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見えない守り手(01)

 日が暮れたころ、小さな町に着いた。
 宿を尋ね当て、馬を預けて、ふたりの若者は食堂に行った。あまり客はいない。
 向かい合ってテーブルにつき、食べものと飲みものを注文してから、
「それで? 結局これは、どういういやがらせなんだって?」
と、セレンは不機嫌に尋ねた。さらさらと長い髪は明るい金色、瞳は綺麗な緑色、つまり本来なら、彼が都を迂回して田舎道を通らねばならない理由は何もない。
「別に」
と、そっけなく答えたゼラルドは、黒髪に黒い瞳。この国の都には入れないから、迂回路をたどるのは予定通りだ。
「別に、とは?」
 セレンはいらいらと聞き返した。細い指先でテーブルをトントンと叩いて、
「お互い、一緒に行動したって不愉快なだけだろう? それを、わざわざ付き合わせたからには、何か理由があるだろう!」
「ない。単純に、いやがらせだ」
 言い切ったゼラルドの口元には、かすかな冷笑が浮かんでいる。
 むっとして、セレンがさらに言い募ろうとしかけたとき、厨房のほうから、こんな声が聞こえて来た。
「ほらほら、邪魔をしないで、マリカ。ミリカも。これはお客さんに出す食事なんだから」
 ほどなく、両手に盆を持った女性がやって来て、給仕をしてくれた。セレンがふと見ると、女性の後ろには、10才くらいの女の子が一人、隠れるようにして付いて来ている。
 女の子は、栗色の髪を二本のおさげにしており、母親なのだろう女性の陰から、セレンとゼラルドをチラチラと見比べていた。ゼラルドは無視したが、セレンは目が合ったので、にこ、と微笑んでみた。女の子は恥ずかしかったのか、タタッと厨房に駆け戻って行った。
 給仕の女性が料理を置いて立ち去ったあと、ゼラルドは目を伏せたまま、静かに言った。
「あの双子には、関わらないほうがいい」
「え?」
と、セレンは厨房のほうを振り返った。子供の姿が見えなかったので、向き直って訊いた。
「一人しか出て来なかったのに、どうして双子だとわかるんだ?」
「一人?」
 ゼラルドは、ちらりとセレンを見たあと、再び視線を落として、つぶやいた。
「では、一人は生きており、一人は亡くなっている、ということなのかな」
「えっ」
 セレンは今度は、ぎょっとして体を引いた。
「おどかさないでくれ。君の席からだと二人見えた、というだけだろう」
「君は、今までに幽霊を見たことはあるか」
「幽霊! あるものか!」
 不自然なほど思いきり否定してから、我に返って、セレンは、もごもごと取り繕った。
「いや、一度だけ。子供のとき、亡き母に招かれて、書庫に行ったことがあるけれども。でも、いま思えば、夢だったのだと思うから」
 聞いて、ゼラルドは首を傾げた。
「・・・もしかして、君は幽霊が怖いのか」
「違う! 見たことがないから信じられないだけだ」
 セレンは答えたが、ゼラルドは無言で、ふっと笑った。セレンはゼラルドをにらみつけたが、言うべき言葉もなく。そのあとは食事が終わるまで、二人とも、もう一言も口をきかなかった。

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コメント

ふうっ・・。
最初から物語に引き込まれてしまいました。
続きを楽しみにしております。
(=^・^=)

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

すぐに終わってしまう短いお話ですが、
あれこれ迷いながら一所懸命に書いています。
後半も、お気に召すようなお話が書けたらいいな。

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