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(逃避行)(13)

 ――ユリア姫は、一睡もせず、真っ青な顔で、まなじりを吊り上げて言い募っていた。
「ごらんなさい、誰も帰って来ません。お兄さまに敵う者などいないのです。お兄さまを弑し奉ることができる者がいるとすれば、わたくしだけ。だから、わたくしを連れて行って。わたくしが自らの手で、お兄さまを断罪いたします!」
 しかし、まさにこのとき、黒衣の一団が部屋の入口に現われて頭を下げた。
「ご報告いたします。王子殿下のご遺体を発見いたしました。我らのうちの某かと相討ちにてお斃れになった模様でございます」
 ユリアは、はっと息をのんだ。それから、低い声で言った。
「・・・某って、誰? 模様って、どういうこと? はっきり申し述べなさい」
「はっ。王子殿下と戦って命を落とした者は、すべて、死後は砂となっておりました。総勢何名が失われたかは、ただいま確認中でございます。うち一名が、王子殿下のご遺体に相対する場所にて砂となっておりましたが、某であるかは特定することができず。また、王子殿下御自身も砂となっておられたのですが、いくつかの持ち物が遺されておりましたゆえ、殿下であると特定できました」
「・・・従者が身代わりになったのかもしれないわ」
「従者なら、その近くで発見できましたので回収いたしました。のちほど尋問いたします」
「そうなの? では、リオンは置いて行かれたのね・・・」
「大境界には異状なしとの報告を受けております。また、すべての関所は、遠話による指令に応じ、昨夜より固く封鎖され、やはり異状ございません」
「わかりました。わたくしが視ます。水晶よ、お兄さまはどこにいらっしゃるの」
 だが、前回は結界を映し出した水晶玉に、今は何も映らなかった。王女は聖札を並べた。
「月の女神のご加護を受けて、わたくし、ユリア・ルイーラ・ルーズヴェルンが尋ねます。もうどのような名前でもいいの、王家の名を捨てていてもいいの、わたくしの、たった一人のお兄さまは、どこにいらっしゃるの」
 大境界のこちら側、どこに対象がいても反応するはずの聖札は、回答を示さなかった前回と異なり、ごく単純な回答を示した。
 曰く、「どこにもいない」。
 王女はしばらく聖札を凝視したのち、床に崩れ落ちた。

 ・・・ゼラルドは、誰かに抱え起こされていた。まぶたの裏に光を感じるが、肌に触れる空気は冷え冷えとしている。
 口元に何かが差し付けられていて、反射的に顔をそむけると、落ち着いた声が、外国語で、ただの水だと言った。内陸の言葉だ、と、ぼんやり思い至る。
 ゼラルドは目を開けて、差し出されているコップの中を見た。疲れ切っていて、本当に水なのか、そうでないのかの判断はつかなかった。まあいい、毒であるなら、そういう運命なのだ。気にせず、ごくごくと飲んだ。
『・・・ありがとう』
 内陸の言葉でようやく言った声は、自分の声とは思えないほど弱々しく掠れていたが、金髪碧眼の若者は、ほっとしたような表情を浮かべた。若者の背後には、ミルガレーテ姫が心配そうな顔で立っている。では、自分は≪大境界≫を越えたのか?
 頭も体も、鉛のように重い。そのあと、ゼラルドの記憶はしばらく途切れている。

 リオンは、調べられたあと、ひと月の軽い禁固刑に処せられた。明るい窓のある部屋で、読書も聖札も特に禁じられていない。主を亡くしたことを受け入れるふりをしながら、リオンは一瞬たりとも、王子の死を信じることはなかった。遺品にあるべきものが、ない。
 王子は何らかの方法により、≪大境界≫を越えたのだ。そして、どうしてもリオンを連れて行くことができなかったのだ。
 受刑中、一度だけ、ユリア姫が会いに来た。警戒するリオンに向かって、ぽつんと、
「お兄さまが生きていても死んでいても、置いて行かれたことに変わりはないわ。同じね」
と言って去った。何が同じなのかと考えたら、ユリアとリオンが同じなのだった。
 ――そなたは生きよ。か。
 あなたも、どうか。あなたの選んだ道を、生きてください。
と、リオンは、赤い羽根を空にかざして、祈った。

(完)

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コメント

どうもこんにちは、雪村さん。芝臣です。

特別番外編ともいうべき長編「逃避行」、完結、お疲れ様でした。

・・・が、いまの気分を一読者として正直に申し上げるならば、その・・・「ああ、終わってしまったあ~(嘆き)」というようなものであるようで、何とも言えぬ感情に戸惑っております。

まったく、何も全シリーズの最終回でもないのに、これほどの喪失感とも賛嘆の念ともいえぬ想いにとらわれてしまうとは、我ながら、ただひたすら首を振るばかりです。

いや、実にお見事というか、最後の最後まで強力な吸引力で読者を引っ張り、結末を容易に予想させない手腕は、以前にも増して冴え冴えとして、まったく感服せざるをえませんし、おそらくはこれこそ「雪村ワールド」の真骨頂、つまり雪村さんの「本気」かとも思えるのですが・・・とにかく、素晴らしい出来栄えでした。

それにしても、ゼラルドはレギュラー・キャラですからあたりまえですが、ユリア、リオンを始めとする、東方=ローレイン側の面々も今後、本編に再登場、少なくとも何らかの影響を及ぼす可能性はきわめて高いように思えましたし、それも、まさに最終エピソード直前、ないしはそのクライマックスでゼラルドの運命を決する存在として表われるのではないかとも予想してしまいますし、また、たとえそうでなくとも、ゼラルドの過去にまつわるさらなる番外編なども、やろうと思えばいくらでもできそうなほど、ローレイン側のキャラたちもより魅力を増し、その可能性はこの「逃避行」でむしろ、さらに充実してきたような気がします。

なんにせよ、まさに「ファンタジー」と「メルヘン」の融合、ほとんど「SF」にすらなってしまったほどの長編、大変楽しませていただき、心から感動しております。
雪村さんにおかれましては、どうぞ今後とも思いのままに、この物語世界を構築してくださいませ。

・・・ああ、それにしても、これじゃあ「本当の」最終回がきたら、いったいどーなっちまうんだろう、俺は? うーん、コワいコワい(津波汗)。

いやいや、とにかく、どうもありがとうございました!
それでは、また。

芝臣さん、
コメントありがとうございます♪

シリアスな内容でしたが、お気に召していただけたようで良かったです。
いろいろ反省すべき点があるのは自分でよくわかっているのですが、書いて良かったと思えます。
ありがとうございます。

本当の最終回は、まだまだ来ないと思います。私の力量が足りていませんからcoldsweats01
でも、いつか最終回を書いても、その後も本編や番外編を書き続けるのではないかなあ…clover

月路さん
長編の終了お疲れさまでした。

さまざまな生のありかた。
様々な愛のありかた。
それぞれの使命・・・

いろいろと感慨深い一編でした。
まだ、私の中でうまく整理できてないのですが
また いつか その符号がぴたりと会う日が来たときに
改めて、コメントさせて頂くことにします。

お体、ご自愛くださいねnight

montiさん、
コメントありがとうございます♪
変なお天気が続きますね。お大事になさってくださいね。

本編で時々、ゼラルドが穏やかに笑っていると、「良かったね」と思います。
過去や未来がどのようなものであっても、今は、仲間たちとの旅の中で、
嬉しいこと、楽しいこと、いろいろ見つけてほしいと思っています。

私が拙い文章で伝えようとしていることを受け止めてくださって、どうもありがとうございます。

雪村さん、こんにちは。
逃避行、どきどきしながら拝読させていただきました。
序盤から従者リオンに感情移入してしまっていたので、ゼラルドが無事大境線を越えた後、彼がその行き先を問われる拷問や重い罪に処されるのではないかと勝手に心配してしまいましたが、軽い罪で済んでよかったです。
ユリアは、なんだか的確な言葉が出てこないので、表すには足りないけど簡単な言葉を使うと、「哀しい人だなぁ…」と、思いました。彼女に対しては、複雑な気持ちを抱かざるを得ません。
ゼラルドが、旅の仲間達と『今』を少しでも心から楽しみながら自分の道を生きられることを、遥か遠方の地(というか異世界(笑))の日本の片隅から、ひっそりと願っております。

のんさん、
コメントありがとうございます♪
こちらはいつもポチばかりで失礼しておりますsweat01

捕えられたリオンは、記憶を調べられただろうと思います。
彼が守りに徹していたことと、主の行方を本当に知らないことが、あっさり判明した上での処分になったはずです。
・・・と、わかるように書くべきですね、はいcoldsweats01
そのうち、こっそり書き足しておこう・・・pen

ユリアは、書くのが難しいです。
ゼラルドとユリアの関係も、書くのが難しいです。
「雪」あたりを読み返しながら、作者も複雑な気持ちになります。
そうですね、ユリアは哀しい女の子、なのだと思います。

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