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断章:数える…

 一行が滞在している館は居心地が良かったので、天候の回復待ちは苦にならなかった。そして今日も、この重たい曇り空からみて、おそらく出発は無理だろう。
 ゼラルドが部屋から廊下に出てみると、なるほど出発は諦めたらしいフルートが、それでも自身は街に出るらしく、上着を引っ掛けて通り過ぎるところだった。「君は?」と尋ねられて、ゼラルドが首を横に振ると、うなずいて、そのまま出かけて行く。
 そういえば、とゼラルドは思い出した。フルートが不在のうちに済ませておきたいことが、ひとつだけある。
 折よく、セレンが逆方向に通りかかった。おそらく姫君たちに持って行くのだろう、菓子類を乗せた銀のトレイを持っている。
「セレン」
 呼びとめると、あからさまに迷惑そうな顔をされた。
「何だよ」
「手伝ってもらいたいことがある」
「断る」
 言いながら、しかし、向き直ってくれている。用件は手短に、興味を引くように告げなければならない。ゼラルドは率直に言った。
「聖札を数えたい。手伝ってもらえれば、すぐに終わる」
「数える? よくわからないな。何をすればいい?」
「入ってくれ。トレイはこちらに」
 ゼラルドはセレンを部屋に招じ入れ、トレイを受け取って扉脇の小卓に置いた。
 広い客室の真ん中には丸テーブルがあり、ひと組の聖札が積んである。
 ゼラルドは聖札の束を手に取り、一度両手の中に隠して何かつぶやいたあと、片手を外してセレンに見せた。
「君の目には、この束は何色に見えるだろうか」
「さっきまでは白かったけれど、今は薄紫だ」
「そう。やはり、君は媒介として優れているようだね」
「媒介?」
 ゼラルドは束から札を一枚とって、かざして見せた。
「これは何色に見える?」
「濃い紫」
「では、数えよう。色が変わったところで教えてほしい。1、2、3、4、5・・・」
 ゆっくりと、1枚ずつ宙にかざしながら、ゼラルドは札をテーブルに置いていく。
「11、12、13・・・」
 数え続ける声を聞きながら、まるで何かの儀式のようだ、と、セレンが思い始めたとき。
「あ」
「このカードだね。何色に見える?」
「赤。鮮血の赤だ」
「そうか」
 ゼラルドは残りの札をテーブルに置き、元通り全部ひと束にまとめて、何かつぶやいた。
「今は何色に見える?」
「元の白」
「そう。これで終わりだ。協力ありがとう」
「君は今、いったい何を数えていた?」
 セレンは真剣に尋ねた。胸騒ぎがする。ゼラルドは、
「以前は自分で数えられたのだけれどね」
と言って、自嘲気味に笑った。
「これは――」

 ――?
 セレンは廊下の真ん中で、ふと足を止めた。
 いま、自分は何をしているところだった?
 手には銀のトレイ。そう、姫君たちにお菓子を持って行ってあげようと思って。
 でも何か考えていたような・・・何か忘れているような・・・。
 うしろを振り返ってみたが、誰もいないし、何も思い出せない。
 気のせい、か。

(完)

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