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雨やどり

 急に雲行きの怪しくなった空を見て、雨をしのげそうな場所を探した一行が、なんとか手ごろな岩棚を見つけて駆け込んだ、次の瞬間、ザーッと音を立てて雨が降って来た。
「間一髪ね。よかった」
と、フィリシアが言い、
「早くやむといいね」
と、セレンが応じた。その後ろでは、フルートがゼラルドに、
「君が前に豪雨をやませたのは、<月の力>なのか?」
と尋ねて、短く、否と返されていた。もちろん、黒髪の若者はそれ以上の説明をしない。
 セレンは振り向いて、自分も尋ねてみた。
「それなら<太陽の力>なのか? 君が太陽の神に祈れば、この雨もやむということ?」
「愚かな。この程度の雨を、なぜ、やませる必要がある」
「たとえばの話だよ!」
 聞いていたフルートが、不思議そうに口を出した。
「ゼラルドは月の聖者ではないのか。ローレイン王家の者は、代々、月の聖者なのだろう」
「そうだが、ぼくは亡くなった母が西ローレイン出身だったから、太陽と月、どちらの力も使うことができる」
 ゼラルドの答に、フルートは納得せず、さらに質問を重ねた。
「太陽の聖者は一度、粛清されたのだろう。なのに、<太陽の力>が禁術とされていないのは、なぜだ?」
「・・・粛清は、反乱の意志ある者を対象とした。<太陽の力>自体は有用なものだから、減少した聖者を新たに育成することは、むしろ推奨されている」
「ふうん」
 黙ったフルートの代わりに、セレンが、ためらいがちに言った。
「王妃を除いて、粛清など無かった・・・という説もあるよね」
 ゼラルドは、やや驚いたようにセレンを見た。セレンは続けて、
「対外的には、ロザリア王妃――君の母上が内乱を首謀し、彼女を含む太陽の聖者たちは前後して粛清されたことになっている。でも、本当は・・・ある日、西ローレインから一夜にして民が消失し、そのことについて東ローレインの民と対外諸国を納得させなければならなかった為政者たちが、粛清を装ったのだ・・・と、聞いたことがある」
「君は、情報網だけは素晴らしく広いようだね」
と、ゼラルドが言った。
「『だけ』は余計だ」
とセレンが言い返すのを無視して、物憂げなまなざしで、続けた。
「西ローレインで何が起きたのか、本当のことは何も分からない。仮に、一夜にして大勢の民が消失したというのが本当のことだとしても、彼らがどこに消えたのかは不明だ。たしかなのは、いまや名実ともに西ローレインは存在せず、ローレインといえば東ローレインを指すということだけだ」
「あんなに栄えていたのに」
と、鈴を振るような声が言った。いつのまにか、ミルガレーテ姫が、儚げな姿を現していた。いくぶん寂しそうな声だった。
「西ローレインは、金の翼。東ローレインは、銀の翼。両翼揃ってこそのローレインだったのに。片方だけなら、ローレインは独立できず、今でもレティカ王国の支配下にあったかもしれない・・・」
「ああ、そうか」
と、フルートが気付いて、
「ローレインは、ローレイン語では『ウェルザリーン』、すなわち『聖なる銀の翼』。滅んだ西ローレインは、たしか『メルザリーン』、ということは、『聖なる金の翼』か」
「その両方の血を、ゼラルドが受け継いでいるのね」
と、うっかりフィリシアが言ってしまって、一同はしばし黙った。両方の血を受け継いだ唯一の王子は、王位継承権を保持したまま国を捨て、暗殺者に追われている――。
「・・・雨がやんだようだ」
と、黒髪の王子は静かに言った。
「ああ」「そうね」「そうだね」と、めいめいが夢から覚めたように言い合って、岩棚の下から出て、馬を引いた。
 失われし太陽の国、謎多きメルザリーンの話は、そうして、それきりになった。

(完)

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コメント

月路さん

おはようございます。
今回は、1話ながら、深く謎めいた一編でした。
ゼラルドその人が両翼の鍵をにじっているのですね。

たくさんのお話の中に
さまざまなピースが隠されていて
読者は想像もつかない完成図をあれやこれや思い描き
はらはらどきどきしています。
聖と邪、それはときに
陰陽道の白と黒の勾玉のように
複雑に絡み合っているのかもしれません。

montiさん、
コメントありがとうございます♪

全体を見渡すと、背骨は凄く単純なお話なんです。
ただ、それを、一本のまっすぐな道でなく、小さな物語の集合として編み上げようとしているので、おのずと、色んなところに色んなものが埋まっていく仕組みです。
…などと、最初から考えて創ってきたわけでは、もちろん、なくて。
こういう書き方しかできないのは困ったものだと思いながら、後付けで考えた理屈ですcoldsweats01

「白と黒の勾玉」のイメージには、なるほど、と思います。
自分の中にある善なる心と悪しき心も、溶け合って灰色になるというより、勾玉のような形で結びついているのかもしれませんねflair

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