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(幼きもの)(09)

 その夜。マシュモッシュ博士とドゥーイット博士は、食後のお茶を飲みながら、フルート王子のことを語り合った。
「いや本当に、ドゥーイット殿からお聞かせいただいていたとおりの、素晴らしい王子殿下でいらっしゃいました。明るくて、素直で、思いやりがあって・・・そして、稀有な資質を備えていらっしゃる」
「では、やはり、あの聡明さは稀有な資質でありましたか」
 ドゥーイット博士がうなずくのに向かって、
「聡明というより、私には、直感が鋭くていらっしゃるように思われました。嘘を見抜くのも、カードを当てるのも、頭で考えているのではなく、息をするのと同じくらい自然に、直感でひらめいているようにお見受けします」
「なるほど。して、危ういとは、お思いになりませんでしたでしょうか。潔くありすぎると言いますか、その、直観、が、過ぎると言いますか、傍で見ているこちらがハラハラさせられることも多いのですが」
 心配そうなドゥーイット博士に、マシュモッシュ博士は、
「おおよそのところは心配ありません。なぜなら、殿下の危うさとは、『怖れを知らないこと』によるもの――すなわち、まだ幼くていらっしゃる、まさにそのことによる危うさだからです」
「怖れを知らないこと・・・」
と、ドゥーイット博士は繰り返した。マシュモッシュ博士はうなずいて、
「さよう。言い換えるなら、まだ守るべき大切なものがないのです。だから、嘘のつきかたもご存じないし、他人の嘘にも厳しくていらっしゃるし、ご自身の利害を考えずに感じたまま行動される。時には危うく見えることもあるでしょうが、子供たちにはよくあることで、たいていは年を重ねるとともに守るべきものを見出し、思慮分別が身について、自然とバランスが取れるようになるものです」
 ドゥーイット博士は、ほっとした顔になった。
「では、このまま見守っていれば良いのでしょうか」
「ひとつ気にかかることがあります」
と、マシュモッシュ博士は言った。ドゥーイット博士がおもてを引きしめる。
「と、言いますと?」
「フルート様には、あの城ひとつは狭すぎると思うのです」
「?」
 当惑顔のドゥーイット博士に、さらに説明する。ここは肝心なところだと、マシュモッシュ博士は思う。
「城の中で大切に守り育てられたフルート様は、あれだけ優れた資質をお持ちにもかかわらず、普通の7才の子供に比べて、経験が少なすぎます。だからこそ、幼く、危ういのです。また、ご本人の心情的にも、外に出たいお気持ちが強いご様子。できれば国外への旅行をお勧めしたいところですが、一人きりの王子殿下ですから、なかなかそうもいきますまい。であれば、せめて時々、信頼できる護衛をつけて、おしのびで都にでも出かけられると良いと思います」
「なるほど・・・そのようには考えてみたこともありませんでした。さっそく検討してみます」
 ドゥーイット博士は真面目な顔でうなずいた。このぶんなら、きっと実行してくれそうだ。マシュモッシュ博士も安心して、微笑んで言った。
「まだお小さいですから、仮の名をお使いになるなら、本名と響きの似た名前がよろしいでしょうな。たとえば――ルーク、とか」

 数年後、ボンダバンの国王は病に斃れ、政情は不安定になって、マシュモッシュ博士がフルート王子に再会できたのは、何年も後のことになった。再会した王子に、博士は尋ねてみた。
「ところで、フルート様は、何か怖いものはおありですか?」
 王子は立派な若者になっていたが、不思議そうな顔で、
「怖いもの? 特に思いつきませんが」
「大蛇や、大蜘蛛はどうですか?」
「気持ち悪いですが、怖くはありません」
「ああ、なるほど・・・いかにも、そうでありましょうな」
 王子は当惑顔だったが、マシュモッシュ博士は満足した。なぜなら、その答えは、怖いとは何かを知っている人の答えであったから。また、そのうえでなお、怖いものはないという豪胆さが、いかにも王子らしいと思ったからであった。

(完)

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コメント

どうもこんにちは、雪村さん。芝臣です。

「幼きもの」(09)、読了いたしました。

なかなかに複雑な内容で、何度も読み返してしまいました。失礼ながら雪村さんにはお子さんがいらっしゃるか、児童心理学を学ばれているのではないか・・・そう思わせるに足る説得力のあるマシュモッシュ博士の見解でした。

そして、ついに「ルーク」誕生秘話が語られることになりましたね! 個人的には「信頼できる護衛」というのが、どんな人物か、「ルーク」との関係はどんなものだったのか、非常に気になります(笑)。

最後のマシュモッシュ博士との問答は、正直、よくわかりませんでした。フルートの怖いものとは…フィリシア、なのかどうなのか迷うところです。

ともあれ、ファンタジーの子供の姿を克明に描き、一定の結論を出したことは称賛に値します。
本当にご苦労様でした。

どうも失礼しました。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪

うちには子供はいませんが、かつて子供だった経験ならありますよconfident

護衛はドゥーイット博士自身か、剣の先生あたりだったと思われます。
そのあたりには大したエピソードはなさそうに思います。

マシュモッシュ博士の最後の問答については、何度も書きなおしたのですが、筆力不足で申し訳ありません。
「怖いとは何かを知っている」ことと、「いま怖いものがあるか」ということは別、くらいに捉えていただければと思います。

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