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夜を越えて(09)

 眠っている妻に水晶の御守りを握らせて、いつのまにか自分もベッドの傍らで椅子にかけたまま眠ってしまっていた男は、背後でガタンと音がしたため、はっと目が覚めた。目の前のベッドは空になっていて、シーツの上に、御守りだけが残されていた。
 うしろを振り向くと、台所で、妻がテーブルに手をついて体を支えていた。寝たきりになって久しい妻が、一人でそこまで歩いたのは何ヶ月ぶりのことか、すぐには思い出せなかった。驚いている男に向かって、妻は恥ずかしそうに笑った。
「起こしちゃった? ごめんね、あたし、おなかがすいちゃって」
「今すぐ粥を煮る! 寝てろ、寝てろ」
 妻をベッドに戻して御守りを握らせ、自分が台所に立ちながら、男の表情はおのずと明るくなった。昨夜まで妻の上を覆っていた暗い死の影は消え去っていた。やつれてはいても、笑みに力があり、食欲も戻り、動こうという気力がある。病は峠を越えたのだ。
 偶然のわけがなかった。男は、不思議な占い師と、ずいぶん前に他界した曾祖母に感謝した。自らも相当の占い師だった曾祖母は、いつも言っていた。13列13段のカードを使う術者には、世界のすべてが視えるだろう、と。そして、本当に困ったときに、もしそのような人物に出会うことが叶ったら、全財産と、これを渡しなさいと言って、紅色の耳飾りをひとつ――なぜかひとつだけ――、遺してくれたのだった。

「ところで」
と、遅い朝食を共にしながら、不意にゼラルドが言った。
「うん?」
「剣を投げてくれたとき、君は、ぼくを何と呼んだ?」
「覚えてないけど、君の名前だろ?」
と、ルークは困惑気味に応じた。
「そうか。覚えていないなら別に――」
「ゼラルドとか、ゼルとかさ。呼び間違えたりはしないと思うぜ」
「・・・」
 そうして、その話は、それきりになった。

(完)

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コメント

続けてすいません、雪村さん。芝臣です。

ああ、最後も上手くまとめましたね。
冒頭で話に出た病気の妻とその夫のその後を書いて、読者を安心させるのは作者の優しさを感じさせて、あの凄惨な戦闘との落差でホッとさせますし、それは最後のゼラルドとルークの会話にも言えます・・・が、すみません、私にはあの会話の意味がよくわかんなかったです~(恥)。

ともあれ、過去にない力作、ついに完結、しかも予定通り年内でということで、まったくお見事でした。

今年もいろいろありましたが、私個人の最大の収穫は、この『遥かな国の冒険譚』と作者である雪村さんと知り合えたことです。
来年こそはできれば自分の作品を再開させたいものですが、いまは何もお約束できないのが非常に残念です。

なんにせよ、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

どうも失礼いたしました。
それでは、よいお年を。

前回から続けてのコメント、ありがとうございます♪
雪村@いま年賀状を投函してきたところ!です。

最後のゼラルドとルークの会話は、ごめんなさい、お話を時系列順に並べたときに意味を成すものです。
今のように発表順に並べてお読みいただいている状態だと、わけがわからないと思います、すみませんsweat01
明日にでも、あとがきを書いて、若干フォローできればと思います。

今年は芝臣さんのおかげで、小さなブログが賑やかになりました。ありがとうございます。
来年も、お互いに無理のない範囲で頑張りましょうねwink

楽しく読ませていただいています。

いつも楽しみにしています。

山梨よりのお客様、こんにちは。管理人の雪村です。
コメントありがとうございますsign01

たくさんの方に見守っていただいて、いつも心から感謝しています。
どうぞ本年もよろしくお願いいたしますconfident

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