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  • (2017/6/26夜) 「火の鳥」は、早割を使って、のんびりと印刷をお願いしたので、出来上がりは7/15頃です。オフセット印刷です。綺麗に刷れるといいな~。

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(逃避行)(03)

 短い冬が終わって、春になった。
 長命種と知ってから、王子は鳥に、エメル(灯)という名をつけていた。
 鳥籠の閂は、より重く頑丈なものに取り換えられていたが、代わりに、鳥籠を置く部屋には止まり木が設けられて、訪ねる人のない午前中などに、しばしば鳥籠から鳥が移された。エメルはその場所が気に入っているらしく、止まり木に移されると、元気いっぱい、様々なことを喋り続けた。
 午後には、エメルは鳥籠に戻される。鳥がいることを訪問客に気づかれないようにするためだ。幸いなことに、エメルは人の気配に敏感で、誰かが外の廊下を近づいて来ると、
「お客様がお見えです」
と、リオンの声色で教えてくれたから、リオンはその声を聞いたら、すぐに鳥籠に覆い布をかぶせ、鳥が喋って客の興味を引くことのないよう、気を付けることができた。
 ユリア姫さえいなければ、エメルを隠す必要などなく、賢い鳥は宮廷の人気者になっただろうに、と、リオンはよく考えた。だが、現実には、万一にもユリア姫の関心を引くことのないように、鳥のことはひたすらに隠さなければならなかった――たとえ鳥でも、義兄の寵愛を受けていると知ったら、嫉妬深い王女が何をするかわからなかったからだ。
 ユリア姫は、毎日のように義兄の部屋を訪れて、小一時間ほど他愛のないことを喋って帰ったが、隣の部屋に鳥が飼われていることには、今のところ気づいていないようだった。
 さらに季節は移り、夏になった。エメルはすっかり懐いて、王子やリオンの腕や肩に、喜んで乗るようになっていた。
「リオンとエメルがいるから、ぼくも息をしていられるのかもしれないね」
 一度だけ独り言のようにそう語ってくれた王子の、鳥を愛でる穏やかな表情を見ながら、リオンは、この綱渡りのような平穏な日々が、どうか平穏なまま続きますようにと願った。
 ――が、叶わなかった。ある日の午後、いつものように訪れたユリア姫は、唐突に、
「そういえば・・・お兄さまのお誕生日に贈られた、赤い鳥はどうしましたの?」
「鳥?」
と、王子は物憂げに応じた。ユリアはうなずいて、
「そう。言葉を喋る、大きな鳥です。従者に世話をさせるとおっしゃっていたわ」
「ああ・・・リオンに払い下げた。ユリアはあれに興味があったのか?」
「あのときは、お兄さまに似合わない色としか思いませんでした。でも、最近入った侍女と話していたら、喋る鳥には、白も桃色もいるのですって。もし本当によく喋るなら、わたくし、桃色の鳥が欲しいわ。あの赤い鳥がどのくらい喋るか、見せていただけますか?」
 王子は色々と理由をつけて断ろうとしたが、うまく行かなかった。鳥籠は運び込まれ、王女の要請で、リオンは鳥を出して腕に乗せた。鳥は羽根をバタつかせて王子の肩に飛び移った。リオンは慌てて非礼を詫び、鳥を隣部屋に引っ込めて止まり木に乗せたが、王女は不機嫌になっていた。王女の退室後、ゼラルドとリオンが隣部屋に駆けこむと――
 哀れな鳥は、飛び立とうとするかのように翼を広げた姿で、床に落ちていた。

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