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夜を越えて(02)

 皮袋を押し付けて来ようとする男を、ゼラルドは手で制した。
「すまないが、私は医師でもないし<癒し手>でもない。細君の病気は気の毒だが、その金子は医師の診療と薬の代金に充てたほうがよかろう」
「薬なら飲ませてみたが、バカ高いだけで、ちっとも効きやしない。医者には匙を投げられた。いいから、まず受け取ってくれ。そして、あんたに出来る限りのことをしてくれ。金ならまた稼ぐからいいんだ。俺はあんたに賭ける。さあ」
 半ば無理やり渡された皮袋を、ゼラルドは仕方なさそうに受け取った。それから、
「では、出来る限りのことをしよう。しばらく静かに」
と言って、並んだ札をあれこれ開いたり伏せたり混ぜたりしていたが、やがてマントの下から小さな水晶の棒を取り出して、何かつぶやきながら一枚のカードの上にかざした。水晶の棒には、何か細かい模様が彫り込んであったが、ゼラルドがすうっと棒を横に動かすと、なぜか中心からポキリと折れた。ゼラルドは二本目の水晶棒を取り出して、同じことをした。今度は棒は折れなかったが、動かし終わったときには彫り込まれた模様が消え、表面がつるりとなっていた。ゼラルドは三本目を取り出した。今度は、動かし終わっても特に変化はなく、細かい模様もそのまま残った。
 ゼラルドは紫色の小さな布を取り出して、この三本目の水晶棒を包んだ。
「手を」
 男が神妙に出した手の上に、ゼラルドは包みを乗せた。
「家に着いたら、包みを開け、中の御守りを細君に持たせたまえ。病が癒えるまでにはしばらくかかろうが、いずれ快復するだろう」
「ありがたい」
 男は疑う様子もなく、頭を下げて包みを押しいただき、大事そうに懐にしまうと、
「さっそく帰って、女房に渡すよ。恩に着る」
 何度も何度も頭を下げながら、店を出て行った。
 ゼラルドはテーブルの上をなでるようにして聖札を回収した。
「ルーク、ぼくたちも出よう。今夜の商いは終了だ」
「なけなしの全財産を、受け取ってしまって良かったのか」
 ルークの問いに、ゼラルドは軽くうなずいた。皮袋を開けないままルークに渡した。
「受け取らねば、かえって疑われただろう。大丈夫、彼の妻はこの処置で治る」
「君は立派に商いができたわけだ。驚いたな」
「伝わるところには伝わっているからね。聖札169枚、すべて使うのは本物の術者だと」
「金・銀・銅貨と・・・これは」
 ルークは皮袋の中を覗いて、小さな宝飾品を取り出し、
「片方だけの耳飾りだ」
「・・・祈りの力を感じる」
 ゼラルドが差し出した手に、ルークは紅色の耳飾りを乗せた。
「・・・対になる飾りを持った者が助けを求めている」
 ゼラルドは言って、ルークを振り返った。
「聖者のことわりでは、これは偶然でなく必然だ。応じなければならない。君は先に」
「一緒に行くさ」
 金髪の若者は笑って、皮袋をゼラルドに返した。
 ゼラルドは受け取って、うなずいた。ルークの腕に軽く触れて、
「呼んでいる者のところまで跳ぶ」
 言った次の瞬間、二人の姿はその場から消えた。気付いたものはおらず、酒場にはいつもの喧騒が残された。

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コメント

どうもおはようございます、雪村さん。芝臣です。

「夜を越えて」(02)、熟読玩味いたしました。

ゼラルドの占い(?)は、果たして本当に病に効果があるのでしょうか。作中では誰も疑っていないのですが、まあ、なんとかの頭も信心から、ともいうし、あるいは現代医学で言う「プラシーボ効果」を発揮すれば、なんとかなるかもしれませんが、それも病気の妻自身が信じることが前提ですね。ともあれ、その病気がめでたく快癒することを祈りましょう。

そして、物語は急速に動き始めます。この緩急のコントラストはまったくお見事です。次回に向けてテンポよく状況説明がなされ、そして、ゼラルドならではの消え方でルークともども事件の現場へと「跳んで」いく・・・うーん、実にカッコいい。しかも、その後、『気付いたものはおらず、酒場にはいつもの喧騒が残された。』という余韻を残した終わり方、実に上手いなあと思いました。

さてさて、これからいったいどうなるのか、あるいはその病気の妻や夫が何か関係してくるのか? じっくりと確かめていきたいと思います。

そんなわけで、次回も大いに楽しみに待っております。無理せず頑張ってください。

どうも失礼しました。
それでは、また。


芝臣さん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪

ゼラルドは「占い」だけするつもりで酒場に来たのでしょうが、客から全財産を託されて、どう見ても「まじない」まで実行してしまっています。
ゼラルドの「まじない」が病気に効くかどうかは、さて、どうなんでしょうね~☆

自分では「もっと上手に書けたらいいなあ」と思うので、お褒めの言葉については恐縮です。
精進します。

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