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クルミの行方(08)

 竜王の息子とフルートのやり取りは、豪雨の音と、おそらくはゼラルドの配慮のおかげで、宿の中にいた者の耳には届いていなかったようだった。全身ずぶ濡れのフルートが戻って来たのを見て、フィリシアとセレンは驚いたようだったが、フルートは何も言う気になれず、そのまま宿の部屋で着替えて、ひとりで過ごした。
 翌日は、霧雨だった。このくらいの雨なら出かけられるのではないか、とセレンが言うのを、もう少し待とう、とフルートが止めた。同じ宿に滞在していた何組かの客が出発して行くのを横目で見ながら、セレンは不思議そうな顔をしたが、反対もしなかった。
 昼近く、窓の外を見ていたフルートが、振り返って、フィリシアに告げた。
「フィリー、どうやら、君のお客さまが見えたよ」
「私の?」
 フィリシアは戸惑いながら窓に近寄って外を覗き――すぐに、ものすごい勢いで扉に向かうと、外に飛び出した。
「・・・ナミ!」
「お久しゅうございます、姫さま」
 かつての侍女は、少しやつれていたが、フィリシアを見ると、両手をそろえてお辞儀をし、顔をあげて、にっこり笑った。フィリシアは、ナミの前に膝をつき、その手を取った。
「ナミ。ナミ。聞いて。私、あなたからもらったクルミを・・・」
「姫さま! どうぞ、お立ちくださいませ」
 ナミは言って、あわてて自分も膝をつきながら、
「姫さまがおっしゃるのは、これのことですか?」
 フィリシアに握られた両手を、そっと開くと、その白い手のひらには、銀の紐を通したクルミが包み込まれていた。
「まあ・・・ナミ! どうしてこれを」
「ふふ、めぐりめぐって、わたくしの手に戻って参りましたので、お届けにあがりました」
 ナミは言って、失礼しますと言いながら、クルミをフィリシアの首にかけた。
「姫さまのお洋服、またたくさん、こしらえておきました。どうぞお使いくださいね」
「ナミ・・・」
「そんなふうにお泣きにならないでください。お別れがつらくなります」
「・・・もう行ってしまうの?」
「わたくし、地上では、あまり長く人の姿でいられないのです」
 悲しそうにナミは言った。
「そろそろ、近くの川に戻らなければなりません」
「ナミ。ナミ。あのね・・・その・・・あの・・・」
「若様なら、お元気でいらっしゃいますよ」
 ナミはせいいっぱいの晴れやかな笑顔を浮かべ、真心の祈りをこめて、言った。
「姫さまは、どうぞ迷うことなく、姫さまの幸せに向かってお進みくださいませ」
 宿の中では、去りゆくナミの後ろ姿を見ながら、セレンが安堵したように呟いた。
「そうか、あのクルミは、あの女性からの贈り物だったのか。それなら、別にいいや」
「ああ」
と、フルートは短く答えて、窓から空を見上げた。とくに変わったところのない空だった。

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コメント

どうもこんにちは、雪村さん。芝臣です。

「クルミの行方」(08)、拝読いたしました。

いうなれば、これは「涙の再会」・・・でしょうか。
なるほど、ナミの手から渡されれば、どこにも角は立ちませんからね。フルートも考えたものです。

しかし、フルートはフィリシアのことを「フィリ―」と愛称で呼んでいるのを、改めて確かめました。そういえばゼラルドのことも「ゼル」と呼んでいたようだし、その辺はもう、パーティ間では完全に親しくなっていることの証明ですね。

ともあれ、クルミがとうとうフィリシアの手に戻ってよかったですねえ。
次回はエピローグでしょうが、晴れやかなエンディングを楽しみに期待しております。

どうも失礼しました。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
いらっしゃいませ。

仲間たちを愛称で呼ぶのはフルートくらいですが、それも呼んだり呼ばなかったりです。
あとはフィリシアが、ゼラルドのことを少し違うふうに呼ぶことがありますが、まだお話の中には出て来ていません。

エピローグ、晴れやかかどうかは置いておいて、今日中に仕上げるべく頑張ります~。

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