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火の鳥(08)

 雛鳥が首を伸ばした先に、大鳥が自らの翼を差し出すと、雛は何度か、炎をついばむような動作をした。雛鳥の、ぺたりと寝ていた羽毛がふんわり立って、体の割に大きな翼がパタパタと動き始める。確かに、生まれてすぐに飛べるようだった。不思議な鳥だ。
 大鳥が言った。
≪人ノ子ヨ、アリガトウ。コレヨリ先ハ、我ラガ、雛ヲ守ル≫
 まるでそれが合図だったように、周りの鳥たちが飛び立ち始めた。大鳥も翼を広げた。フルートとゼラルドは、数歩、後ろに下がった。
 大鳥は飛び立った。雛鳥も飛び立った。頼りない小さな姿を、別の鳥たちが取り囲んだ。
「この羽は、君が持てばいい」
 フルートは、大鳥から受け取った羽をゼラルドに差し出した。
「卵の穢れとやらを清めたのは、君なのだろう、ゼラルド。それに、君は寒さに弱い」
「穢れと呼ばれる者にこそ、御守りが必要だろう。ぼくはいい」
 静かに告げられたその言葉に、フルートは、はっとした。
「穢れとは、まさか」
「おそらく、そうだ。どれほど明るく優しい姫君でも、死の呪いをかけられていることに変わりはない。その理不尽な呪いを解くためにこそ、ぼくたちはこの旅を続けている」
 二人は、その場に立ったまま、すべての鳥が夜空へと飛び立つのを見送った。
「この光景を、フィリシアとセレンにも、見せてやりたかったな」
 フルートが言った。ゼラルドは無言で、フルートの腕に軽く触れ、宿へと空間を跳んだ。

 二人の帰りを待っていたフィリシアとセレンに、フルートは一部始終をかいつまんで語り聞かせた――穢れに関することのみ伏せた。
「フィリシア。これは君に」
 フルートが朱色の羽を渡そうとすると、フィリシアは笑って、
「私はクルシュタインの出身よ。寒さには強いわ。ゼラルドに渡したほうが」
「ぼくなら、違う羽の御守りを、もう持っているから」
 黒髪の若者は、赤い羽を取り出して見せた。言葉少なに、以前飼っていた鳥の羽だと言った。なるほど、たしかにゼラルドは鳥が好きらしい、とフルートは思ったが、黙っていた。フィリシアは朱色の羽を受け取った。
 そして翌朝、日の出とともに、旅人たちは、この迷路のような街の東門に立っていた。
 開門と同時に、馬を連れて街道に出れば、行く手ではぐんぐんと日が昇ってゆく。
「あっ、あれを見て!」
 馬に乗ろうとしていたフィリシアが、急に東の空を指した。
「あの雲の形!」
 指し示された空では、ちぎれた雲が重なり合い、朝日に照らされ、まるで、光り輝く大きな鳥が、翼を広げて飛んでいるように見えた。ほんのひとときの、空のいたずら。
「今日は、いいことがあるかも」
 嬉しそうにフィリシアが言う。
「ああ」「そうだね」
と、フルートとセレンが応じた。
 そうして、一行は出発する。
 解呪の聖泉は、まだ遠い。

(完)

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