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風に揺れる花の中で(01)

どこまでも、どこまでも、見渡す限りの野原を、たおやかな白い花が埋めて、風にそよいでいた。やさしく青く晴れた空には、ちぎれた真綿に似た雲が、ゆっくりと流れている。
夢を見ながら夢だと気づくことは珍しかったが、あまりにも曇りなく心に沁みる光景だったので、彼は意識の片隅で、ああこれは夢なのだ、と理解していた。
野原の中にひとり立ち、さらさらと長い金色の髪をやわらかな風に任せて、彼は、これほど優美な夢の中になら、愛しいひとが訪れてくれないだろうか、と思った。

――夢の中で願うことは、夢の中で叶うことがある――。

少し離れた前方で、空気から溶け出すように、ふわりと。
そのひとは姿を現し、花の咲く野に降り立った。
ゆるやかに波を打つ、金を紡いだような髪。のぞく横顔の、雪のように白い肌。
うっすらと光り輝いているように見える姫君は、薄桃色の布を幾重にも重ねたような、ふんわりした長袖のドレスを着ていた。
いつものように、清らで、可憐で、瑞々しく麗しいその姿を。
いつものように、彼は、胸の奥深くに、大切に大切に刻み込んだ。

離れて見つめているだけで、幸せな気持ちに満たされた。だが、ミルガレーテ姫はあたりを見回し、セレンに気づくと、驚いたように一歩あとずさった。
思わず、セレンは呼びかけていた。できるだけ相手を怯えさせないようにと、願いながら。
「どうか、行かないでください」
「は、はい」
ためらいがちに応じて、姫君は心細そうに、胸の前で両手を組み合わせ、何かを待った。
――自分の言葉の続きを待っているのだ。と、セレンが気づくまで、少しかかった。そうか、引き止めたからには、話があると思われて当然だ。だが、彼はただ、姫君の姿をもっと眺めていたいだけ。いったい何を話したら良いのだろう。
常日頃、すらすらと口にできる社交辞令の挨拶が、こんなときには、ひとかけらも出て来ない。何か言わなくては、と焦る心だけが、空回り、空回り・・・。
結局、先に口を開いたのは、姫君のほうだった。おずおずと。
「あの・・・セレン?」
「はい」
「わたくしが、会いたいと願ったから、わたくしの夢の中においでくださったの・・・?」
「・・・いいえ。ぼくが会いたいと願ったから、あなたがいらしてくださったのでしょう」
「でも、ここは。この野原は」
 姫君は、野原を見渡してから、セレンに視線を戻し、すこし緊張をほどいて、微笑んだ。
「わたくしが、いつも夢の中で訪れる場所です。だから、これは、わたくしの夢です」

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