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甘い、すっぱい(02)

 何の苦労もなかった。するすると器用に木を登ったフィアは、控えめにいくつかの実をもいでカゴに入れ、あとは太い枝の根元近くに座って、しばらく見晴らしを楽しんだ。
(子供の頃なら、もっと高くまで登れたけれど。今はもう、体が重くて無理ね・・・)
 流れる雲を見ていると、徐々に日は傾いて、西の空は美しいオレンジ色に染まっていく。ずっと眺めていたかったが、足元が暗くなる前に降りなければならないから、一番星を見つけたところで撤収することにした。まずは、ロープのついたカゴが先だ。
 カゴを下ろしていると、下から声をかけられた。
「おーい、フィア! セレンに見つかったら叱られるぞ!」
 戻って来たフルート王子、というより、フィリシアをフィアと呼ぶなら王子のほうも、身分を伏せたルークと言うべきか。ともかく、金髪の若者は手を伸ばして、果物の入ったカゴを受け取ってくれた。
「いま降りるから、ちょっとあっち向いてて!」
「いいけど、落ちるなよ!」
 フィアは一歩ずつ慎重に降りて、とん、と地面に帰り着いた。
「カゴ、ありがとう。セレンは一緒じゃなかったの?」
「途中で置いて来た。こいつが走りたがったから」
 ルークの横では、愛馬がぶるると鼻を鳴らしている。抜きんでて俊足の白馬だ。
 カゴの中を検分したルークは、率直に、
「これ、すっぱいんじゃないか?」
と言う。フィアは答えて、
「砂糖漬けか、蜂蜜漬けにしようと思って。あなたたちも食べるでしょ?」
「飲みものに入れたいな。砂糖漬けでも、すっぱいのでも。でも、もう少し向こうに」
 カゴをフィアに預け、すたすたと歩いて行って、ルークは一本の木の下で跳び上がり、ひとつ実をもいだ。
「ほら、すこし甘いやつ。このまま食べられる」
 種類の違うティルの実を、カゴに入れてくれた。フィアは目を丸くした。
「ありがとう、気が付かなかったわ。こっちを取れば良かったかしら・・・」
「砂糖漬けにするなら変わらないだろ。けど、こないだ思ったけど、君はさ、こんな感じだよな」
 ルークは同じようにして、もうひとつ取り、きゅっと拭って、皮ごとかじりつく。
「こんな感じって?」
「甘すぎなくて、さっぱりした感じ」
「えっ? えーと・・・えーと・・・ありがとう」
「うん」

 ほどなくしてセレンが戻って来て、ゼラルドも帰って来て、みんなで簡単な食事をしたあと、フィリシアがお茶を入れた。
 お茶の中には、切り分けられた、甘くてすっぱい果物が一切れずつ入っていたが、どこの王女様が木に登って取って来たのかは、フルートとフィリシアだけの秘密なのだった。

(完)

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コメント

どうも、こんなに日にちが経ってからすみません、雪村さん。芝臣です。

いや、最初にこの「甘い、すっぱい」を読んでから、なんだか気になっていたところがあって、質問のコメントを書こうとしては、まさしくタイミングを逸したり、気持ちが入らなかったり・・・とまあ、なんだかんだで今日まで放置してしまっていたわけで、まったくいい加減なヤツで、汗顔の至りです。

といっても、このエピソードそれ自体に関わるような問題ではなくて、いずれもほんのちょっとした疑問なんで、単に「そこはご想像におまかせします(苦笑)」と流してしまっても、こちらとしては一向にかまいませんので、雪村さんのご判断次第でどうにでもお答えくださいませ。

さて、前置きが長くなってしまいましたが・・・。

まず、これまであまり気にしてこなかったのですが、今回、ふと思ったのが、各キャラの偽名を使ったり、呼んだりするタイミングや条件はなんだろう・・・ということでした。一応、おしのびの時に使うということは明記されていますが、今回のようにパーティ内の間で周囲に他人がいない場合でも、『状況から』ということで「フィア」「ルーク」とお互いで判断しあっているようなのですが、その「状況」というものがちょっとよくわからなかったんですね。・・・まあ、なんとなく想像はつきますし、今のところさして問題になってもいませんが、今回、妙に気になってしまったのです。

次に「おや?」と思ったのがルークのこの発言でした。
>「おーい、フィア! セレンに見つかったら叱られるぞ!」

これはつまり、フィア(フィリシア)の木登りについてのことなんでしょうが、これまでの作品群の中で、セレンがそういったことに目くじらをたてるような、いわゆる女性、あるいはフィアの行儀作法などにうるさい人物だという印象はまったくなかったので、ちょっと不思議に思ってしまったのでした。・・・むろん、今後、セレンのそういった一面が描かれる可能性も十分にあることは理解していますが。

それと、これまた、今まで気にしてこなかったのですが、パーティの服装についても、今回、改めて考えてしまいました。
それは特にフィアの
>「いま降りるわ! ちょっとあっち向いてて!」

という発言から、彼女が少なくともこの状況ではスカート、もしくはそれに近いものを穿いていて、下着が見えてしまう可能性があることを示唆しています(また、この世界の一般的な若い女性の感覚でも、やはり下着が見えることを恥らうことを意味していると思われます)。
うーん、いわゆる旅装では、やはり男女ともにズボンのようなものを穿いていて、活動しやすいようにしていたものだと思っていましたし、これまでも特に描写がない限り、フィア(フィリシア)もそうだと思っていましたが・・・それとも、私の思い違いなのかなあ? 
それと、男性陣は特に防具(鎧)を装着していないような感じなんで、やはりどうも改めていささか奇異に感じてしまいました。むろん、「単に描写していないだけで、なんらかの防具は装備している」ということもありうる点についても理解しています。

・・・すいません、重箱の隅をつつくような細かいことをアレコレ取沙汰して。
ただ、今回のあまりにも「旅の中の日常」を描いたエピソードの中で、こういった点が急に気になってしまいまして、迷った末に敢えて質問した次第です。どうかお許しくださいませ。

ただ、これらの点がどうであれ、いままでも全く不自然ではなかったし、キチンと『冒険譚』として読めてきたことは間違いありません。それは繰り返し強調いたします。

どうか雪村さんにおかれましては、必要以上にお気になさらず、心身共に落ち着いて次回作に向かってくださいますよう、切にお祈りしております。

どうも大変失礼いたしました。
それでは、また。

芝臣さん、こんにちは。雪村です。
コメントありがとうございます♪

本当なら物語の中で自然に解決されるべき事柄について、疑問に感じさせてしまうのは、ひとえに作者の力不足によるところで、大変申し訳ありません。
その一方で、書いていないことは読者の方のご想像のままに、という気持ちもあるので、「これが正解」と示すのも違うような気がします。

ひとまず、作者はこういうつもりで書いています、という回答をします。が、お気に召さなければ、いかようにも違うふうに補完していただいてかまいません。

名前の呼び分け基準は?
→おしのびモード(?)がオンになっていれば、他に誰もいなくても「ルーク」と「フィア」です。
呼び分けの例外は「夜を越えて」で、実験的にフルートの呼び名を「ルーク」で通しています。書き手の違和感が大きかったので、いずれ修正する可能性大。

セレンはフィアの木登りを咎めるか?
→フィアでなくルークが登っても叱られます。お行儀の問題ではなさそう。

フィアの着衣は?
→スカートです。驚かれるでしょうが、馬で移動するときも基本的にはスカートです。

男性陣のふだんの装備は?
→防具らしい防具は身につけていません。丈夫な服に、ベルトで帯剣し、マントを羽織ったり羽織らなかったりしています。剣士というより、商家の出身ふうを装っています。

こんなところでしょうか。
ご興味があるなら、女性の乗馬の歴史等、調べてみると面白いかもしれませんconfident

どうもこんにちは、雪村さん。芝臣です。

ぶしつけな質問(しかも長文!)の数々に丁寧にお答えくださり、大変感謝しております。

とりあえず、ある程度の納得はいきましたので、あとはそれこそ「想像」で補いつつ、さらに具体的な事例が今後の作品の中に描写されるのを待って、さらに読み続けていきたいと思います。

なんにせよ、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

どうもありがとうございました。
それでは、また。

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