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(満月の夜に咲く花)(03)

 フィリシアの鉢のつぼみは、真ん中に3輪が寄り添って、重たげに頭を垂れている。
 ミルガレーテの鉢のつぼみは、葉の間から外に向かって突き出す形で、もっと数が多い。
「レッティの知っている<妖精のウェディングドレス>は、どちらのこと?」
「私の持っている鉢のほう。でも、賢者様が思っている花はどちらかわからないわ」
「そうね。どちらも今夜咲きそうだし、賢者様がいらしたら聞いてみるわね」
 日没を迎える頃、フィリシアは二つの鉢を広間に移した。本当はミルガレーテと一緒に見たかったのだけれど、ミルガレーテは「気にしないで」と笑ってくれた。賢者は少し遅れるそうで、国王一家は先に開花を見ることになった。
 中空に満月が昇る頃、二つの鉢は同時に開花を始めた。どちらの花も、雪のように白く清楚な姿だった。フィリシアの花は、ふっくらした釣鐘のような形で、慎ましく下を向いており、これはこれでドレスのようだわ、とフィリシアは思った。一方、ミルガレーテの鉢は、花びらがふわふわと重なった花がたくさん開いて、なるほど、こちらは鉢全体が、広がったドレスのように見えるのだった。
「どちらも綺麗だ」
と、父王が穏やかに褒めて、珍しいものだからと、使用人たちも呼び寄せた。使用人たちは数人ずつ交代で訪れて、良いものを見たと、笑顔で戻って行った。
「遅れて申し訳ありませぬ。花は咲いたようですな」
と、賢者もやって来た。廊下で使用人たちとすれ違ったのだろう、にこにこしていた。
「はい、咲きました、賢者様!」
 フィリシアは立ち上がり、手近にあったミルガレーテの鉢を持って、よく見えるようにと差し出した。しかし、その花をひとめ見て、賢者の顔から笑みが消えた。
「・・・なんと!」
と、賢者は低く呻いた。花から目を上げ、厳しい眼光で王女の瞳を射ぬき、低く叫んだ。
「姫君は、人に非ざるか!」
 しばし、沈黙が落ちた。フィリシアは動けなかった。それから、国王が静かに示した。
「賢者殿。娘が育てたのは、こちらの鉢です」
 賢者はそれを見た。ゆっくりと緊張がほどけていく。
「これはこれは・・・誠に素晴らしい・・・。大変な失礼を申し上げました、王女殿下。平に、平に、お許しいただきたく」
「かまいません。では、ふたつの鉢は、同じ種類の花なのですね」
 フィリシアはかすれた声で言って、ミルガレーテの鉢を、しっかり抱え直した。
「こちらは友人が育てた花です。これも、心身清らな乙女の花でありましょう?」
「おっしゃるとおりでございます。が、これほどの清らかさは、人の身にはあり得ません」
 賢者は即答したあと、迷いながら、付け加えた。
「お気を付け召されよ。これほど白き光と交われば、やがて闇とも相まみえましょうゆえ」
 しかし、そのときのフィリシアには、賢者の言葉は、単に気分の悪いものとしか聞こえなかったのだった。

「――おかあさま、泣いていらっしゃるの? かなしいの?」
 幼な子に尋ねられて、彼女は我に返った。ああ、また泣いてしまった。満月の晩に。
「そうね。大切なおともだちに、もう会えないのが、かなしいの」
「わたし、おかあさまのおともだちになってあげる」
「そうね。ありがとう。もう大丈夫よ。休みましょうね」
 妃の去った窓辺には、少しだけ鞘から抜いた黄金の剣が、月光を受け、さやかに光っていた。

(完)

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コメント

どうもこんにちは、雪村さん。芝臣です。

「満月の夜に咲く花」(03)、繰り返し拝読いたしました。

これは・・・とてつもない急転直下とエピローグですねえ(驚嘆)。

まあ、それは後ほど語るとして、とりあえず、父王が渋かったですね(笑)。
イラストがないんであくまでも想像ですが、かなりカッコいいパパだと見ました(苦笑)。
そこにきて王妃マデリーンも、いわゆる「美熟女」ではないかと思われ、美男美女の父母のもとに育っていれば、まあ、フィリシアも大抵の美形もどうということもないのかもしれません。

しかも、この父王は非常に沈着冷静です。もし、短気な(あるいは武断的な)王様なら、賢者があんなことを叫んだら、その場で無礼討ちして斬り捨ててしまったかもしれません。・・・もちろん、この世界における賢者の地位、もしくは立場がどうなのかにもよるでしょうが。

そして、問題のエピローグです。
私はあれを読んで、なにか鳥肌が立つような感動を覚えました。

いや、正直、このエピソードはあくまでも乙女チックにラブリーでファンシーな、いわゆる「お伽噺」的な終わり方をするんではないかと安心していたんですが、甘かったですねえ。どうもすみません。
もう、「やられた!」って感じで、雪村さんの筆の鋭さに感嘆しきりでした。

しかし、そういったこともさることながら、私がしみじみと感じ入ったのは末尾の一文です。
すなわち
『妃の去った窓辺には、少しだけ鞘から抜いた黄金の剣が、月光を受け、さやかに光っていた。』
・・・とても、素晴らしいと思います。他に言葉が必要ないくらいに感銘を受けました。

なんにせよ、このエピソードはいずれまた何度も再読することになるでしょうし、あるいはこの物語全体にとっても一つのポイントになるかもしれない、そう思わせるエピソードとなりました。

大変素晴らしいお話を、どうもありがとうございました。おかげで体調もかなり楽になりました(苦笑)。
どうぞ雪村さんにおかれましては、ゆっくりお休みください。

それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪ おかげん大丈夫ですか?

家族からは、「最後の場面転換には、ついていけなかった」などと言われましたcoldsweats01
さまざまな読者様に、それぞれ納得していただくのは難しいことなのだなあと思います。

お気に召していただけて、ほっとしました。嬉しいです。

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