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風に揺れる花の中で(03)

――頬を伝う涙の感触に、セレンは目覚めた。
潤む視界に、陽光の差し初める明るさを感じた。
夢で見た、どこまでも続く白い花は、くっきりと胸に焼き付いている。が、現実には、ここは、街道近くの小さな林の中だった。
木の根元に座りこみ、固い木にもたれて眠ったせいで、体がこわばっている。珍しく一人での野宿だったので、誰にも涙を見られなかったのが、せめてもの慰めだった。
幸せな夢を見たはずなのに、この喪失感は何なのだろう・・・。
苦笑しながら身じろぎしたとき、左肩の違和感に気づいた。なにげなく目をやって、セレンは目をみはり、しばし呼吸すら忘れて固まってしまった。
セレンの左の肩の下に、そっと頭をもたせかけて、ミルガレーテがすやすやと眠っていた。夢の中と同じように、薄桃色の長袖のドレスを着た姿だった。
動転したセレンの頭の中を、様々な思いがぐるぐると駆け巡る。
ここはまだ夢の中なのか? いや、そんなはずは。毛布をかけたほうが。どうして夢と同じ服を。というより、無防備に過ぎるだろう!
そう簡単に男を信用してはいけない。ことに自分のような。いや、自分だから良かったけれど。と、そこまで考えて、気が付いた。
そのとおり、セレンは、信用されたのだった。
半ば呆然としているセレンの目の前で、ミルガレーテは身動きして、目を覚まそうとしている。どうしよう、セレンはまだ身支度を整えていない、それでも、ああ、どうかどうか、この金色の小鳥が、目を覚ましても逃げないでいてくれますように。
祈るような思いで見守っていると、ミルガレーテは、金色の長い睫毛をあげて、何度かまばたきをし、セレンの腕から離れた。辺りを見回してから、セレンのほうを見上げ、目が合って、驚いたように、ひゅっと息をのんだ。
悲鳴をあげられてしまうのだろうか。誓って、何も不埒なことはしていないのに・・・?
セレンが固まっていると、幸い、ミルガレーテはゆっくりとまばたきを繰り返しながら、少しずつ落ち着いていった。時間はかかったが、怯えた様子は消えて、姫君は目を伏せ、恥ずかしそうに口を開いた。
「セレン。あなたが、会いに来てくださる夢を見ました」
セレンはどきどきした。まさか、同じ夢を見たなどということがあるだろうか? どうせ夢だからと、胸のうちを告白してしまったような気がするのだが・・・。
「約束を、しました。二度と会えなくなる日が来たら、それをお伝えすると」
間違いなく同じ夢だ。そして姫君は、それを姫君ひとりが見たのだと思っている。
やっとのことで、セレンは気持ちを立て直し、にっこり笑った。
「ありがとう、ミルガレーテ。でも、ぼくはまだ、あなたと共に日々を過ごしていたいな」
ミルガレーテは、視線を上げて、つられたように微笑んだ。
「私も、セレンといろいろお話をしてみたい・・・」
「では、今日は、人が通るところまで、ぼくと一緒に行きませんか」
「はい。喜んで」

いつか、約束が果たされる日は訪れるのだろう。だが、今ではない。
白い花咲く野で交わされた、それは、別れの約束。

(完)

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コメント

月路さん

おはようございます。
何だか、胸に甘く切ない記憶が蘇ってくるようです。
夢と現実を行き来する恋人たちは
悲しくも 永遠の思いを持ち続けることができるのではないかと・・
現実によって変貌することなくshine

そっと二人を見守りたいですねconfident

montiさん、
コメントありがとうございます♪

ふだんのセレンは、女性に対して、八方美人というか、浮気性というか、手が早いというか…sweat02
そんな彼と、本命の彼女との、おそるおそるの恋の行方は、はてさて、いかに。

割といい雰囲気ですよねheart01
結末がどのようなものであれ、ふたりで過ごす時間が幸せであるようにと、作者も祈っていますconfident

雪村さん、お邪魔しています。そして、拝読させていただきました!
この気持ち、何と言ったらいいのか……!
美しい夢の中で会う恋人同士(←そう呼ばせてください)。夢の中で交わす哀しい約束。現実で交わす愛しい約束……。なんて、切な素敵なの~happy02
美しさというか儚さというか、儚いからこそ美しいというか、本当もう、うっとりしちゃいますheart01
私はセレンスキーなので、どうにかしてミルガレーテと幸せになってもらいたい……。
素敵なお話、いつもありがとうございます!


のんさん、
コメントありがとうございます♪

「こういうふうに読んでもらえたらいいな…」と思っていた、まさに、そういうふうに読んでいただけたようで、感激ですlovely
セレンはふだん、気苦労が多そうなので、たまには、幸せいっぱいのひとときがあってもいいよね、と思いますconfident

励みになります。ありがとうございます!

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