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クルミの行方(09)

 ――ある朝、街外れの小さな家で、マーニャは、ほとほとと戸を叩く音に気付いた。戸を開けると、そこには、見たことのない、どことなく人間離れして儚げな雰囲気の、長い青い髪をした娘が立っていた。
「先日は、あるじにクルミをお返しいただき、ありがとうございました」
と言って、娘は丁寧にお辞儀をした。
「えっ、ええっ? うん、まあ、そうね」
 マーニャが戸惑いながら応じると、娘は顔を上げて、
「1着足りなかったので、受け取りに参りましたが・・・」
 言いながら、微笑んだ。
「よくお似合いですから、そのままお使いください。失礼いたしました」
「えっ、ちょっと待って、待って。返すから」
 マーニャはあわてて、その場でガバッと服を脱いだ。
「これ1着のために体型維持するのも面倒だし。あ、ごめん、洗って返したほうがいいわよね。また来てくれるなら、洗っておくんだけど。あの綺麗な子が着る服なんでしょ?」
「・・・あの方が、この服を着てくださることはないと思います」
「どうして? 地味だから? こないだ来た怖いひとも、あたしが着てるのに気付かなかったけど。でもこれ、すごく着心地よくて、汚れなくて、動きやすくて、いい感じよ?」
 ナミは――もちろんそれはナミだった――、黙って、寂しそうに微笑んだ。その服は、ナミが1着だけ縫ってしまった、普段着だった。決して訪れることのない日を夢見て。
 マーニャは脱いだ服を適当にたたんで、適当に言った。
「いいじゃない。あの子のために仕立てた服なら、とりあえずクルミに入れとけば」
 その言葉は、なぜかナミの胸に、すとんと響いた。マーニャは続けて、
「また怖いひとが来たらイヤだから、返すったら、返す!」
「では、持ち帰らせていただきます」
 ナミは、服をそっと受け取った。マーニャは大きく伸びをして、そして、ナミの見ている前で体を伸び縮みさせ、自分の元の姿に戻った。髪の色も、元の明るい栗色になった。
「うーん、すっきり!」
 ナミは、ぽかんとしてその様子を見ていたが、我に返ると、ふふ、と笑った。
「では、代わりに何かお作りして、届けさせるようにいたしましょう」
「えっ、どうして」
 マーニャは目をぱちくりさせたが、ナミは笑顔でお辞儀をすると、大切そうに服を抱えて、朝靄の中に消えて行った。
 数日後、マーニャの家の前に小さな麻袋が置いてあって、ひらいてみると、中には月の色のドレスが入っていた。マーニャが着てみるとぴったりで、栗色の髪によく似合った。
「わあ、もらっちゃった! 今度こそ、本当に、あたしのよ!」
 マーニャはドレスを着て、嬉しくて、くるくる回って、母親をあきれさせた。

 「竜王の沼」の底で、ナミはまた服を縫っていた。縫っているのは、姫君のための普段着だった。
 たとえこの館の中でなくても、姫さまが着てくださればいい、と、ナミは思った。だから、これからは普段着も入れておきます、姫さま。
 衣裳部屋に向かうと、廊下で主人とすれ違った。道を開けてお辞儀したナミの手の中を見て、竜王の息子は、
「ああ、姫に似合いそうな色だな」
と言い、柔らかく笑って、通り過ぎて行った。

(完)

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コメント

おはようございます。

ドレスの絡むお話は、ドレスはどんな感じかな~と想像して楽しむことが多いのですが、
今回はお話の展開にドキドキしていました。
でも、さすが雪村さん!気持ちのいいエンディングでしたねhappy01
いつも、お話が優しい雰囲気をまとっていて、読んでいて癒されてますheart04

次回作も楽しみにしていますねnotes

ムーンサークルさん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪

気持ちのいいエンディングと言っていただけて、ほっとしています。
ムーンサークルさんからのコメントで、私も癒されていますconfident

次回作については、まだ何も構想がありませんが、ゼラルドの本編が書けたらいいな、と思います。
またお気軽に書きこんでくださいねheart01

どうもこんにちは、雪村さん。ムーンサークルさん。芝臣です。

雪村さん、「クルミの行方」完結、お疲れ様でした。

今回のエピローグは、まさに「ファンタジーとメルヘンのあいのこ」そのもののように私は感じました。

>――ある朝、街外れの小さな家で、マーニャは、ほとほとと戸を叩く音に気付いた。戸を開けると、そこには、見たことのない、どことなく人間離れして儚げな雰囲気の、長い青い髪をした娘が立っていた。
(冒頭より抜粋)

これはなんというか、ほとんどお伽噺のようで、この『遥かな国の冒険譚』の一面の真骨頂ではないかと思いました。

ただ、ひとつ注文をつけるなら、「青い髪の娘」がナミであることはエンディング直前まで伏せておいて、最後の「竜王の沼の館」の場面で明かす・・・といった演出があってもよかったかな、とも思います。

しかし、それにつけても終わり方が素晴らしい! まるで池波正太郎先生の時代小説を思わせる、しみじみとしたエンディングで、しかしそこは「竜王の館」で、皆、人ではない者たち・・・これぞ「ファンタジーとメルヘンの融合」だと私は思いました。

いずれにせよ、今回はいろいろありましたが、とにかく今後もこの物語を追い続けていきたいと思います。

どうもありがとうございました。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪

普段着にまつわる会話のところで、できることなら読者の方々に「竜王の館(後編)」導入部を想起していただいて、ナミの心の揺れに寄り添っていただきたかったので、正体がナミであることは、このタイミングで明かしていますwink

エンディングは、晴れやかであることを期待されているようだったので不安でしたが、作者の選んだエンディングも、どうにかお気に召したようで良かったですconfident

月路さん

こんばんは。
久しぶりに、本編をゆっくり拝読させていただきました♪
今回のお話は、女性だからわかる心理の綾がとてもデリケートに描かれていて
じんとしました。

やはり、竜王もナミも 好きなキャラクターですcrownspade
また、会いたいなあheart04

montiさん、
コメントありがとうございます♪

私も、竜王子もナミも好きですhappy01
主役以外の人物についても、きちんと「その人らしさ」を書きたいと思っているので、
「好き」と言っていただけると、とても嬉しいですshine

けど、この二人に、このあと出番があるかどうかは、どうかなあ~。
もし、また出て来ることがあったら、それは、montiさんが「また、会いたい」と言ってくださったから、かもしれませんconfident

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