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夢の牢(05)

「幻を見せた元凶は逃げ出そうとしている。どうする?」
と、フルートは続けた。
 言われてみれば、立ち込めていた白い靄は後退しつつあり、宿の入口付近に溜まって、そこから外に出て行くところだった。
 ゼラルドは、じっと見て、短剣を抜き、靄の最も凝っている一点めがけて投げつけた。
 ギャッと声がしたかと思うと、靄は嘘のように消えて、木の扉には、異形のものが縫い止められていた。それは、人の頭ほどの大きさをした黒い小鬼で、とがった耳、とがった歯、とがった爪をしており、まん丸な赤い二つの目をギラギラ光らせ、コウモリのような二枚の羽をバタバタさせながら、胸の真ん中に刺さった短剣を抜こうとして暴れていた。抜けないとわかると、しゃがれた声で叫んだ。
「卑怯者! 卑怯者! 我ハ、宝剣ヲ持ツ者ヲ、直接攻撃スルコトハデキナイノダゾ!」
 フルートとゼラルドは、その台詞の内容に聞き覚えがあった。互いに目配せしてから、フルートが尋ねた。
「貴様は、闇、の眷属か」
「ソウダ。オマエ達ヲ一人モ捕エラレナカッタトハ不覚。ダガ、負ケヲ認メヨウ。放セ!」
 ゼラルドは冷ややかに笑った。
「逃がさねばならない理由など、ない」
 小鬼は、目玉をグルリと動かした。
「デハ、オマエ達ノ知ラナイ秘密ヲ教エヨウ。タトエバ、光リ姫ト呼バレル、ソノ女ハ」
 小鬼は、耳まで裂けた口で、ニターッと邪悪な笑みを作った。口を開いて喋ろうとした次の言葉は、しかし、永遠に失われた。セレンが小鬼を真っ二つに斬り下ろし、ゼラルドが光の刃を投げつけて、その骸を灰と散らせたからだ。
 ひとときの沈黙が落ちた。セレンが静かに言った。
「偽りの夢を見せる妖の語ることなど、信じられるものか」
「不本意だが同感だ」
と、ゼラルドが無表情に言った。
「そうだな」
と、フルートが応じて、姫君たちを振り返った。翳っていた青い瞳が、ふと和んだ。
「君たちは、少し休んだら。フィリシア、熱はもういいのか」
 フィリシアは、自分がミルガレーテとしっかり手をつないでいることに気づいた。不安そうな顔をしているミルガレーテに、心の中で呼びかけた。大丈夫、離さないから。
 休んで来ると言って、姫君たちが上の階に引き上げると、隣の台所から、慌てたように、宿の主人である老婆が出て来た。
「すまないね、お客さんを放り出して眠っていたみたいでね! 死んだ爺さんが迎えに来たと思ったけど、思い違いだったみたいだ。悪かったねえ、あんたたち、何か食べるかい」
 若者たちは、提案を受け入れた。体調の悪いフィリシアのためには、セレンが粥と薬を持って行った。
 そうして、若者たちは、なぜフィリシアがゼラルドを兄と呼んだのかについて話題にしたが、ゼラルドが何も語らなかったので曖昧なままになり、また、誰も、小鬼が何を喋ろうとしたのかについては口にしなかったのだった。

(完)

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コメント

どうもこんにちは、雪村さん。芝臣です。

「夢の牢」、完結おめでとうございます!

いやはや、コメントが長くなってしまうことが多くて、なんだか申し訳ないです(汗)。
だいたい、他の読者の方はどう思ってるんでしょうかねえ(怖)。
「ああ、また芝臣のバカが飛ばしてるわ、やれやれ」ってな感じか、さもなきゃ完全無視ってとこではないかと、改めて考えてみたら冷や汗をかいてしまいました。

なので、今回はなるべく短くまとめるよう、努力してみます。・・・無駄な努力かもしれませんが(苦笑)。

とにかく、一発逆転! って感じですね。
それと元凶がやはり「闇の眷族」の魔物(妖)だったのは、個人的には納得です。

あと、なんだかんだで、こういう時のセレンはビシッとキメて、確かにカッコいいんですよねえ。まあ、あの小鬼が彼の「女神様」である〈光り姫〉ミルガレーテを侮辱しようとしかけたからでもあるのですが。

それと、最後に宿屋の老婆が現れて、魔的な雰囲気を見事に吹き払い、日常に回帰させたのは、実にお見事でした。

なんにせよ、今回のエピソードは各キャラの内面からそれぞれの人間関係が浮き彫りになって、最後まで目が離せない、非常に興味深いお話でした。しかも、最後に最も清らかだと思われているミルガレーテに関して謎を残して、今後のエピソードに含みを残していて、これまた興味深いものがありました。

そんなわけで、今回は様々な読み方ができて、実に面白いお話でした。

本当にどうもお疲れ様でした。大変、楽しませていただきました。ありがとうございます。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪

眠った人を起こして回る話。
・・・を、楽しんでいただけたようで良かったです~shine
旅の仲間が全員そろっている割に、少し地味なお話かなあ、と心配していました。
ちゃんと一人ひとりのことを見てくださったようで、嬉しく思います。

コメントは短くても長くても、感謝して大事に読んでいます。
どうぞ書きやすい長さでお書きくださいませ♪

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