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ひとこと通信欄

  • (2017/5/11夜) 春って、あわただしく過ぎて行くものなのですね。でも、ようやく身辺が落ち着いて来たような気がします。

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風の贈りもの(02)

 王子と王女は、子供たちが馬から落ちないように気を付けながら、急いで丘をくだった。倒れているのは美しい娘で、晴れ着に身を包んでいるが、ほかに付き添いはいないようだ。
 二人は娘を助け起こした。王女は娘を介抱し、王子は騒ぐ子供たちを馬から下ろしてやった。
「あるじさま!」「あるじさま!」「あるじさま!」「あるじさま!」
 子供たちは泣き叫びながら、気を失っている娘に飛びついた。1人は右腕に、1人は左腕に、1人は右足に、1人は左足に。と、次の瞬間、子供たちの姿はすっと消えて、娘の両腕には銀色のブレスレットが、両足には銀色のアンクレットが嵌っていた。
 王子と王女は、驚いて顔を見合わせたが、そのとき、娘は身じろぎして、目を開けた。フィリシア姫が、あわてて覗き込んで、
「だいじょうぶですか」
と声をかけると、ぼんやりと王女の顔を見つめてから、「はい」と答えて微笑んだ。ゆっくりと体を起こし、異国の言葉で何やら言いかけたが、通じないと気づくと、はにかんだように笑いながら、たどたどしく言った。
「ありがとう、ございます。私は、今日は、結婚するでしょう。すでに、朝は、人でした。飛べないを、歩きます。近いでした、とても遠い、休みました」
 フィリシア姫は曖昧に頷いた。嫁ぎ先が思ったより遠い、というような意味だろうか。
 美しい娘は、ほっと息をついて、にっこり笑った。
「心配の助けを、お礼、おまもりです。ほかはありません」
 銀色の腕輪を片方外して、王女に渡そうとした。
 けれども、フィリシア姫は、さっきの子供たちが「あるじさま」をどれだけ慕っていたかを覚えていた。それで、礼を失しないように気を付けながら、そっと言った。
「そのように大切なものを受け取るわけにはいきません。その腕輪もあなたを慕っています。通りかかっただけですから、どうぞお気になさらないでください」
 娘は困った顔をした。
「お礼、本当の心、ほかがありません」
 腕輪を嵌め直しながら、娘は何か考えて、しばらくして、ぱっと顔を輝かせた。
「おまもり、歌は良いですか? 今は人、風でした、変わらない。風を困る、歌って」
 すうっと息を吸って、透き通った声で、不思議な節回しで、歌った。
「風よ、あなたの。娘の、友を。守って。ここに、いるよ――」
 うながされて、フィリシア姫も歌った。繰り返して三度歌うと、やわらかな風が吹いて来て、王女の周りを一巡りしてから、丘と丘の間を吹き抜けて行った。
「優しい、忘れません。風、あなた、私」
 娘は満足そうに言って、立ち上がった。小川の脇の小道に立ち、ほがらかに言った。
「あと少し。心配ありません。元気です。ありがとう。さよなら」
「さようなら。お元気で、お幸せに」
 娘はうなずいて、軽やかに身をひるがえし、飛ぶような足取りで歩き出すと、もう振り返らなかった。
 フィリシア姫は、王子と馬のほうを振り返った。ふと、思いついて言った。
「もしかして・・・風の精だったのかしら? 嫁ぐために、人になったのかしら?」
「そう聞くと、そうとしか思えないな」
と、フルート王子は笑った。
 そして二人は、少し幸せな気分になって、めいめいの馬に乗り、旅に戻ったのだった。

(完)

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コメント

清涼感?スッとした感じが残りました(=^・^=)☆
「あるじさま」って可愛い呼び方ですね❤

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

腕輪をもらっていたら、フィリシアも「あるじさま」と呼んでもらえたかも?
お話の読後感を大切にしたいので、清涼感、嬉しいです!happy01shine

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