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  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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2013年1月

作者より:「花嫁候補」

色っぽいお話をひとつ書いてみたかったので、書けて満足ですheart 
心残りは、設定を盛り込みきれなかったこと。
シェーラが着ていたドレスのこととか、ライラの経歴についてとか・・・。
そのうちに手直しして混ぜ込みたいところです。

シェーラ嬢のその後については、本編の最後でフォローする予定です。
(今は全部伏せることにして、ラスト1行書き換えました。)
こぼれて番外編になる可能性もありますが、いずれにせよ、語るのは当分あとになります。

ちなみに、セレンとミルガレーテの初対面がどうであったかについては、「竜王の館(後編)(11)」にて、フルートがちらりと言及しています。
こちらも、脈が全くないわけではない、ように見えるのですが・・・。

次回は誰のどんな話を書くか、未定です。
いつものように、1週間ほどお時間をいただいて、あれこれ考えてみようと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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花嫁候補(06)

「ばれていないとでも思っていたのか?」
と、フルートは真面目な顔で言った。「思っていた」などとセレンは口に出さなかったが、つい顔に出ていたのだろう、フルートは軽いため息をついた。
「ばかだな、長い付き合いなのに。君が初対面の女性に見とれて言葉を失ったのは、知る限り一度きりだ。ひとめ惚れだろう?」
「・・・」
「あれ以来、月が満ちゆく期間は、そわそわしているし」
「・・・」
「フィリシアに相談して、もっと頻繁に呼んでもらえばいいのに」
「いやだよ、そんな。恥ずかしい」
 セレンは視線を落とした。自分に言い聞かせるように、
「いいんだ。生きる世界が違うから。美しく純粋なまま永遠を生きるあの姫君に、ぼくの手が届くなどとは思わない。そんなこと、思うだけで失礼だ」
「指一本ふれずに崇めているだけで、本当にいいのか」
「・・・この前、髪に触らせてもらった」
「ふうん」
 フルートは首を傾げて、うつむくセレンを見ていたが、
「君がいいなら、それでいい。帰ろう」
 グラスを干して立ち上がり、その話は、それきりになった。

 その頃シェーラは、宿に向かう馬車の中で、侍女と話していた。
『来る時に話したわね。おじさまの勧めのとおり、神殿に入ってお仕えするつもりだって』
『はい、お嬢様』
『もう気が変わったと言ったら・・・愚かな娘だと思う?』
 侍女は少なからず驚いたが、口に出してはこう言った。
『よく考えてご自分でお決めになったなら、どのような道でもよろしいかと存じます』
『あのね・・・あの方がね』
と、令嬢は、はにかみながら言った。
『妻になりたいかと尋ねてくださったけれど、わたくし、目の見えない妻ではご迷惑がかかるから、本意ではありませんと申し上げたの。ただ、あの方のお側にいることを許されたかったから、叶うことなら妾にしてくださいとお願いしたの』
『・・・』
『あの方の家柄なら、本家から見放されたわたくしを妾にしても問題はないし、そんな形でも内陸の名家と縁ができれば、父はきっと、わたくしが初めて役に立ったといって喜ぶと思うわ。そう申し上げたら、あの方は、1年経っても覚悟が変わらなければ訪ねておいでと言ってくださったの。正妻にするか愛妾にするかは、そのあと決めるから、と』
『・・・お嬢様。たいへん申し上げづらいのですけれども』
『ふふ、そうね、他に何人も女性がいるのかもしれないわね。でも、いいの。あの方は、たとえ遊びの相手でも、傷つけたりせず、幸せにしてくださる方だわ。お側に置いていただけるかもしれないと思うだけで、わたくし、胸がどきどきして、とても嬉しいの』
 令嬢は微笑んだ。恋する乙女の願いなのだった。侍女は降参した。たしかに、神殿に入るより幸せに暮らせるのかもしれない。
『・・・1年あるのでしたら、まずは内陸の言葉をお勉強いたしましょうね』
『そうするわ! ありがとう、ライラ』

 それぞれの思惑を包んで、夜は更け行く――。

(完)

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花嫁候補(05)

『ライラが迎えに来てくれましたよ、シェーラ』
 セレンが優しく声をかけると、シェーラはセレンの胸にすがったまま、いやいやをするように首を振った。セレンはライラに向かって、
『何か書くものを用意してもらえる?』
と頼んだが、侍女は依頼を予期して必要なものをトレイに揃えてあったので、すぐさま『どうぞ』と差し出した。セレンは苦笑しながら、トレイを侍女に持たせたままペンを持ち、さらさらと紙に必要なことを書きつけ、封をして、指輪を外し、封蝋に印章を押し付けた。
『では、何かあったら、これを』
『お預かりいたします』
 侍女はうやうやしく封書を受け取った。
『シェーラ。馬車までお送りしましょう』
『・・・』
 シェーラは泣きそうな顔をしたが、セレンが耳元で色々ささやくうち、こくんと頷いた。
 別れ際にもう一度キスと抱擁を交わしてから、シェーラは侍女に導かれて馬車に乗り、帰って行った。

 夜も更けて閑散としている大広間で、セレンは自分の主の姿を探した。
 フルートは、壁際で椅子に掛けて足を組み、物憂げにグラスを傾けていた。人に疲れたらしく、気配を絶っているようだ。周りには誰もいない。
 セレンが近づくと、フルートはグラスを干して差し出した。セレンはテーブルからビンを取って、飲みものを注いでやった。フルートは満ちる液体を見ながら、
「さっき君が書いていたのは何だい」
「ああ、見ていたのか。遊ばない王子様は知らないだろうけれど、あれは、ほら・・・食べちゃった証明書」
「食べちゃ・・・」
 グラスが揺れて、セレンは注ぐのをやめた。フルートは呆れた顔で、
「君、そういうものを配って歩いているのか?」
「見境がないみたいに言わないでくれよ。必要なときだけだ」
 セレンは自分もグラスを取って飲みものを注いだ。フルートはこめかみを押さえた。
「・・・おまえさ」
「・・・何?」
「本命とは全く進展がないのに、それでいいのか?」
「ほんめ・・・」
 セレンはあやうく飲みものを注ぎこぼしそうになった。
「誰のことだよ!」

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次回は土曜日になるかも。

花嫁候補(04)

『ご褒美?』
 シェーラは戸惑って聞き返し、
『この前お会いしたときのように』
 言われて、前回の別れ際に唇を重ねたことを思い出した。しかも、気付いてみると今この瞬間、シェーラはひとけのないバルコニーで、いつのまにか、長身の若者の腕の中にすっぽりと納まってしまっていたのだった。シェーラの頬が、ぽうっと赤くなった。
『あの、セレン様・・・』
 シェーラがそっとセレンの胸を押して遠ざけようとすると、セレンは笑みを含んだ声でささやいた。
『一夜限りの恋は、おきらいですか、シェーラ?』
 からかわれていると思ったシェーラは、真っ赤になって「きらいです」と答えようとしたが、そう口にのぼせるより早く、ふんわりとやさしく抱きしめられていた。耳元をくすぐる、ひそやかな甘い声。
『それとも、相手がぼくではご不満なのでしょうか?』
『えっ・・・』
 かわいそうなシェーラは、しどろもどろになった。
『いいえ。・・・あの、はい。いえ。あの・・・ん。・・・んん・・・』
 侍女が飲み物を持って戻って来たとき、女主人は、どう見ても遊び慣れていそうな若者の胸に、くったりと、折り取られた花のように体を預けていた。
 飲み物を受け取って「ありがとう」と微笑む優美な若者に、何か抗議すべきだろうかと、誠実な侍女はしばし悩んだが、目の不自由な女主人がこれから歩むだろう日陰の道を思えば、たとえひとときでも幸せな時間が過ごせることを、むしろ喜ぶべきだという結論に達した。したがって、予期された次の依頼にも、動じることなく応じた。
『では、少しの間、君のご主人様と二人だけにしてくれる? 次の次の鐘が鳴ったら、この場所で君にお返しするから』
 慣れた仕草で握らされたチップは、ぴかぴかの金貨で、申し分なかった。
『かしこまりました、旦那様』
『では行きましょう、シェーラ』
『はい・・・セレン様』
 そのあと二人がどこでどんな時間を過ごしたのか、侍女は知らない。ただ、次の次の鐘が鳴ったときに迎えに行くと、女主人は先刻と同じように、溶けてしまいそうな風情で若者の胸にすがっていて、けれど髪には結い直し、編み直したあとがあって、それになんだか――
 ――なんだか、いっそう、美しくなっていた、のだった。

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あと2回かかりそうです。

花嫁候補(03)

『では、ぼくと一曲踊っていただけませんか』
『えっ』
 シェーラは驚いたようだった。すぐに首を振って、
『お気持ちはありがたく存じますが、セレン様にご迷惑をかけたくありません』
『迷惑だなんて。ぼくなら、あなたを転ばせたりはしませんよ』
と、セレンは笑った。そっとシェーラの背中に手を回して、
『行きましょう』
『・・・はい』
 セレンは言葉どおり上手にリードしたので、シェーラはつまずくことも転ぶこともなく、安心して踊ることができた。恩人である若者に偶然再会できたことも、そのひとと二人で踊っていることも、シェーラには夢の中のことのように感じられた。もっと踊っていたかったけれど、なんだか涙がこぼれて止まらなくなってしまったので、一曲しか踊れなかった。
 二人はバルコニーに戻った。偽りのない優しい声が、シェーラを心配してくれた。
『大丈夫ですか、シェーラ』
『申し訳ありません。見苦しいところをお目にかけてしまって・・・』
 シェーラは涙をぬぐって、恥じらいながら言い訳をした。
『わたくし、目が見えなくなって以来、こんなに嬉しかったことはなかったので・・・』
『失礼ですが、いつから見えなくなられたのですか』
『子供のころ、父のところに届けられたお菓子の中に、毒が入っていたのです。毒見が済んでいなかったのに、わたくしは勝手に食べてしまって・・・。命が助かったのは非常な幸運だと言われましたが、視力を失いました』
『・・・ジギリトギリス』
 セレンは呟いた。フルートの苦手な毒だ。耐性があってさえ、一時的に視力を奪われる。
『はい、その毒です。博識でいらっしゃるのですね』
『いえ。おつらいことをお聞きして、申し訳ありませんでした』
『少しも構いません。セレン様はわたくしの恩人なのですから』
 シェーラが落ち着いてから、二人はもう一度踊りに行ったり、食事を取り分けて食べたり、あるいはただ単に、楽しくおしゃべりをしたりした。シェーラの侍女は、介助が必要なときだけ、さりげなく側に来て手伝って、あとは距離をおいて待機してくれていた。
『ねえ、君、ライラと言ったね。君のご主人とぼくに、何か飲みものを持って来てくれる?』
 バルコニーで、セレンは侍女に用事を頼んだ。そうして、
『楽しいですか、シェーラ?』
『はい、とても』
 シェーラは笑顔で答えた。セレンは柔らかな声で、さらに尋ねた。
『今日はご褒美はいただけるのでしょうか?』 

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花嫁候補(02)

 バルコニーで、広間からの明りに照らされた横顔を見れば、まちがいでなどあるはずはなかったが、セレンは西の国の言葉で丁重に声をかけた。
『失礼ですが、そちらのご令嬢は、シェリアリア嬢ではありませんか』
 令嬢は、はっと振り向いた。焦点の合わない目を見開き、驚きにかすれた声で、
『・・・セレン様、ですの?』
 セレンはにっこり笑った。
『ああ、やはりあなたでしたね、シェーラ。覚えていてくださったとは、光栄です』
 優雅に一礼する。相手には見えずとも礼は欠きたくない。
 シェーラは、自分も深々と一礼した。
『その節は、大変お世話になりました。わたくしが今こうしてここに立っていられるのも、あのとき助けていただいたおかげです、セレン様』
『このような場でお会いしたからには、改めて自己紹介をしましょうか。私はリーデベルク出身の、セレン・レ・ディアと申します』
『わたくしは、サージャール出身の、シェリアリア・ヴィ・バルサザールです』
『バルサザール? あの名門の?』
 セレンは少し驚いて言った。シェーラは悲しそうな顔をした。
『第三夫人の三女ですから、いてもいなくても同じようなものです。わたくしのような者がバルサザールを名乗って良いのかどうか、いつも迷います』
『直系には違いないのですから、堂々と名乗って良いと思いますよ、シェーラ』
『でも、どうやら、わたくしは父に見放されたようなのです』
『見放された?』
『高名な医師が目を診てくれるというのは、父の嘘でした。父はただ、手のかかるわたくしを、国外まで厄介払いしたかっただけなのです。今のわたくしは、祖国から離れた遠縁の家で、何の役にも立たずに居候をしています・・・』
 シェーラはうなだれたが、すぐ、気を取り直したように顔を上げて、微笑んだ。
『今日は、侍女のライラが気晴らしにと勧めてくれたので、気が進まなかったのですが、こちらのパーティーに出席しました。でも、こうしてセレン様にお会いできたのですから、今は、来て良かったと思います』
 侍女はさきほどから、令嬢の後ろで静かに控えている。最初はセレンを警戒していたが、二人が知己であると理解したようだ。セレンは、ふと思いついて、シェーラに尋ねた。
『もしかして、あなたは踊れるのではありませんか、シェーラ』
『・・・えっ』
『でなければ、勧められたとはいえ、このようなパーティーにいらっしゃらないでしょう?』
『・・・はい。ふふ、何でもお見通しでいらっしゃるのですね。故郷ではよく、兄や弟が相手をしてくれました。でもさっき、知らない方と少しだけ踊ってみたら、転びそうになったので、反省して、こちらのバルコニーに逃げて来たのです』 

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花嫁候補(01)

 社交辞令上、フルートが断るわけにはいかないパーティーがあるというので、セレンも付き添いで参加することになった。
 別にセレンのほうには参加義務はないのだが、こういうときに引っ張り出される理由は簡単で、今もほら、二人が会場に通された直後から、群がって来る、人、人、人。お目当てはもちろん、大国リーデベルクの第一王位継承権を持つフルートだ。
 出自からして興味を引くうえに、その人自身、見目よく、凛々しく、何より、鮮やかな存在感がある。どんなパーティーに行っても、それこそ名乗らずに参加しているときさえも、この金髪碧眼の王子のいるところには、いつも老若男女を問わない人の群れができた。フルートのほうも、礼節をわきまえて、そこそこ柔らかに応対するから、取り巻きは増える一方になる。そして、フルートは実のところ――本心では人の波に辟易しているのだった!
 つまり、セレンの役回りは、言葉巧みに、少しずつ人の群れを引き剥がして他所に連れて行く係、といったところだった。とりわけ、フルートの苦手な、あからさまにフルートの気を引こうとしている、恋の話ばかりしたがる若い女性たちを。
 王子が構ってくれないといって拗ねている着飾った乙女たちを、少しばかり誉めそやして引き剥がし、自分の取り巻きに変えてしまうのは、セレンにとってはいつもの「遊び」で、何の苦もなかった。逆に言えば、最初はフルートに群がっていた乙女たちが、自分の取り巻きになったからといって、彼女たちに対するセレンの興味が「遊び」以上に強まることもなかった。

 そういうわけで、今夜もセレンは、華やいだ乙女たちをフルートから引き離し、取りまとめては放流し、重要人物については情報を頭に叩き込み、要領よく人の流れを捌きながら広間全体に目を配っていたが、宴たけなわの頃、広間の壁際を歩いてバルコニーに向かう二人連れの女性に気が付いた。侍女らしき女性と、その肩に手を置いて導かれるように歩いている、綺麗な赤毛の令嬢。あの可憐なお嬢様は、もしや、以前セレンが人さらいから助け出した、目の不自由なシェリアリアではあるまいか?
 ごめん、フルート。と、心の中で一応ひとこと謝ってから、
「ちょっと失礼しますね」
 セレンは取り巻きを全部放り出し、月色の長い髪をなびかせてバルコニーに向かった。フルートのほうは、その様子を目の端にとらえていたが、そもそも3度に1度くらいは、こうやって見捨てられるのが常であったので、観念して、人の応対に専念することにした。

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予告:「花嫁候補」

久しぶりにロマンス系のお話をお届けします。今回は限度いっぱいですlovely 
とはいっても、うちのサイトのことですから、たいしたことはなかったり・・・。
年齢制限もありません。(推奨は中学生以上です。)
いずれにせよ、品のないコメントはご遠慮くださいね。

セレンがメインのお話で、全5回くらい?の予定です。
髪を編む」(全2回)と、「救出の報酬」(全5回)の読了を前提としています。
どちらもサクッと読めるお話なので、未読の方は、今作の前にお読みいただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたしますconfident

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作者より:「髪を編む」

というわけで、ひたすら平和な小品でした。時々、こういうお話も書きたくなりますconfident 
順番的には、「竜王の館」の少し後、「救出の報酬」より少し前、に位置します。
1ページあたりがもっと短くなるかと思いましたが、意外とそうでもありませんでした。

次回は、「救出の報酬」の続編を書こうかな、と思っています。
たぶん、こてこてのロマンスになると思いますheart01
救出の報酬」(全5回)読了を前提としたお話になりますので、未読の方はこの機会にお読みいただけると幸いです。

1週間くらいで予告記事を上げられると思います。
しばし、お待ちくださいませ。

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髪を編む(02)

「え、どうなったの?」
 フィリシアは、そうっと手を伸ばして頭の後ろを触った。
「・・・リボンの形? すてき! どうやったの?」
「もう一人のお姫様を呼んでくれたら、編むところを見せられるのだけれど・・・」
「すぐ呼ぶわ! 一緒に来て」
 フィリシアはセレンを連れて宿の部屋に駆け戻り、荷物から宝剣を出した。剣を少しだけ鞘から抜いて、
「ミルガレーテ? 忙しくなかったら、遊びに来てくれる?」
 フィリシアがそっと呼びかけると、ひと呼吸の間を置いたあと、さらさらと時の砂の流れるような不思議な感覚があって、ふわりと≪光り姫≫が姿を現した。金を紡いだような輝く髪に、雪のような白い肌の姫君は、今日は橙色のシフォンのドレスを着ている。
「なあに、フィル。・・・きゃっ」
 セレンがいるのに気付いて、ミルガレーテはフィリシアの後ろに逃げ込んだ。セレンは内心かなり傷ついたが、相手を怯えさせないように微笑して見せた。フィリシアは笑いながら、
「レッティ、見て、私の髪。セレンが編んでくれたの。あなたも編んでもらったらいいわ。どう?」
「え? あ、これ可愛い・・・」
 ミルガレーテは目を丸くして、フィリシアの髪に触れた。それから、そうっとフィリシアの陰からセレンのほうを見て、
「あの・・・セレン? わたくしもお願いして、よろしいでしょうか?」
「もちろん、かまいませんよ、ミルガレーテ」
 おずおずと近づいてきて後ろを向いたミルガレーテの輝く髪を、大事に掬い取って、セレンは同じように編んだ。隣ではフィリシアが、編み方を覚えている。
「はい、できましたよ、お姫様」
「フィルとお揃い?」
「お揃いです」
 ミルガレーテは振り向いて、花が咲くように笑った。
「ありがとう、セレン」
「どういたしまして・・・」
「ね、レッティ、私、編み方を覚えたから、ちょっとほどいて、私に編ませてくれない?」
「いやよ、せっかくセレンが綺麗に編んでくれたのに」
 女の子たちは、そのまま、きゃらきゃらとお喋りを始めるようだったので、セレンは邪魔をしないように、そっと部屋を出た。
 廊下で、フルートとすれ違った。こちらを見て、おや、と眉を上げ、
「何か良いことでもあったのか?」
 笑って尋ねながら、通り過ぎていく。
「うん、ちょっとね」
とだけ、セレンは答えて、その日はずっと、にこにこ上機嫌でいたのだった。

(完)

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そういえば、このお姫様たちはお互い愛称で呼びます。

髪を編む(01)

 街を案内してくれた娘が、すこし変わった可愛らしい髪型をしていたので、どうやって編んでいるのか教えてもらった。
「そんなこと聞きたがる男の人、初めて会ったわ」
と笑いながら、娘は広場の噴水の前で、うしろを向いて髪を一度ほどき、セレンの目の前で編み直して見せてくれた。
「こうやって、両脇から髪を取ってきて、こんなふうに一度結わえるでしょ。そしたら、ここのおだんごを二つに分けて、ここと、ここをピンで止めて、最後に真ん中をクルッとして、できあがり。わかった?」
「うん。どうもありがとう」
 娘はセレンのほうに向きなおって、興味深そうに、
「自分の髪で編むの?」
「まさか! そんなことしないよ」
「そっか。それじゃ、編んであげたい子がいるんだ」
 娘は笑って、
「でも、ちょっと編んでみたいなあ、あなたの髪」
 セレンの、さらさらした長い月色の髪を、しげしげと眺めて言った。セレンも笑って、
「それなら、三つ編み一本に編んでみる?」
「え、触っていいの?」
「いいよ。はい、お願い」
 セレンがうしろを向くと、娘はそっと彼の髪を手に取って、
「ほんとに、きれいな髪ね」
 ため息をつくように褒めてから、長い三つ編みを編んでくれた。

 翌朝、身支度を整えたあと、セレンは水汲み場で、偶然のような顔をしてフィリシアに会った。フィリシアの、ゆるく波打つ青い髪は、今朝は頭のうしろで、髪留めで留めてあった。
「おはよう、フィリシア」
「おはよう、セレン。どうしたの、機嫌良さそう」
 フィリシアは無邪気に、にこにこ笑う。セレンも笑顔を返して、
「そう? あのね、フィリシア。君の髪、すこし編ませてもらってもいい?」
「何かの練習台? いいわよ。はい、どうぞ」
 フィリシアは後ろを向いて、髪留めを外した。セレンは、昨日教わったとおりに編んだ。大丈夫、上手に編めた。
「できた。どうなっているか、わかる?」

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予告:「髪を編む」

お待たせしました~。本年もよろしくお願いいたしますshine

気分的には、フィリシアの番外編あたりでホッと一息つきたかったのですが、ここのところ番外編の種は何も温めていなかったので・・・coldsweats01
代わりに、一息つけそうな小品、を、出すことにしました。

セレンとフィリシアとミルガレーテのお話です。
ちょうど、「夜を越えて」で出番がなかった人たちです☆
全2回。1回あたりの量も少ないのですが、気楽にお読みくださいheart04

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