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  • (2017/4/29朝) そして、3月に続いて4月もまた、溶けるようにして消え去って行くのであった…。

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(逃避行)(07)

 国境までは、空間転移で一跳びだった。国境を訪れたことのないリオンは、王子の跳んだ軌跡を辿って跳んだ。目の前にどこまでも白い砂の広がる、かろうじて岩ひとつが目標物となる地点に、揺るぎなく出現できたところを見ると、どうやら王子は今までにも、しばしば一人で国境を訪れていたようだ。何のために・・・と、リオンの表情が語っていたのだろうか、王子はぽつりと、「国境で砂漠を臨むと、心が落ち着く」と言った。届け出ることなく自らの意志で国境を一歩越えれば、王族はみな、その瞬間から暗殺者に追われる身となるのに。
「よく、ついて来られたね」
と、ゼラルドは不思議な微笑を浮かべた。妖しく謎めいて、冷ややかに、美しい。そうか、それでは、王子はこの長い跳躍で、リオンを試し、足手まといと思えばそのまま置いて行く心づもりもあったのか、と、悟った従者は少々傷ついた。
「おそれながら、わたくしの称号はルイーラです。月の塔でも5本の指に入る術者です。ご自身の従者を甘く見られては困ります」
「だが、引き返すなら、今だよ、リオン。というより、むしろ、引き返せ、と。命じてみようか」
 ゼラルドは首をかしげて、そんなふうに言う。リオンは苦笑した。
「お気遣い、いたみいります。しかしながら、国境までやって来て、いまさら命令ひとつで従者を追い帰せるなどと、本当にお考えでいらっしゃいますか」
 ゼラルドは、ふ、と笑った。
「では、もう何も言うまい。ぼくは勝手に跳ぶから、そなたも勝手についておいで」
 そう言って、王子は次の目的地に向けて姿を消した。リオンも迷わず、後に続いた。
 届け出ることなく国境を越えたことにより、聖なる国ウェルザリーンの第一王位継承者ゼラルドは、諸外国には公表されていない法により、継承権を保持したまま、国家による暗殺対象となった。

 未知の場所への空間転移は困難を伴う。距離を測りつつ遠見して、見えた場所へと空間をつなぐのだ。砂漠は、とりわけ跳ぶのが難しい。なぜといえば、砂で形づくられた光景は刻々と変わるため、出現位置が特定できなくなるからだ。
 それでも、うまく制御できれば、歩くより遥かに速く移動できる。追手がかかる前にできるだけ距離を稼ぎたい二人は、広大な白い砂漠の中、黙々と空間を跳び続けた。目指すのは≪大境界≫、その最も近くの関所だ。古代王国レティカの崩壊後、太陽の力と、月の力と、魔法とを縒り合わせて作られた≪大境界≫は、内陸と東方諸国とを厳然と分け、月の聖者にも太陽の聖者にも魔法使いにも、越えることはできない。適した通行手形を持たない二人は、どうしても、関所を破って渡らなければならない。
 日は徐々に傾いて、やがて西の空に沈んだ。あたりが闇に染まったところで、主従は休息することにした。すでに追手はかかっていようが、移動できないのは追手も同じだ。

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コメント

どきどき…
ゼラルドの行く末がとても心配~

と~まさん、コメントありがとうございます。
そうなんです、心配なんです・・・。
私も心配しています・・・。

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