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朝の鈴(04)

 陽光の加減からすると、いつもと同じように、彼はだいぶ早い時間に目が覚めたようだった。体を起こして、隣のベッドを見れば、フィリシア姫はまだぐっすりと眠っている。風がよく通る部屋で、比較的涼しい夜を過ごせたのも幸いだったかもしれない。起きているとき笑顔を絶やさない優しいおもてには、眠っている今も、ほんのりと微笑が浮かんでいる。
 心和むその寝顔を、しかし、ずっと見ていては礼儀に反するというものだ。ゼラルドは、姫君を起こさぬように気を付けながら身支度をして、少しの間、部屋を出ていることにした。すでに魑魅魍魎の心配はない時間だし、万一、何者かが侵入を試みても、結界が知らせてくれる。姫君が起きて身なりを整え終わった頃を、見計らって戻って来よう。
 黒髪の若者は、小さな町を、ゆっくり一巡りした。町は、日が昇るにつれて活気づいていき、店を開けたばかりのパン屋で、彼は二人分のパンを買った。
 そろそろ良いだろうと思って部屋に戻ると、予想に反して、フィリシア姫はまだ眠っていた。そういえば、ときどき彼女は朝が遅い、と、彼は思い至ったが、前日に大きく寄り道してしまったこともあるし、そろそろ起こして、出発の準備をしたほうが良い。
「フィリシア」
 彼は戸口から呼びかけてみたが、変化はなかった。かと言って、就寝中の女性にあまり近づいては失礼だし、大声を出すのも気が引ける。さて、姫君という生きものを起こすには、どうするのが正しい手順だっただろう。
 首を傾げて考えて、ゼラルドは思い出した。故国の城の庭園のあずまやで、疲れていた妹が、うとうとと眠ったことがあった。そのときに妹の言った言葉。「そばにいてくださいね、お兄さま。もし、わたくしが目覚めなかったら、これを」。
 渡されて、結局使わず、返そうとして拒まれた、薄紫色の丸い鈴を、彼はまだ、まじないの道具と一緒に持っていた。取り出してみると、鈴は繊細な響きで鳴った。シャラン。
 あのときも調べた鈴を、念のためにもう一度調べたが、何の術もかかってはいない。周りの部屋に聞こえないように結界を張り直してから、ゼラルドは鈴を振ってみた。
 シャラン、シャラン、シャラン、シャラ、シャラ、シャラ・・・。
 フィリシアが身じろぎして、ゆっくりと目を開けた。
「きれいな音・・・。何の音?」
 体を起こした、興味深げな姫君に、ゼラルドは鈴を掲げてみせた。シャラン。
「ローレインの鈴なの? 普通の鈴と、音が違うわ。すてきな音・・・」
 うっとりと、姫君はこちらに向かって両手を伸ばす。ゼラルドは渡すのをためらった。
「すまない。これは、妹からもらった物だから・・・」
 あとはうまく説明できない。フィリシアは、はっとしたように手を引っ込めた。
「ごめんなさい。大切なものなのね」
「大切なもの・・・」
 ゼラルドは、驚いて鸚鵡返しに繰り返した。フィリシアは気づかずに、
「起こしてくださって、ありがとう。あの、ごめんなさい、すぐに着替えるから」
「ああ」
 ゼラルドは部屋を出た。
 彼は、しばらく薄紫色の鈴を眺めていた。そして、大切に、しまった。

(完)

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コメント

朝の鈴・・良かったです。
何だろう・・。初々しい感じ?上手く言えないけど好きな感じです。
(=^・^=)

うさパンさん、
コメントありがとうございます♪

初々しい感じ、めずらしい感じ、ほのぼのした感じ。
私にも上手く言えませんが、そんな感じをミックスしてお届けしました。
ゼラルドがパン屋で買い物するとか、しかも二人分買うとか、あまりないと思います!

こんにちは♪
どっぷり浸って読ませていただきました~♪

ユリアのこと。自分がゼラルドの立場になって考えると、すごく複雑で、だけど妹なんですよね。大切な…。
うまく言えないですけど、フィリシアの素直さ純朴さ明るさ屈託のなさに、救われました!(笑)
ゼラルドの、フィリシアと同じ部屋で休むことへの葛藤や、フィリシアの身の安全を気にかけるあまり夢にあんな形でユリアを出してしまったりや、起こす時にどうしたらいいか悩んだりするところとか、そういう彼の細かい真面目さも、(本人は大真面目なんでしょうけど)可愛かったです(*´∀`*)

お盆休み、どうぞゆっくりされてくださいね♪

のんさん、
コメントありがとうございます♪

ゼラルドは、単独行動していないときは、基本的に雑用を他人に任せきりですから。
たまには誰かの世話を任されて、「こんなときどうすれば…」と悩めばよいのですbleah

「妹なら無条件に大切」であるはずはなくて、「妹だから憎む」という関係性だってある…。
ゼラルドのユリアに対する気持ちは複雑で、彼自身も把握しきれていないと思います。

夏休み中も、スマホからは覗きに行くつもりです。
ちょっぴり、のんびりさせていただきます~☆

月路さん

連載お疲れさまでした。
今回は、さらっと描かれているだけに
深い余韻の残るお話でした。

人との付き合いの中で 信頼を得るということは希少なことです。
相手のすべてを知ろうとして
自分も 周りも傷つけてしまうことも。

まさしく朝を告げる魔除けの鈴でしたねshine

どうぞ 良い夏休みをお過ごしくださいwavebus

montiさん、
コメントありがとうございます♪

そうですね、相互に信頼を築くためには、勇気を持って、かつ思慮深く、一歩ずつ歩み寄ることが必要ですよね。
相手を尊重したつもりが、逆に傷つけてしまうことも、本当によくあることですけれど、傷ついたり傷つけたりを怖れて殻にこもっていたら、救いの手を差しのべあうこともまた出来なくなってしまう…。
人と人との絆、大切にしたいです。

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