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ひとこと通信欄

  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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SF「夜景都市」(未完)

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2012年11月

夜を越えて(03)

 ルークとゼラルドは、静かな夜の闇の中、何やら石造りの建物の中に、ふわりと降り立った。壁石の隙間から、かすかに月光が差し込んでいる。
 よくよく耳を澄ませば、ささやくような女の声が、ずっと同じ言葉を繰り返しているのが聞こえた。曰く、
「慈愛深き月の女神よ、わが祈りを聞き届け給え。願わくば御使いを遣わせしめて、汝が信徒を邪神の手から救い出し給え・・・」
 祈りの言葉を聞き取って、ルークが面白そうにつぶやく。
「ぼくたちは月の女神の御使いなのか?」
「そうなのだろう」
と、真顔でゼラルドが応じた。そのやり取りが聞こえたのか、祈りの声は途切れて、
「・・・誰? 誰かそこにいるの?」
 震える声が問うた。すぐ近くだ。声のするほうに数歩歩けば、そこに牢があった。牢の中には、明り取りの窓の下、月光に照らされて、一人の若い娘が床に座り込んでいた。娘は二人を見て何か叫ぼうとしたが、ルークが素早く、
「静かに! 俺たちは敵じゃない」
 言葉をかけると、かろうじて声をのみこんだ。よく見ると、右耳にだけ、紅い耳飾りを嵌めている。
 床には、聖札が13枚ずつ2段並べられており、うち2枚のカードが表を向いていた。ゼラルドがちらりと見て、
「祈り届けば、救いの手、来たりなん」
 無表情に読み上げると、娘ははっとゼラルドを振り仰ぎ、うなずいて、
「何度やっても、そうとしか出なかったから・・・」
 かすれた言葉の終わりは、か細く消えてしまった。ゼラルドは首をかしげて、
「何度やっても? まあいい、まずは、これを返そう」
「あ・・・あたしの・・・」
 鉄格子の隙間から、娘は耳飾りを受け取って、左耳に嵌めた。
「どこかで失くしたと思ってた・・・。ありがとう」
「それで、君の望みは何なのだろう。見張りはいないようだが、牢から出せばいいのかな」
「それもあるけど。それだけじゃないわ・・・」
 娘はゆるゆると首を振った。
「できることなら、あたしを捕まえた狂信者たちを、何とかしてほしいの。そうでなければ、また誰かがさらわれて、殺されてしまう。彼らの神を、よみがえらせるために」
「滅びた神が生贄を得て復活するというのか。もし本当なら、邪神に間違いないが」
 ゼラルドは眉をひそめ、娘はうなずいた。
「百の贄をささげる、と言っていたわ。あと少しだ、とも。明日、日が昇ったら、あたしは祭壇に引き出されて、殺されて、荒ぶる神に喰われるのだと聞かされたわ・・・」
「・・・とすると、贄を逃がせば儀式も中止になり、大元を絶てなくなってしまう」
 ゼラルドは考え込んだ。娘はその様子をじっと見ていたが、
「必ず、助けてくれる・・・?」
「ああ」
「じゃあ、あたし、儀式まで捕まったままでいるわ・・・」
 それまで壁にもたれて黙っていたルークが、驚いたように体を起こした。
「いいのか?」
「あたしは巫女なの・・・。祈り届けば、救いの手、来たりなん。あなたたちを信じるわ」

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夜を越えて(02)

 皮袋を押し付けて来ようとする男を、ゼラルドは手で制した。
「すまないが、私は医師でもないし<癒し手>でもない。細君の病気は気の毒だが、その金子は医師の診療と薬の代金に充てたほうがよかろう」
「薬なら飲ませてみたが、バカ高いだけで、ちっとも効きやしない。医者には匙を投げられた。いいから、まず受け取ってくれ。そして、あんたに出来る限りのことをしてくれ。金ならまた稼ぐからいいんだ。俺はあんたに賭ける。さあ」
 半ば無理やり渡された皮袋を、ゼラルドは仕方なさそうに受け取った。それから、
「では、出来る限りのことをしよう。しばらく静かに」
と言って、並んだ札をあれこれ開いたり伏せたり混ぜたりしていたが、やがてマントの下から小さな水晶の棒を取り出して、何かつぶやきながら一枚のカードの上にかざした。水晶の棒には、何か細かい模様が彫り込んであったが、ゼラルドがすうっと棒を横に動かすと、なぜか中心からポキリと折れた。ゼラルドは二本目の水晶棒を取り出して、同じことをした。今度は棒は折れなかったが、動かし終わったときには彫り込まれた模様が消え、表面がつるりとなっていた。ゼラルドは三本目を取り出した。今度は、動かし終わっても特に変化はなく、細かい模様もそのまま残った。
 ゼラルドは紫色の小さな布を取り出して、この三本目の水晶棒を包んだ。
「手を」
 男が神妙に出した手の上に、ゼラルドは包みを乗せた。
「家に着いたら、包みを開け、中の御守りを細君に持たせたまえ。病が癒えるまでにはしばらくかかろうが、いずれ快復するだろう」
「ありがたい」
 男は疑う様子もなく、頭を下げて包みを押しいただき、大事そうに懐にしまうと、
「さっそく帰って、女房に渡すよ。恩に着る」
 何度も何度も頭を下げながら、店を出て行った。
 ゼラルドはテーブルの上をなでるようにして聖札を回収した。
「ルーク、ぼくたちも出よう。今夜の商いは終了だ」
「なけなしの全財産を、受け取ってしまって良かったのか」
 ルークの問いに、ゼラルドは軽くうなずいた。皮袋を開けないままルークに渡した。
「受け取らねば、かえって疑われただろう。大丈夫、彼の妻はこの処置で治る」
「君は立派に商いができたわけだ。驚いたな」
「伝わるところには伝わっているからね。聖札169枚、すべて使うのは本物の術者だと」
「金・銀・銅貨と・・・これは」
 ルークは皮袋の中を覗いて、小さな宝飾品を取り出し、
「片方だけの耳飾りだ」
「・・・祈りの力を感じる」
 ゼラルドが差し出した手に、ルークは紅色の耳飾りを乗せた。
「・・・対になる飾りを持った者が助けを求めている」
 ゼラルドは言って、ルークを振り返った。
「聖者のことわりでは、これは偶然でなく必然だ。応じなければならない。君は先に」
「一緒に行くさ」
 金髪の若者は笑って、皮袋をゼラルドに返した。
 ゼラルドは受け取って、うなずいた。ルークの腕に軽く触れて、
「呼んでいる者のところまで跳ぶ」
 言った次の瞬間、二人の姿はその場から消えた。気付いたものはおらず、酒場にはいつもの喧騒が残された。

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夜を越えて(01)

 ルークが町の酒場で一杯やりながら情報収集を終え、そろそろ宿に引き揚げようかと考えていたとき、店の入り口から、音もなく入って来た人影があった。黒いマントに身を包み、フードを目深にかぶったその客は、気配というものをほとんど感じさせないまま、ひっそりと、隅のテーブルの、隅の席に座った。気付いたのは、それこそルークくらいのものだった。
 うん?とルークは瞬きをした。それから、黒ずくめの客のテーブルまで歩いて行って、その隣に座った。フードの中をちらりと覗き込んで、
「やっぱり君か。どうしたんだい、珍しい」
「ルークか。そういえば――」
 黒髪の若者は静かな声で応じて、
「たしか君は――以前、ぼくが占いで生計を立てられるどうか、疑わしそうにしていたね」
「そうだったか? まあ、そうかもしれないな」
「試してみよう」
 ゼラルドは一組の聖札を取り出して、テーブルの上にするすると手を滑らせた。と見るや、テーブルの上には白い札が整然と並べられていた。一般的な遊興用のカードより小さく、厚みから考えれば高級な紙でできているに違いないのだが、見た目はまるで骨に模様を彫り込んだような質感だ。
 そのまま、ゼラルドは客を引くでもなく、フードをかぶって座ったまま静かに待った。ルークも邪魔をせずに、テーブルに肘をついて見守った。酒を飲みに入れ替わり立ち代わり訪れる客は、たいていゼラルドには注意を払わなかったが、中には「占い師か」と気付いて足を止める者もおり、そうした客は小銭を差し出して、恋人への求婚の是非や、引越しの吉日等の占いを希望した。ゼラルドはその都度、札をさらりと並べ替え、なでるようにして何枚かをめくっては、「うまく行くだろうが、急いだほうが良い」とか、「半月待ったほうが厄介事を避けられる」などと告げた。
 そのうちに、テーブルの近くを通りかかった一人の男が、はっとした様子で足を止め、卓上に並んでいるカードを見つめ、数え始めた。
「1、2、3・・・縦に13枚。1、2、3・・・横にも13枚。あんた、もうしばらくここにいてくれるか。俺はいったん家に帰るが、すぐに戻って来るからよ」
 ゼラルドが無言でうなずくと、男は店を飛び出して行き、言ったとおりすぐに戻って来て、人目をはばかりながら、どさりと皮袋をテーブルに置いた。
「死んだひいばあさんが、よく言ってた。もし、カードを縦に13枚、横に13枚並べている占い師がいたら、そいつには何でも視えるんだって。なあ、俺があんたに何を占ってもらいたいか、あんたに分かるか」
 ゼラルドは札を並べなおして、何枚かをめくり、つぶやくように答えた。
「妻の病気を治す方法・・・か」
「そう、そうなんだ! この袋に、俺の全財産が入ってる。どうかこれで。どうかこれで・・・」

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予告:「夜を越えて」

お待たせしております。

まだ中身の固まっていないところがありますが、金曜日までには連載を開始できると思います。
フルートとゼラルドの本編になります。全5回くらい?

というわけで、開始まで、もう少しだけお待ちください。
どうぞよろしくお願いいたします。

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作者より:「断章:数える…」

言うまでもなく、作者は作者のベストを尽くします。
そのうえで、どうしても「今回これだけは言っておきたい」ことのある方は、コメントにてお知らせください。
(他作品未読の方に配慮してお書きくださるようお願いいたします。)

次回作の見込みについては、また1週間ほど後に状況をご報告いたしますね。
いましばらく、お待ちくださいませ。

→ 目次に戻る

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断章:数える…

 一行が滞在している館は居心地が良かったので、天候の回復待ちは苦にならなかった。そして今日も、この重たい曇り空からみて、おそらく出発は無理だろう。
 ゼラルドが部屋から廊下に出てみると、なるほど出発は諦めたらしいフルートが、それでも自身は街に出るらしく、上着を引っ掛けて通り過ぎるところだった。「君は?」と尋ねられて、ゼラルドが首を横に振ると、うなずいて、そのまま出かけて行く。
 そういえば、とゼラルドは思い出した。フルートが不在のうちに済ませておきたいことが、ひとつだけある。
 折よく、セレンが逆方向に通りかかった。おそらく姫君たちに持って行くのだろう、菓子類を乗せた銀のトレイを持っている。
「セレン」
 呼びとめると、あからさまに迷惑そうな顔をされた。
「何だよ」
「手伝ってもらいたいことがある」
「断る」
 言いながら、しかし、向き直ってくれている。用件は手短に、興味を引くように告げなければならない。ゼラルドは率直に言った。
「聖札を数えたい。手伝ってもらえれば、すぐに終わる」
「数える? よくわからないな。何をすればいい?」
「入ってくれ。トレイはこちらに」
 ゼラルドはセレンを部屋に招じ入れ、トレイを受け取って扉脇の小卓に置いた。
 広い客室の真ん中には丸テーブルがあり、ひと組の聖札が積んである。
 ゼラルドは聖札の束を手に取り、一度両手の中に隠して何かつぶやいたあと、片手を外してセレンに見せた。
「君の目には、この束は何色に見えるだろうか」
「さっきまでは白かったけれど、今は薄紫だ」
「そう。やはり、君は媒介として優れているようだね」
「媒介?」
 ゼラルドは束から札を一枚とって、かざして見せた。
「これは何色に見える?」
「濃い紫」
「では、数えよう。色が変わったところで教えてほしい。1、2、3、4、5・・・」
 ゆっくりと、1枚ずつ宙にかざしながら、ゼラルドは札をテーブルに置いていく。
「11、12、13・・・」
 数え続ける声を聞きながら、まるで何かの儀式のようだ、と、セレンが思い始めたとき。
「あ」
「このカードだね。何色に見える?」
「赤。鮮血の赤だ」
「そうか」
 ゼラルドは残りの札をテーブルに置き、元通り全部ひと束にまとめて、何かつぶやいた。
「今は何色に見える?」
「元の白」
「そう。これで終わりだ。協力ありがとう」
「君は今、いったい何を数えていた?」
 セレンは真剣に尋ねた。胸騒ぎがする。ゼラルドは、
「以前は自分で数えられたのだけれどね」
と言って、自嘲気味に笑った。
「これは――」

 ――?
 セレンは廊下の真ん中で、ふと足を止めた。
 いま、自分は何をしているところだった?
 手には銀のトレイ。そう、姫君たちにお菓子を持って行ってあげようと思って。
 でも何か考えていたような・・・何か忘れているような・・・。
 うしろを振り返ってみたが、誰もいないし、何も思い出せない。
 気のせい、か。

(完)

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予告:「断章:数える…」

すみません、予告といっても、今回はたいしたことないです。

今週は、会社方面も病院方面も慌しくて、ゆっくりお話を考える時間がなかったので、もう少しお時間をいただこうと思います。
その代わりというわけでもないのですが、1ページの断章をリリースします。
まだ1行も書いていないし、家事も外出もあるので、明日(11/4)の夜あたり?の更新になると思います。

登場人物的には、セレンとゼラルドのお話。
本編後半のどこかに入る、断片的なエピソードです。
本編を進めて行くうち、他のお話に併合される可能性もないとは言えませんが、今のところは独立したエピソードになる予定なのでリリースします。

現時点では取り扱いに注意が必要なので、例外的に、コメント禁止設定とします。
申し訳ありませんが、この予告自体も、コメント禁止にさせていただきます。
あとがきも無くしたかったのですが、作者にどうしても一言言いたい人が出るかもしれないので、コメント可のあとがきをつけます。

どうぞよろしくお願いいたします。

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