い作品だったので
軽さの中に、味わい深いものがありましたspade

montiさん、
コメントありがとうございます♪
お気に召していただけて嬉しいですhappy01

結婚式に招待されたときなどに、
「きゃー、何を着て行こうかしら」とそわそわする、
あんな感じなのかなあ、舞踏会boutique
おとぎ話の、ふわふわのドレスは、お約束かもしれないけど憧れちゃいます!lovely

竜王の館シリーズは、クルミが戻って来る話で、ひとまず終了です~。


青の髪に夕暮れ色のドレス……素敵な色合いですよね…!
私はこれが一番好きでした(*´ー`*)

まさに夕闇かな?
夕闇のグラデーションの美しさといったらため息がでるほどのものですよね!

透き通るような赤と、対を成すような奥深さの深い青。
素敵な想像が広がります!

ひろさん、
コメントありがとうございます♪ お仕事おつかれさまです!

単品で読めるか読めないか、割とぎりぎりなお話ですが、難しいことを考えずに塗り絵感覚で(?)、お読みいただけたら嬉しいです☆
作者の想像を超える綺麗なお洋服、フィリシアに着せてあげてください~heart04

夕暮れ時の、刻一刻と変わっていく空の様子を、ずっと見ていたのは、これはいつの思い出だろう…。
最近は忙しさに紛れて、空を見守るだけの余裕をなくしているような気がします。
たまには無心で、暮れなずむ空に輝く一番星、二番星、三番星、見つけたいものですconfidentshine

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