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  • (2017/5/11夜) 春って、あわただしく過ぎて行くものなのですね。でも、ようやく身辺が落ち着いて来たような気がします。

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(逃避行)(02)

 翌朝から、王子は、自室の窓辺で小鳥の餌づけを終えたあと、隣の部屋に足を運ぶのが日課になった。鳥籠は、リオンが掃除しやすいように、空き机の上に置いてある。
 毎朝、覆い布を取り払うたび、鳥は必ず、
「ご機嫌うるわしゅう、ゼラルド様」
と喋った。ゼラルドは、その都度、静かに、
「おはよう。そなたは元気か」
と尋ねる。鳥の様子を見ながら、リオンが代わりに「今日も元気です」と答える日々が続くうち、鳥は自ら、「今日も元気です」と返事ができるようになった。
 鳥は、リオンを呼ぶことも覚えた。リオンが雑用を片付けているときなどに、
「リオン?」
と、呼ぶ。その声色と抑揚が、王子によく似ているので、うっかり、「お呼びでしょうか」と応じてしまったこともあって、「呼んでいないよ」と王子に苦笑された。逆に、王子のほうも、リオンを呼んで、「ただいま参ります」と返答を聞いたのが、実は鳥だった、ということがあるらしい。
 王子は、しかし、迷惑しているというよりは、その状況を楽しんでいるようだった。そのことがわかるので、リオンは毎日、気持ちよく、感謝の念すら覚えながら、鳥の世話を続けた。
 ある朝、リオンが鳥を見ながら、学問所で教わったままに、
「このような鳥は、50年ほどを生きるそうでございますよ」
と教えると、王子は感銘を受けた様子だった。
「50年! ぼくより、よほど長生きするのだね」
「えっ。いえ、ゼラルド様は、50年後もお元気でいらっしゃると思います」
「さあ、どうだろう。だが・・・」
 王子は鳥を見ながら、独り言のように言った。
「その50年を、この鳥は籠の中で暮らすのだね・・・」
 リオンは言葉に詰まった。すると、そのとき、赤い鳥は、何を考えたのか、そのクチバシと足の爪で、籠の入口を噛んだり引っかいたりし始めた。
「・・・出たいのでしょうか?」
 二人が何もせずに見守っていると、鳥は、なんと、籠の隙間から入口の閂を器用に外し、扉を押し上げて、自分から外に出て来たのだった。
 鳥は、机の上で、王子を見上げて言った。
「ご機嫌うるわしゅう、ゼラルド様」
 王子はしばらく鳥を見つめたあと、そっと手を差し伸べた。鳥は驚いたように向きを変え、リオンが籠の入口を開けると、自分から中に入って行った。籠は元通りになった。
「そうか。そなたは出られるのか。だが私は・・・」
 王子のつぶやきは、途中から、のみこまれて声にならなかった。

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