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クルミの行方(04)

 ――「竜王の沼」の底で、衣裳部屋にやって来たナミは、今朝縫いあげたばかりのドレスが消えて行くのを見て、重いため息をついた。これで何日目だろうか。
 かつての主人である姫君のために衣装を用意することは、裁縫上手のナミにとって、やりがいのある楽しい仕事だったし、姫君が初めてクルミを使ってくれたときには、舞い上がるほど嬉しくて、虹色のドレスが必要らしいとわかったときには、仕事を半日休んで、一心不乱にドレスを縫いあげもした。
 だが、そのあとは。何が起きているのか、ナミには、よくわからない。
 ひとたびは衣裳部屋に戻ってきた、青空色のドレス、夕空色のドレス、虹色のドレスは、再び出て行ったきり、何日も戻って来ない。それどころか、クルミはずっとずっと叩き続けられていて、他のドレスを何着渡しても、音がやむのは夜だけだった。あんなにたくさんあったドレスが、とうとう全部出払って、1着も戻らなくても、なお。
 ここ数日、ナミは仕事を休んで、昼も夜もドレスを縫い続けている。姫君にどんな事情があるのかわからないが、クルミが音を立て続けているのは、自分への信頼の証だと思うから。自分にできる限りのことは、して差し上げたい。
 ドレスは、縫いあげて衣裳部屋に持って行くそばから、クルミに呼び出されて消えていく。疲労困憊しているナミを見かねた同僚たちが、仕事の合間に手助けをしてくれたが、それでも、手間のかかる作業ゆえ、一日に3着ほどを縫いあげるのが精いっぱいだった。彼女たちの主人は、最近姿の見えないナミを気にかけて、「ナミは出仕せずに何をしているのだ」と尋ねたが、「ドレスを縫っているのです、若様」と聞くと、「そうか」と言って、それ以上追及することはなかった。
 ナミは、衣裳部屋の1区画が空っぽになっている様を、ぼんやりと見て、なんだか体から力が抜けるような気がして、その場に座り込んだ。そうだ、何か食べなくちゃ、と思った。最後にとった食事がいつだったか思い出せない。でも、食べる前に、少し休もう。ほんの少しだけ。ほんの少しだけ。姫さま、ごめんなさい。
 クルミの鳴る音を胸のうちに聞きながら、ナミはその場に横になった。そして、心配した同僚が翌朝捜しに来るまで、そこで動けずにいた。同僚は主人を呼んだ。主人、すなわち竜王の息子は、駆けつけて来ると、ぼろぼろになったナミを見て驚いた。
「ナミ。ナミ。何があったのだ」
 そっと抱えあげられたナミの胸の中で、クルミの音は容赦なくずっと鳴り響いていた。トン、トン、トン、トン、トン、トン・・・。
「縫わなくちゃ・・・」
 うわごとのようにナミが呟いた瞬間、はたと音がやんだ。・・・やんだ? 目を開けて、主人の顔を見上げ、何か言おうとしたとき、ナミはその音を聞いた。
 ――ガシャリ。
 それは、クルミの砕かれた音だった。ナミは、声にならない悲鳴をあげ、意識を失った。

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コメント

どうもおはようございます、雪村さん。芝臣です。

「クルミの行方」(04)、拝読しました(ちなみに「くるみの行方」と書くと現代青春ミステリっぽい感じがしますね。あんまり深い意味はないですけど。苦笑)。

それにしても、先の「竜王の館」でもそうでしたが、ナミは本当に侍女(メイドさん? 苦笑)のかがみのように健気な女性ですねえ。

一方、マーニャ(でしょうね)は、事情を知らないとはいえ、やりたい放題のようで、とうとうナミが倒れるどころか、クルミを壊してしまったらしく、読んでいて痛々しいものを感じていました。

それと、印象なんですが、フィリシアとの別離を経てか、竜王の息子がいささか渋みのある大人っぽい男性へと変わったような感じもしますね。・・・もちろん、まだはっきりとは断言できませんが。

さて、私のファンタジー度ですが・・・すいません! 『グイン・サーガ』も『十二国記』も名前しか知らなくて、一冊も読んでいないんですー!(恥)
そりゃあ、私にファンタジーの「匂い」がしないのも道理、嫌いではないし、こうやって読みふけたりもするけれど、自分から読もうという気には滅多にならないんです。
そうですね、せいぜい初期の『ベルセルク』とか『ロードス島戦記』シリーズとか、超メジャーどころぐらいを読んだくらいですかねえ。

でも剣と魔法の物語は、ほんとに嫌いじゃないんですよ? たぶん、私もいつか「幻想世界」を舞台にしたお話を書くと思っているんですが・・・いまはサイバー系SFのほうに興味があるんで、「極近未来」ストーリーを書いているというわけです。

なので、いまはこの『遥かな国の冒険譚』で、ファンタジー分を補充しているというわけです。

いや、どうも失礼いたしました。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
いらっしゃいませ。

おや、「三国志」と「銀英伝」はスルーでしたか。「○、○、×」で、三つとも当てたつもりでしたがchick
それと、今お持ちの連載小説は、あまりサイバー路線ではないと思います…よね???coldsweats02

うちは「ゆるい」ファンタジーなので、気軽に補給するぶんには良いかもしれませんが、本格ファンタジーを書く参考にはならないと思います。あしからずbleah

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